Opinion : ゲームチェンジャー (2020/4/13)
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2 年ばかり前から、「ゲームチェンジングテクノロジー」を扱う日経 BP 総研のレポート執筆に参画させていただいている。店頭売りはしていないし、そもそも個人で買うようなお値段の代物ではないので、存在を御存じない方が大半かと思うけれど。
ただ、このレポートを見て「他所の国ではこんな技術開発をやっている。バスに乗り遅れては大変だから、うちもやらなければ」といっているようでは、ゲームチェンジャーを手にすることにはならないと思っている。
これはどちらかというと参考情報であって、書いてあることをそのまま追いかけるよりも、その背後にある思想や考え方、実現に向けたプロセスについて読み取って欲しいというのが、書き手の一人としての考え。
過去の歴史をひもといてみると、ゲームチェンジャーというものは往々にして、追い込まれた側が自らの持ち駒、自身が有利なポイントを駆使して状況をひっくり返すために生み出したもの、といえるかも知れない。
必ずしもすべてがそうだというつもりはないけれど、「今のやり方で勝てている」「今のやり方で問題ない」という状況では、新たなゲームチェンジャーを生み出そうという動機付けにつながりにくい。
それは至極当然の話で、順風満帆であれば、わざわざリスクをとって違うやり方に変えようというドライブがかからない。逆に、「このままでは駄目だ」という危機感があると、ゲームチェンジャーを生み出す原動力になる。
いちいち事例を挙げ始めると本が一冊書けてしまうレベルの話になってしまうので、ここではそこまで踏み込まないけれど。でも、戦史あるいはウェポン システムの開発史に通暁した方なら、具体例を見つけるのはそんなに難しくないと思う。
といったところで昨今の COVID-19 騒動を見ると、これもある意味、「外からやってきた、追い込まれる原因」ではある。実際、今回の騒動が原因で、やり方が変わった事例は身近なところでも散見される。
たとえば、個人的に以前から「これでいいのかなあ」と思っていたもののひとつに、ベーカリーやお惣菜の陳列があった。むき出しの状態で長いこと置いておいて、衛生上、問題ないんかなぁ、と。
ところが COVID-19 騒動が持ち上がった後で、近所のスーパーではお惣菜の陳列をむき出しにするのを止めて、透明なプラの蓋をかぶせるようになった。とあるパン屋さんでは、むき出しの陳列を止めて、透明プラの扉を付けた展示ケースを使うようになった。
これはまさに、外部からの脅威に迫られた結果として、やり方を変えた典型例といえる。他所の業界でも変化が起きた事例はありそうだけれど、自分がアンテナを張っていない業界のことは知らない。
正直な話、「なあんだ、やればできるじゃないか」と思った。
ただし困ったことに、COVID-19 騒動をきっかけにしてゲームのルールを変えようとしている最右翼は、おそらく、ほかならぬ中国である。COVID-19 の発生源である。
つまり、北京は今回の騒動を逆手にとり、マイナスをプラスに変えるべく、いろいろと手を打ってきている。また、これからもいろいろやってくると思われる。
分かりやすいところだと、各国に医療用の個人防護装備を盛大に提供しているけれど、そうやってこしらえた「貸し」をどういう形で回収しに来るか。考えただけで寒気がする。また、今回の騒動が原因でつぶれる会社がいろいろ出てくるだろうけれど、それによって「ライバルがつぶれたところに中国の企業がなだれ込む」とか、「経営難に陥った会社を買収して勢力を拡大する」とかいう展開も予想される。
そしてなによりも「欧米式の自由と人権を重んじるやり方より、中国式の方がうまく対処できる」という宣伝を展開してくる。それに乗っかる形で、監視システムを売りつけるぐらいのことは当然ながら起きる。
現に、米国務省の分析では、北京は「自国の対応ぶり、他国への支援が感謝されている様子」といったプロパガンダを、特にアフリカ諸国向けに展開しているという。最初は「COVID-19 米国起源説」をでっち上げてみたけど、アフリカ諸国の反応がはかばかしくなかったので、手を変えたのだという。
これが、アフリカ諸国を味方に付けるための工作ではないと思うのは、お人好しに過ぎる。アフリカ諸国を味方に付ければ、国際機関における友好票を一挙に増やすも同然。そういう動きは最終的に、中国が世界の中央に君臨する「大中華共栄圏」を実現しようとする動きにまでつながりかねない。
他にも、「一見したところでは善意の支援に見えるけれど、信じて大丈夫なの ?」と思えそうな事案がない訳じゃない。
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ここまで書くと「そりゃ妄想の度が過ぎる」と思う人もいるだろうけれど、笑っていられるのは今のうち、だいたい、WHO 事務局長の言動を時系列順に並べてみるだけでも、笑いがいつしか引きつった笑いに変わるんじゃなかろうか。
各国が COVID-19 への対処で手一杯になっている間に、何かが静かに、あるいはガラリと変わっていた、なんてことが起きても、驚いてはいけないと思うのだ。
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