Opinion : 経済感覚 (2019/10/21)
 

「官房長官が 3,000 円のパンケーキを食っている。経済感覚の程か知れる」というスットコ投稿をした某野党の人がいた。案の定、袋叩きに遭っていた模様。って、自分もなんとなくブレーキが外れて、乗っかってしまったけれど。

以前に別件で話題になった「ニューオータニのカツカレー」と一緒で、「並外れて高いものを食うのは庶民感覚から遊離している」の一例なんであろうけれど。個人的には、その「庶民感覚」という棒で殴ること自体、筋が悪いと思う。

その「庶民感覚」という棒の筋の悪さについては、以前にも書いたような気がするので、今回は割愛。


第一、「おカネがある人がおカネを使って何が悪い」。手近な例だと、伊丹空港で羽田行きの搭乗ゲートに行ってみればいい。いわゆる上級会員が掃いて捨てるほどいる。自腹なのか会社のおカネなのか知らないけど。

そのうちだんだんエスカレートして、「誰それは新幹線で移動している。安い普通列車が使えるのに、わざわざ高い料金を払うなんて経済感覚の程が知れる」なんていいだす輩が出てきそう。

ついでに書くと、「経済感覚の程が知れる」という殴り方がおかしい。そもそも論から行けば、「おカネのない人が大借金して贅沢をしている」ということの方が、はるかに経済感覚に問題があるのではなかろうか。

それほど収入が多くない人でも、普段は倹約しておいて、何かいいことがあったとき、自分が頑張ったなと思ったとき、あるいは何かの節目に「ぷち贅沢」をする。楽しいじゃないの。それがまた、「また頑張ろう」って思う原動力になるかも知れないし。

そういう意味では、JR 東日本の新幹線のグランクラスって、いいところを突いていると思う。飛行機ほどには金額的な差がないから、「頑張れば手が届くかも」感がある。ただ、グランクラスのありがたみを実感しようと思ったら、シートのみでは足りないように思うけれど。

空の上の場合。普段はエコノミーで飛んでいると、たまにビジネスクラスに乗ったときに、ありがたみが実感できていいよ ? (←そういう問題か ?)

たぶん、高いものを食っている人の「経済感覚」を難詰するような人だと、カメラやレンズに何十万円も出す人のことも理解しないんだろうな、と思った。「望遠レンズなら数万円も出せば手に入るのに、何十万円も、あるいは 100 万円以上も出す人がいる。経済感覚の程が知れる」なんていいそうだ。

なんかこれってテンプレ化して、いろいろな分野に応用できそうな気がした。「安く手に入る○○があるのに、わざわざ高い○○を買うなんて、経済感覚の程が知れる」。ほら、何にでも使えそう。

と思ったらすでに類似事例があった。「海外に飛行機で飛べば安い、国内旅行の方が高い」というアレだ。


率直にいえば、僻みとかやっかみとか憎悪を煽り立てるような言説ばかり振り回す人とは、関わりになりたくないし、支持もしたくない。そういうネガティブな感情ばかり表に出し続けていると、きっと最後は自分が壊れる。

もちろん、人によって「贅沢」のベースラインは違うし、近年で、その開きが大きくなってきているのは確かかも知れない。でも、高いものを買ったり食ったり飲んだりする人のことをぶっ叩いても、それが自分に対する富の再配分に直結するわけではないのだよ ?

もっとも、冒頭の話についていえば、根本的には「与党を叩くのに旧態依然・ワンパターンのやり方を続けることしかできない、野党政治家の発想の貧困」が問題なのであろうけれど。

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