Opinion : リトマス試験紙としての新兵器 (2020/10/5)
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アルメニアとアゼルバイジャンの紛争について、自分がほとんど言及していないのを不審に思ったり、物足りなく思ったりしている方がいらっしゃるかも。
ただ、いつもいったり書いたりしているように、「事故と戦争の第一報は錯綜する」ものだし、誰かがプロパガンダ目的で意図的に贋情報を流す可能性もある。それに釣られても判断を誤るだけ。そんなこともあって、静観を決め込んでいる次第。
だいたい、皆が鵜の目鷹の目状態で情報飢餓に陥っているときこそ、贋情報を流したら食いつかれる可能性は高い。それを利用して情報戦を仕掛ける輩がいないと、誰が断言できようか ? それはそれとして。
何か紛争や戦争が起きると、それまで実戦投入されていなかった新兵器が登場して業界雀の話題をさらうのは、よくある話。今回の場合、自爆突入型 UAV がそれだろうか。AeriVironment の Switchblade や、UVision の HERO といった製品は、何年も前から出回っているけれど。
これに限らず、なにかしら新兵器が初めて実戦に登場して威力を発揮すると、たいていの場合、「これからは○○の時代だ、もう△△は時代遅れだ」みたいなことをいう人が現れる。
でも、自著でも書いた通り、新しいゲームチェンジャーが現れれば必ず、それに対して対抗手段の開発を企てたり、実際に対抗手段をモノにしたりするメーカー/国が現れるもの。どんな新兵器でも、永遠に無敵ではいられない。
それは、過去の歴史をひもといてみれば容易に理解できる種類の話。有史以来、実に多様な種類の新兵器が登場したけれども、遅かれ早かれ、対抗手段が出てきたり、もっと強力な新兵器が出てきたりして、神通力を失っている。
自爆突入型 UAV も、おそらくは同じことになる。すでに C-UAS (Counter Unmanned Aircraft System) の開発あるいは製品化事例は少なくないことだし。ただ、ISR (Intelligence, Surveillance, and Reconnaissance) 用途の UAV と比較すると機体が小さいので、探知は難しくなる可能性がある。
とかなんとかいっていたら、Switchblade の新型は一挙に大型化してしまった。性能向上の要求が出てきて、最初は小型軽量だったものがドンドコ肥大化するのも、また、よくある話ではある。
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そんなわけで、自爆突入型 UAV についていえば、過大評価も過小評価も謹んで様子を見ようよ、というのが個人的なスタンス。自著で書いたように「ゲームチェンジに終わりはない」のだから。これが今回、おおいに威力を発揮することがあったとしても、それはそれ。今後も同じとは限らない。
たぶん、釣られて「我が国も自爆突入型 UAV を導入すべき」とか「ドローン対策をなんとかしろ」とか百家争鳴になるのだろうけれど。あと、似たような話で「よそがやっている新兵器を我が国も自力開発しなくていいのか」というのもある。
しかし、個別の事象ごとに騒ぐだけでなく、もっと上のレイヤーの、国としてのセオリー オブ ビクトリーを明確にしないことには。でないと、グランドデザイン不在のまま、個別事象対処の山積みだけになってしまう。国としてどうやって勝つつもりなのか、どうやって生き残るつもりなのか。本当に大事なのはそっち。
ただ、この手の新兵器には違った使い道がある。リトマス試験紙としての。
つまり、目新しい新兵器が出てきて暴れて見せたときに、それに釣られて「これからは○○の時代だ、もう△△は時代遅れだ」みたいなことをいうか、それとも落ち着いて状況を眺められるか。そこのところで「違い」が明確に出るんじゃないかと。
ことに、平素から何かの悪口をいいたくて、ネタを鵜の目鷹の目で探している人ほど、こういうときに釣られる。そして、釣られた人については「アテにならない人認定」すればいい。
そういえば以前にも、「ドローンと 5G の時代だから F-35 は時代遅れ」とかなんとかいっていた人がいたけれど。でも、具体的にどうやって時代遅れにするのかというコンセプトもビジョンも提示しない、まことにいい加減な論であった。
もっとも、新兵器というよりも、「ゲームチェンジャー」と称されたものについては何でも、程度の差はあれ、リトマス試験紙としての機能がついて回るものなのかも知れない。なにも戦の世界に限った話ではなくて、よその業界にもありそうな話。
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