Opinion : 今は今しかない (2020/4/6)
 

最近、完全に自宅に逼塞している訳ではないにしても、以前ほどにはホイホイと外に出ていない (ということにしておく)。それで、フッと暇ができると、過去に撮った写真を見返してみたり、「どうもうまくないな」と思うと RAW 現像をやり直したりしている。

とにかくピンボケと被写体ブレさえ回避できていれば、多少のドジはリカバリーできるので、やはり RAW データはとっておかないと駄目だわ、と再認識。おかげで HDD の空き容量がどんどん減るのだけど。

そして過去に撮った写真を見返してみると、もう存在しない被写体、もう存在しない場所で写りの悪い写真しか残っていなくて、ジタバタしてしまうことがある。あと、使い慣れて信頼の置ける、その場に最適な機材があるのに、別の機材を持って行ったせいで制約が生じてうまく撮れなかった、なんてことも。


そんな経験があるから、今は「ここぞ」という被写体のときには、機材は出し惜しみしないで持って行くことにしてる。数の問題ではなくて、質的な意味で。実験的な機材の使い方は、出直しが効く被写体、日常的な被写体でやる。

その昔、EOS 40D に 28mm 単と 50mm 単だけ持ってお出かけ、なんてことをやらかしたけれど、それだったら 18-135mm ズーム一本の方がマシ。50mm×1.6=80mm だと足りない、という経験を何度もした。

あと、もしも狙い通りに行かなくても、再度のチャンスがあるなら可能な限りやる。出し惜しみだけでなく出惜しみもしないように、と。もちろん、そうならないようにするのがベストではあるし、そのためにも適切なスケジュールと信頼の置ける機材が必要になる訳だけど。

それで何をいいたいのかといえば、「今は今しかないのだから、先送りしないでやれることはやっておけ」ということ。なにも「○○撮影」に限ったことじゃない。

「いつでも行けるから」といって訪問を先送りしていた場所が、ある日突然、なくなってしまうかも知れないのだし。そのことは、東日本大震災の後で多くの人が認識したのではなかろうか。

あと、あって欲しくはない話だけれど、車両や飛行機が事故に遭ってなくなってしまう、なんてこともある。なんとなく成田で某エアラインの機体を撮っていたら、後で会社が倒産してしまったことがある (どことはいわんけど、復興航空のことだ)。

会社がつぶれた、なんていう極端な事例はともかく、そうでなくても機体が売却されたとか、塗り替えられたとかいうのもある。鉄道車両界にも、似たような話はいろいろある。

「某機関車が某線の運用に入ったから、そのうち行こう」といっていたら運用から外れちゃった、なんていうパターンもありがち。逆パターンで、撮りに行った直後に運用から外れて「行っておいてよかった」となったこともある。

厄介なことに、「いつでも撮れる」と思っている被写体ほど普段は目を向けないし、「いつでも行ける」と思っている場所ほど普段は行かない。で、後回しにしているうちに、撮れなくなったり行けなくなったりする。そして土壇場になってから慌てる。

いわゆる「葬式鉄」は、なくなる寸前の盛り上がりに快感を覚えていると思われるので、「先に撮っておこう、行っておこう」といっても馬耳東風なのだろうけれど。


よくよく考えれば、昨年のうちに「グリペンを生で見たい」といってスウェーデンに飛んだり、「ひょっとしていけるんじゃね ?」といって JGC に上がったりしておいて、ほんと助かった。「今は今しかないのだから、先送りしないでやれることはやっておけ」で大勝利。

もっとも、JGC に上がった途端に JGC のベネフィットを活用する機会がなくなった、ともいうけれど。

ここまでは対象物のことばかり書いてきたけれど、そもそも自分に残されている時間が、あとどれだけあるか。これは当の本人にだって分からない。「後でやればいいや」をスタックさせて、今際の際に後悔するなんてまっぴら御免なんである。

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