Opinion : チャレンジングと無鉄砲は違う
(2019/2/25)
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エアショーや展示会のために海外に遠征するだけでなく、現地でクルマまで運転してしまうようになり、某社の編集者に「井上さん、チャレンジングだなあ」といわれた。という話は以前にも書いたかどうか。(過去記事を grep してみたところでは、書いてないような気がする)
ただ、単純に「イケイケドンドン」で突撃しているかというと、それは違う。メリットとリスクを天秤にかけて、リスクが受容できるかどうかを見極めるのは当然のこと。さらに、事前の調査やシミュレーションは可能な限りやっている。
それでも、現地に行ってみれば「想定外」の出来事は起こるものだけど、それは直ちに原因と対策を考えて、可及的速やかに反映させる。
「Jwings」誌の最新号で書いた、「日本とアメリカでクルマを運転するときの、ナビゲーションの違い」が、その一例。初日に DCA でクルマを借り出して近所のホテルまで走る際に、アタフタしてしまったので、直ちに翌日から対策を反映させて、うまくいった。
知らない土地に行って何かをしようとすれば、程度の差はあれ「未経験の事態」や「想定外の事態」に遭遇するわけで、それをどう乗り切るかが問題になる。もちろん、経験を積み重ねていけば「対応策の引き出し」が増えるけれども、誰だって最初は初心者。「対応策の引き出し」はカラッポである。
となると、「未経験の事態」や「想定外の事態」を乗り切るための支えはやはり、「事前の情報収集」に尽きる。
たとえば、アメリカでクルマを運転するとなったら、アメリカに独特の交通ルールについて調べるのは当然ながら、左側通行と右側通行で何が変わるのかを頭に叩き込んで、脳内シミュレーションする。
つまりこれは、軍事作戦を発動する前の兵棋演習みたいなもの。なぜ先に兵棋演習をするかといえば、作戦計画の問題点を洗い出すため、という理由が含まれているはず。それと似ている。
裏を返せば、ロクに調べをしないで現地に乗り込むのは、兵要地誌がまったくない場所に、戦争をしに行くようなもの。それでは勝てる戦も勝てなくなる。
最近では地図だけでなく、航空写真や街中の写真まで、自宅に居ながらにして確認できるようになった。そんな文明の利器があるのに、使わないのはもったいない。大いに活用して、現地に乗り込んだ後のリスクを減らそうと工夫している。
「チャレンジングだなあ」の背景には、そういうあれやこれやの工夫があるわけで、決して無鉄砲に突撃しているわけではない (つもり)。そして現地に乗り込んで経験値を上げていけば、次回以降の事前シミュレーションの精度が上がる。
実のところ、事前シミュレーションをやるのは日本国内でも同じで、先日に北海道に行ったときも同様だった。しかも、一部の行程では複数の選択肢を用意することまでやっていた。
ところが、最初の飛行機がディレイして、代替行程を用意していないパートの旅程が崩壊しそうになったのは秘密である。
終わってみれば、(お天気依存の部分以外は) 狙ったターゲットをおおむね仕留めることができて、最初にヒヤヒヤしたところ以外は慌てることもなかった。その背後には、入念な事前準備がある。国内でもこれだから、海外ならなおのこと。
それで何をいいたいかといえば、例の「ヒッチハイクでアメリカ横断を企てた中学生」の件。チラチラと流れてくる話を見ている限り、事前のリスク評価と下調べが「なっていない」としかいいようがない。
だいたい、猿岩石の話の直後というわけでもあるまいに、なんだってまた、いまごろになってヒッチハイクで大旅行なんて話になったわけ ?
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結果として途中で頓挫したようだけど、もしも何か間違って「上手くいって」しまったら、とんだ害悪を垂れ流すところだった。そんな成功事例を喧伝されて追従者が続発したら、大迷惑である。
海外にドンドン出るのはいいけれど、日本と同じ調子で行ってしまったり、事前の下調べやリスク評価が不十分な状態で行ってしまったりすれば、自分の生命に関わりかねない。チャレンジングと無鉄砲は違うのである。
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