Opinion : 流行語を使うと軽く見えて逆効果、という例 (2020/6/29)
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先日、書店に寄ってみたら、タイトルに「コロナ」の語を含む本がワッと積まれていて、げんなりしてしまった。まだ現在進行形の話題なのに、よくそんな本を書いて出せるもんだと思う。時間軸を考えると、そんなに時間をかけてじっくり内容を練ったわけでもないと思われるし。
かと思えば、ポストに入っていた選挙公報でも「コロナ時代をどうたらこうたら」といっている候補者が出てきていて、またげんなりした。そんなことをいう候補者に票を投じたくはないなぁ。
そういえば、ネット通販サイトでは「それ単なる UV 対策アイテムだろ」という品物に透明シールドを追加して「コロナ対策に !」と宣伝している事例がゾロゾロ出てきて、思わず「いい加減にしろ」と思った。
そりゃまあ、トレンド ワードであるのは確かだから、それに乗っかって商機に結びつけたいという心情が働くのも無理はない。でも、そうやって「トレンドを追う」商売ばかりしているのであれば、風向きが変われば全然違うことをいいだすだろうし、ひょっとすると以前とは真逆のことをいいだすことだってあるかも知れない。
その手の「軽さ」を感じてしまった一例としては、「ドローンと 5G の時代にステルス戦闘機なんて時代遅れ」との言説がある。でも、そういうことをいう人はたいていの場合、具体的にどうやって時代遅れにするのかは言及していない。いや、言及できっこない。
そりゃそうだ。何かを腐すのに、トレンド ワードを引き合いに出しているだけだから。冒頭の例も含めて、「コロナ時代に」とか「コロナ禍だから云々」の類もおんなじ。常に、そのとき、そのときのトレンド ワードを持ち出して「○○の時代だから△△は時代遅れ」「○○の時代だから△△は意味がない」とやってるだけ。具体論ゼロ。
でもねえ。「今年はショートブーツがトレンドだから、ロングブーツは流行遅れ !」っていうのとは、訳が違うんである。エンジニアリングやサイエンスが関わる話だと。
同じように、流行語 (というには、いささかトウが立ってるけど) を使って、具体性を欠いている議論をもっともらしく見せている一例に「アメリカ製武器の爆買い」がある。
そもそも、「爆買い」と「爆買いでない」の間を区切る、客観性を備えた定量的な基準を示せといわれたら、どうするんだろう。「爆買い」と題した記事を書いた人は、おそらく誰も、答えを出せない。もともとそんなものは存在しないのだろうから。
単に「爆買い」という言葉でインパクトを与えて、さも悪いことであるかのような印象操作をしている。それだけである。
ここまで挙げてきた事例、どれにも共通するのは「流行語/トレンド ワードを使って、いかにも "もっともらしく" 見せるためのインパクトを狙っている」こと。真剣に考えている人なら、そんな底の浅いことはしない。
これは「個人の感想です」以上のものではないけれど、そのとき、そのときのトレンド ワードを前面に押し出して商売するような「軽さ」は、正直いって耐えがたいものがある。終始一貫したポリシーが、何かあるようには見えないから。
先日に出た拙著では、土壇場になって急遽、「COVID-19 をゲームチェンジャーとして利用しようとしている中国」というくだりを加筆した。でも、それは以前に書いていた内容と、昨今の中国の動向が見事なまでにシンクロしていて、現在進行形のサンプルとして好適だと考えたから。それ以上の意味も、それ以下の意味もない。
だから、「コロナ」の語を使って宣伝するような、はしたない真似はしていない。当然、タイトルに無理矢理「コロナ」の語を入れるような真似もしなかったし、版元からもそんな馬鹿げた注文はきていない。
だいたい、流行り物に乗っかって商売すれば、流行りが終わった途端に道連れになってしまう。昨年から今年にかけてみたいに、世界情勢がワーッと動くと、変化が早すぎて、流行り物があっという間に過去の話題になってしまう。
そういうときに、すかさず最新の話題に乗っかろうとして宗旨替えしたり、いきなり「実は私は専門家」といいだしたりする人がいたら、そりゃもうコントであろう。誰のこととはいわんけど。
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