Opinion : 今あるものは、ずっとある ? (2019/12/30)
 

またぞろ「実名報道の是非」がニュース種になっていた。

それに関連する話で。報道各社が「実名報道の必要性」を主張するときに掲げる理由が、どうも根拠あやふやだったり、えらく情緒的だったりする。しかも、そのとき、そのときで掲げる理由が違っていたり、という指摘まである。

そこで考えたのは、以前から書いている「ニュースのテンプレに対するこだわり」に加えて、「いったん手に入れたものを手放さざるを得なくなる事態に対して、つい抵抗してしまう」もあるんじゃないかということ。

ぶっちゃけて書くと「以前にはできていたことが、できなくなるのは嫌だ」ということ。しかも、それに対してネット上で批判を浴びて、「何を !?」と意固地になってしまっている部分もありそうだし。


なにも、「ニュースのテンプレ」に限ったことじゃない。身近なところでありがちなのは、「期間限定のキャンペーンを、つい恒久的なものだと思ってしまう」というやつ。自分も経験がある。

しばらく前に書いた携帯電話の料金なんか、典型例。新しいサービスの加入を促す目的で、契約当初から期間を決めて割引を仕掛けるのはポピュラーな手法で、うちの携帯電話でも適用されていた。

それが 2 年ないしは 3 年経って期限切れになったとき、「なんで料金が上がってるの !?」と慌てることになる。割引ならまだしも、「最初はタダ」のキャンペーンだと、課金されたときのインパクトはさらに大きくなりそう。

似たような話で、最近「あのなー」と思うのが、キャンペーンの見直しや終了を「改悪」と騒ぐ陸マイラー。キャンペーンっていうのは、いわばブースターであり、期間限定でやるからキャンペーンなのではなかろうか。

それを、一度始めたキャンペーンはずっと続くものだと思ってしまうと、見直しや終了に際して「改悪」と思っちゃうのだろうけれど。これもまた、「いったん手に入れたものが失われるとなると抵抗感を覚える」の一例かと。

価格弾力性が激しい飛行機の運賃も、似たところがある。いったん安値で乗ってしまうと、「いつもそれで乗れる」と思い込んでしまう。そして後になって、もっと高い数字しか出てこなかったときに「!?」となってしまう。そんな話、実際にあるんじゃなかろか。

価格弾力性が高いからこそ、そういうことが起きるわけだけど。価格弾力性が低ければ、すごく安くならない代わりに、すごく高くもならない。(有償に限らず、特典航空券でも事情は同じ)


似たような話で、個人や企業や国家が上り調子のときには「その上り調子がずっと続く」と思ってしまい、逆のときには「そのまま坂道を転がり落ち続ける」と思ってしまう、というのもある。

「今あるものがずっと続く」と思ってしまうところは、共通してるんじゃないかと。しかし実際にはそうはならない、というのは歴史の常。問題は、その個人、あるいは企業や国家のトップが、その思い込みにハマってしまうことかも知れない。

もっとも。対外的見地からすると、周囲に「上り調子がずっと続く」と思わせることで、交渉ごとやイメージ戦略なんかを優位に進められる可能性が出てくるかもしれない。それが破綻したとき、どんなツケが回ってくるかは知らないけど。

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