Opinion : 形にばかりこだわることの悪影響 (2019/8/5)
 

いやあ、暑い暑い。

土曜日に横須賀に行ったら、好天のおかげで汗だくに。可能な限りの備えはして行ったし、風が吹いていたのが救い。受け入れ側も、熱中症防止にはだいぶ神経を使っていた模様。海自で配布していた冷たい水が、美味く感じられたのなんのって。

ただ、遊びに行く分には「ヤバくなったら撤収」で済むけれど、仕事だとそうも行かない。列車やバスの運転士が、視界のいい場所で長いこと運転をしていれば、そりゃ太陽光で温められて熱中症ということだってあり得る。

なのに、そこで水分を摂ろうとするとイチャモンを付ける人がいるというのだから、信じがたい。イチャモンを付けるなら、自分も同じ環境に身を置いて、何も飲まずに過ごしてみろ。


もちろん、「反撃されない相手に対するクレーマーとしての快感」というのもあるだろうけれど、それだけなんだろうか、ということを考えてしまった。

つまり、「(お仕事 | 任務) に全力集中していないと怪しからん、あらん限りの労力をつぎ込んでいないと怪しからん」という考えがあって、「その最中に飲み物に手を出すなんて」という発想になるんだろうか、という仮説を立ててみた。

この仮説が当たっているとすると、「(お仕事 | 任務) に全力集中しているというカタチ」「(お仕事 | 任務) に際して、できるだけ手間隙かけているカタチ・楽していないというカタチ」が大事ということになる。

でも、本当に大事なことはカタチ以外のところにある。たとえば運転士だったら、お客様を安全に、かつ所定のスケジュールで目的地まで送り届けるのが最重要のタスクであるはず。

それを達成できればカタチなんてどーでもいい、といってしまうと極論だけれども。しかし、暑いのに無理して身体を壊せば、結果として安全な輸送にも支障をきたすのだから、それはまさに本末転倒。

そういえば、熱中症の話とはまるで関係ないけれど。自衛隊と米軍を比較して、ときどき話題になるところの「寝ない」話にも、通じるところがあるのかも知れない。

どんな仕事でも、ちゃんと寝ないと身体を壊すし、頭が明晰でなくなる。それでは結果が出ないから、いいことなしになる。スプルーアンス提督はそこのところがちゃんと分かっていたから、戦時中の司令官職にいても、ちゃんと寝ていた。

ムチャクチャ鍛えられていそうな英陸軍の特殊作戦部隊・SAS だって、ジャングルで過ごすときには地べたで寝るのは避けて、ちゃんと A フレームにハンモックを吊って、さらに蚊避けのネットを張って寝るようにしているという。というか、「SAS 戦闘員」ではそう書いてある。

もちろん、それができない場面もあるだろうけれど、可能であればそうする。それで熟睡できれば、翌日の任務をこなすのに支障が少なくなる。寝不足でヘロヘロになっていて、それで見逃してはいけないものを見逃したら、生命に関わるだけでなく、次第によっては国の命運にも関わる。


仕事なんかで、「結果と過程のどちらが大事か」なんて議論が起きることがある。もちろん結果は大事で、結果が出なければ、おまんまの食い上げにもなりかねない。ただしもちろん、結果さえ出れば何をやってもいい、というものでもないけれど。

かといって、「結果は出なかったけど、頑張ったんだから良い」というわけにも行かない。もちろん、頑張っている姿勢だけ見せていれば良いというものでもない。

そこでエスカレートして「艱難辛苦に耐える方がえらい」という発想がのさばると、妙なことになる。「炎天下で水を飲ませない学校の部活」とか「手間隙かける方がえらい」という会社の事務処理とか。

「結果が同じなら負担が軽い方が良い」「結果が同じなら迅速にできる方が良い」という発想を行き渡らせないと、日本の競争力がますます落ちるんじゃないかしらん。

それに、組織の側も自分とこの社員・職員をちゃんと護らないと、離職などの形でしっぺ返しが来ると思うぞ…

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