Opinion : TikTok 問題について少し考えてみた (2020/8/3)
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最近、国務長官を筆頭にして何かと対中強硬姿勢が目立つアメリカだけれど、そこで標的にされているもののひとつが動画投稿サイトの Tiktok。インドではすでに「御禁制」にされてしまっているけれど、アメリカでも、御禁制にするだの、事業売却を求めるだのといった話が出ている。
その手のニュースが出てくると、お約束で「中華アプリは情報を抜かれるから」といったことを書く人がいる。それも懸念されるのは当然だけれど、果たしてそれだけなんだろうか。ということを考えてみた。
「情報を抜かれる」といった場合、自分のスマホや PC に保存している各種の情報が、知らない間に勝手に外部の誰かさん (婉曲表現) に送られてしまっている、といった事態を想定するのが一般的か。たぶん、抜かれて嫌なのはアドレス帳や位置情報あたりと思われる。
ただ、動画投稿サイトの場合、個々の端末で保持している情報とは別のところで問題が生じるんじゃないか、と思っている。それは何かというと、投稿した動画そのもの。
動画投稿サイトの場合、利用者が公開する動画は当然ながら、まずサービス提供側のサーバにアップロードされる。だから、動画投稿サイトのサーバには、ユーザーが投稿した各種の動画が腐るほど大量に蓄積されることになる。
その動画の内容は多種多様。毒にも薬にもならないようなものもあれば、物議を醸しそうなものもある。ともあれ、その大量の動画自体が、ひとつのビッグデータとなる。
毒にも薬にもならないようなデータの供出を求める意味は薄いだろうけれど、それでも、何か利用価値が出てくる可能性はある。街を行く人が映っている動画を、中国お得意の顔認識技術にかけたら、ひょっとすると「マークしている誰かさん」を見つけ出せるかも知れない。
「ミリタリー系 TikTokker」(なんていい方をするのかどうかは知らん) が、自衛隊や米軍基地の公開イベントで動画を撮って投稿するなんてことになると、事態はだいぶ深刻になる。基地の内部や各種装備が映っている動画がそのまま上がるわけだから。
もちろん、それは Twitter や facebook の動画投稿機能でも Youtube でも同じことなのだけど、そのデータを抱えているサーバを誰が運用しているかが問題になる。中国企業は事実上、国家に協力する義務を負わされているわけだから、国がデータの提出を求めれば、拒否はできまい。表向き、何といっているかは別として。
毒にも薬にもならないデータが 99.99%、お宝になり得るようなデータが 0.01% しかなかったとしても、分母がでかければ、その 0.01% の絶対量は決して小さくない。その干し草の山の中からお宝を拾い上げることができれば、十分に元は取れるという見方もできる。
なんてことを考えてしまうのは、自分が平素、撮った写真を拡大してみて「何かお宝が映っていないか」と調べるような真似を、日常的にやっているせい。実際、それをやって「おお !」となった経験は何度もある。
個人的レベルでもそういう経験があるぐらいだから、中国の国家安全部や情報機関が同じことを考えないわけがない、と思っている。いや、他国の情報機関だって同じことで、どうってことなさそうなところからお宝を釣り上げようとしているのは同じだろう。ただ、それをやるのが同盟国なのか、対立因子を抱えている国なのかで意味はだいぶ変わる。
人間、どうしても自分の半径 3m (5m でも 10m でもいいけど、要は「身近な範囲」ってこと) で物事を考えてしまうから、「情報漏洩」というと反射的に「自分が使っている端末」のことばかり気にしてしまう。
でも、「○○投稿サイト」の場合には特に、投稿されたデータそのものが情報漏洩につながる因子を含んでるんじゃないの ? と指摘してみたくて、こんなことを書いてみた次第。実際のところは、思い過ごしかも知れないし、逆に、もっとスケールのでかい発想が背後にあるのかも知れないけれど。
「面白いから」「盛り上がるから」「いいねされるから」といって動画をポンポン投稿していたら、実はそれがデータ収集の目論見に対して知らず知らずのうちに協力している結果になった、では洒落にならないかも。
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