Opinion : 5 年遅い (2018/12/3)
 

なぜか最近になって突如として「F-35 叩き」が勃発している模様。といっても、いわゆるミリタリーマニア業界からのそれではなくて、別の方面から。

たぶん、F-15J/DJ の Pre-MSIP 機を置き換えるために 100 機を追加調達するとの話が出てきて、さらに「トランプ大統領が謝意を表明した」という話が続いたせいだと思われる。

はっきりいってしまえば、こういうことなんじゃなかろうか。

自分らが嫌っているトランプ大統領に「アメリカ製武器の大口輸出」という得点が行って、しかもそれで自分らが嫌っている安倍首相が感謝されている、という状況が気に入らない。それで坊主憎ければなんとやらで、F-35 に八つ当たりしている。


F-35 に限らず、装備調達プログラムにイチャモンをつけるときの公式はだいたい決まっていて、「値段が高い」「開発が難航している」「欠陥品である」「危険である」のいずれか、あるいは複数の組み合わせ。この辺は上下左右に関係ない。

V-22 だと「危険である」が使えたけれど、F-35 では使いづらい。それで、過去の GAO (Government Accountability Office) の報告書や、それを引き合いに出した報道をサルベージしてきて「欠陥品説」を言い立てているんだろうなと。

でも、ずっと JSF 計画をウォッチしてきた立場としていわせてもらえれば、「5 年遅い」。

本当に F-35 の RDT&E (Research, Development, Test and Evaluation) が難航して、関係者が血反吐を吐く思いをしているときだったら、「欠陥品説」にも相応の説得力はあったかもしれない。それに対して関係者に何ができるかといえば、ただ粛々と熟成や問題解決に努めるしかないのだけど。

もちろん、まだ完全無欠といえる段階まで仕上がったとはいいがたいし、いまどきのウェポン システムは何であれ「永遠の未完成品」だというのが自分の見方。だから、部外者が期待するような意味での「完全無欠に仕上がった最終完成品」というモノが存在し得るのかどうかは疑問。

それに、イチャモンをつける人は F-35 じゃなくて B-35 だろうが P-35 だろうが (おいおい、ちょっと待て)、なにかしらネタを見つけてきてはイチャモンをつけたんじゃなかろうか。イチャモンをつけることが目的なんだもの。

それでも、自分なりに調べて一次ソースを当たった結果として「欠陥品説」をいいたてるならまだしも、たいていの人はそこまでしない。結局のところ、自分らの「教祖」になっている誰かさんの発言か、都合の良さそうな内容の報道を引っ張ってくるのが関の山。

Twitter あたりで「F-35 欠陥品説」を言い立てている人のうち何人が、DOT&E (Director of Operational Test and Evaluation) や GAO の報告書の原文を見てるだろうか。たぶん、ほとんどの人は見ちゃいない。いやまあ、これは他のモノが相手でも同じか。


結局のところ、いつも書いていることではあるけれど、「○○が嫌い」とか「○○を叩かなければ」という思いに取り憑かれると、人間、おかしくなっちゃう。いまごろになっていきなり「F-35 叩き」を始めた人を見ると、改めてそのことを認識する。

もちろん、あれが完全無欠な戦闘機だなんていうつもりはないし、まだいろいろ不具合を抱えていることは承知してる。それだからこそ、古いニュース記事を引っ張り出してきてドヤ顔してるような人と一緒くたにされたくはない。

「Jwings」誌の「月刊 F-35」を担当するようになって 5 年ぐらい経つけれども、F-35 について文句をいうなら、最初にその 5 年分のバックナンバーを全部読んでいらっしゃい。ということで、今回はこの辺で。

Contents
HOME
Works
Diary
Defence News
Opinion
About

| 記事一覧に戻る | HOME に戻る |