Opinion : 新興勢力が甘やかされやすい件と、関連するあれこれ (2018/8/20)
 

「イケイケドンドンの新興勢力にメディアは甘い」という趣旨の話は、以前にもどこかで書いた気がする。

身も蓋もないことをいえば、ニュース屋さんというのは日々、新ネタが出てこないと死んじゃうので、目新しいネタに対しては常に飢餓状態にある。「便りのないのは良い便り」は、メディア業界では成立しない。

ワッと盛り上がり、「新しい産業の創出ガー」とか「経済規模ガー」といって盛り上がったと思ったら、たちまち AI や仮想通貨や自動運転の話に話題を持って行かれた、いわゆるドローン バブルなんていうのは典型例。

いやほんと、流行に乗っかってイケイケドンドンな趣旨の本を書かなくて良かったと思っている。そっちの方が売れたかも知れないけれど。

UAV の用途といったら宅配より ISR だし、しかるべき訓練を受けたプロに任せないと危なくて仕方ないし、電動式マルチコプターよりも、もっと大型でちゃんとした機体じゃないとダメ。

今はイケイケドンドンかもしれないけど、AI や仮想通貨や自動運転だって、いつ、新たの話題の陰に隠れてしまうか分からない。むしろ、そうなってからの方がホンマの勝負で、メディアのネタにはならないけど定着した、ということだってあり得る。


ただ、「目新しい話題に飢えている」というだけの理由で甘くなるのかといえば、そういうわけでもないと思う。

もうひとつ、考えられるのは「既存の主流派をぶち壊すというストーリーを希求している」。既存の主流派っていうのは、いってみれば安定多数勢力であって、無難だけど、ドラスティックな変化はなかなか起こらない。

そこに新興勢力が割って入って大逆転 ! となれば、これは盛り上がる (という話は以前にも書いたかな ?)。ただ、利用者や国民にとっての利益につながるのかどうかは別として。

新手が出てきて、メディアが煽っては沈没、という歴史を繰り返してきた… と書くと怒られるかも知れないけれど、そう見えるもののひとつが、いわゆるデスクトップ Linux。いったいどんだけのディストリビューションが出ては消え、出ては消えしたっけか ?

そこで Lindows を持ち出すのは止めて差し上げろ。

そういえば、Microsoft Office 代替製品というネタもある。もっともこちらは、ホテルのレンタル PC みたいなニッチ市場で、ある程度の地歩を築いたといえるかもしれないけれど。

対抗馬が出てきて、市場が競争状態になって切磋琢磨するのはいいことである。しかし、メディアやエンスーやアーリーアダプター志願者が煽るだけでは、利用者不在であって、切磋琢磨にならない。

対抗馬がいるだけではダメで、最終的に、誰が利用者に最大の利得 (利便) をもたらすかが問題なのだから。Google という会社に対して思うところはあるものの、うちの PC で Chrome を使っているのも、そういう理由だし。(タブレットとスマホ除く)


「誰が利用者に最大の利得 (利便) をもたらすか」は、いわば「本質の部分の勝負」。別のアプローチとして、ゲームのルールやゲーム盤をごっそり変えてしまう手もある。すると、「利用者の利得 (利便)」も仕切り直しになるので、新興勢力がうまいことやればチャンスはある。

現に、あるゲーム盤で圧倒的に強い誰かさんが、別のゲーム盤に行ったら散々、という話は間々あるのだし。

Windows Mobile の悪口をいうのは止めて差し上げろ。

日本では割と、ビジネスでもスポーツでも「既存のゲーム盤の上で勝利の公式を突き詰めようとする」傾向が強い、というのが個人的な見方。ゲーム盤が同じならそれでいいけど、誰かがゲーム盤をひっくり返すと事情が変わる。

イケイケドンドン (少なくともそう見える) のライバルがいて、同じ土俵に乗っかって勝負するのはどう見ても無理。となったら、ゲームのルールを書き換えることも考えなければいけないのだけど。

そこで「あっちはあんなに強い」「あっちはあんなに数がいる」と嘆いてばかりでいいのかいな。なんていうことを考えている昨今。これが何を指しての話なのかは、ご想像にお任せしたい。安全保障系の話題である。

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