Opinion : 自分と相手の違いを知るということ (2020/12/7)
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「強力な日米同盟のための我々の違いの理解 - 安定した戦略的関係の維持 - (Understanding Our Differences for a Stronger U.S. - Japan Alliance)」
週末に TL で話題になっていた文書。米海兵隊の少佐が書いたものだそうだ。読んでみて思ったのは「ぐぅの音も出ない」。陸上自衛隊が、というよりも日本の組織では往々にして「あるある」な話ではないかと思った。
ただ、これを読んで「日本のことを悪くいわれた」と思った人が、あれこれと枝葉末節をほじくり出しては反論のようなことをしていた様子 (正直いって反論の体をなしていなかったけど)。でも、ちょっと待って。
まず、頭を冷やしてタイトルを見てみて欲しい。「違いの理解」(Understanding Our Differences) って書いてある。なにも「だから陸上自衛隊はダメなんだ」なんてタイトルをつけているわけではない。
この文書の本題は、「陸上自衛隊のここがダメ」ではなくて、「陸上自衛隊は我々 (USMC) と違うマインド セット、違う組織論理で動いているのだから、そのことを理解した上で付き合っていかなければならないよ」じゃないか。というのが自分の受け止め方だった。
すると逆もまた真なりで、日本側も「ああ、米軍はこういうマインド セット、こういう組織論理で動いているのか」ということを知る必要がある。「うちにはうちのやり方がある」と頑なになってしまえば、いい結果にならないと思う。
ただ、この文書で指摘されている本質的なところ、つまり「評価のあり方」であるとか、「必要に応じて現場に意思決定権を委任できていない組織」であるとか。そういうところは、真剣に受け止める必要があるんじゃないか、とも思った。
だいぶ昔に「成果主義悪玉論」に反論するようなことを書いた記憶がある。そこで書いたのは、「成果主義がいけないのではなくて、成果主義の運用の仕方に問題があるんじゃないの ?」ということ。主なポイントを抜き出すと、こうなる。
評価は基本的に目標に対する達成度で決まるわけだから、問題は、最初の目標設定。制度を活かすも殺すも、目標設定の合理性にかかっている。
妥当な目標設定ができないと、成果主義は能書き通りに機能しなくなる。
設定した目標を達成できなかったときに「達成できなかったからダメだ」というだけでなく、その理由や対策まで考える必要がある。
なんで成果主義の話を持ち出したかといえば、件の文書の中でも「結果を評価する vs どんだけ手間をかけたかを評価する」という話が出てくるから。
結果ベースで評価すると、どうなるか。アウトプットが同じなら、それをできるだけ効率的に、確実に、迅速に片付ける方が、評価は上がる。でも、手間ベースで評価すると、真逆になる。
その、「手間ベースで評価する」という土壌があるところに成果主義を接ぎ木したところで、まともに機能するはずがない。しかも、人件費をへつるという動機が先にあったのでは、もうお話にならない。そんなインチキ成果主義をもって「成果主義悪玉論」なんて主張はして欲しくないのだな。
と、つい熱くなって話が逸れてしまったけれど。
米軍はあちこちで、さまざまな国の軍隊と訓練、あるいは演習をやっている。すると、国ごとの組織風土やマインド セットの違いを、知りやすい立場、観察しやすい立場にあるんじゃないかと思う。これはある種の強みじゃないかと、
だいぶ前に読んだ本で、日本の建設会社がドイツに進出して、現地で工事をやったときの話が出てきた。そこで現地の現場監督が、さまざまな移民あるいは出稼ぎ労働者を使う際に、お国柄や国民性みたいなものを考慮に入れながら仕事を差配する、という話が出てくる。
もしも、軍事作戦の分野にも似たところがあるとすれば、米軍みたいにいろいろな軍隊に接して、観察している立場は強いと思う。
あと、日本の、特に自衛隊がやらなければならないことは、仮想敵国の軍隊がどういう組織風土で、どういうマインド セットで、どういう意思決定プロセスの下で動いているかを知ることじゃないかと。(すでにちゃんとやってます、ということならいいんだけれど)
それが分かっていないと、戦略・作戦・戦術のいずれのレベルでも、仮想敵国の動きを読み誤る危険性があると思うから。自分らと同じロジックで動くだろう、という思い込みは失敗の元。
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