Opinion : 力業での解決は負けの元 (2020/9/28)
 

いろいろ仕事を片付けてホッとしていたら、いきなりドカンと大口のお仕事が発生。こういうときこそ、取りかかる前に「どういう順番で片付ければ、もっとも効率良く、確実に片付けられるか」を考えてからかからないといけない。

手順だけではなくて、使う道具立てのことも考えないといけない。手持ちのリソースと道具立てと自分の能力を勘案した上で、どうすればもっとも効率的にできるかを考える。これ重要。

逆に、「とにかく片付けなければ」と焦りが先行して、ひたすら力仕事でなんとかしようとするのは、たぶん下策。

前にもどこかで、話したか書くかしたことがあったかも知れないけれど。だいぶ以前にお仕事をいただいたことがある某社の、「あまりの段取りの悪さ×力業による解決への依存ぶり」にあきれ果てて、続きの仕事をやんわりとお断りしたことがある。


「きちんと段取りを立てて、仕掛けを整えた上で取りかかる仕事の方が、結果として効率的に済む。力業でなんとかするのは賢明ではない」。

これを軍事組織に置き換えると、「現場の頑張りに依存してしまう軍事組織はダメ組織」という話になるのかなと。軍事組織に限らず、会社でも同じか。

つまりは、今売りの軍研で書いた「戦うためのグランドデザインやシステムを、ちゃんと整えているかどうか」という問題。グランドデザインやシステムがちゃんとできていなければ、現場にツケを回して余計な苦労をさせることになる。それは最悪の場合、戦争に負けて国の命運まで危険にさらす。

現場で頑張れるのは戦術レベルの話まで。戦略レベルや作戦レベルといった上位レイヤーに根本的な間違いがあれば、いくら戦術レベルで頑張ってもリカバリーできない。

もっと始末が悪いのは、現場にツケを回したときに現場が頑張ってしまい (それ自体は悪いことではないけど)、結果的に勝ったり、負けずに済んだりした場合。すると、上層部が「このやり方で良い」と勘違いする原因を作る。

たいていの場合、勝ち戦でも反省すべき点はあるわけで。理想論からいえば、それをちゃんと拾い出して改善できる方がいい。そして、それができる組織は強い。でも、往々にして「勝てばオーライ」で「勝ったんだから、このメソッドでいいよね」となる。ありがちである。

もっと困った組織になると、「勝った」という結果だけが一人歩きして、たとえ問題を内包しているメソッドでも不可侵の教典になってしまう。そんなこともあるやも知れぬ。いや、どこかの帝国海軍の話だなんていってませんよ ?

それに、ある時点で正解だったメソッドが、その後もずっと通用し続けるとは限らない。負けた側が逆転を企図して新たな手を繰り出してくれば、過去の正解は未来の間違いになり得る (とはゲームチェンジャー本でも書いた話)。常に自己変革を怠らず、最善の段取り、最善の仕掛けを模索・適用していかないと。


あえて名指ししてしまうと、「プロジェクト X」が持て囃されてるようではマズいんじゃないかと。あれ、タイトルがどうあれ、実態は「現場の頑張りをフィーチャーした感動ドラマ」みたいなところがあったと思うし。

「感動の人間ドラマ」や「美談」が大好きなのはテレビだけじゃなくて新聞も同じだけど。でも、ビジネスや戦争やその他のクリティカルな現場で、「現場の人間が頑張って問題を解決しました」的な話ばかり持ち上げられた日には、そりゃもう転落の始まりじゃないかと思える。

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