Opinion : アップダウンの法則 (2020/12/28)
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個人的には、昨年から今年にかけてのホット ワードのひとつに「ゲームチェンジャー」がある。自著に対していただいた評の中に「ゲームチェンジャーの定義から分かる本は貴重」というのがあったけれど、そこは書くに際してかなり悩んだところ。
その「ゲームチェンジャー」と称されるような、画期的な製品あるいはサービスを生み出せる土壌があることは重要。もっとも、その前段階としての「勝つためのゲームのルール」を考え出せることが前提ではあるけれど。
ところが面白いことに (当事者にとっては面白くないことに)、最初に何か、画期的な商品やサービスを出して勢いづいた個人あるいは会社が、その後で大コケする事例が少なくないように思える。つまりアップダウン。
どういうことか。
画期的な商品やサービスを出すことで、話題になる。顧客が集まる。その中には「ファン」あるいは「信者」みたいな層が発生することがままある。
そして、最初に画期的な商品やサービスを出すと、特に「ファン」や「信者」は「さらに画期的な商品やサービスを」と期待するものだし、企業であれば投資家も同じことをいいだす可能性がある。
ところが。最初に出した商品やサービスの延長線上であれば、それは「勝手が分かっている領域」の話だから、まだしも大外れは少なくて済みそう。ところが、版図を広げて別の領域に手を出すと、そこでは違う種類のノウハウが必要になる。
業容を拡大するときのひとつのアプローチとして、「既存領域の隣接領域から始める」とか「まずは堅実にスタートして、ノウハウを体得したところで革新を求めていく」とかいった手が考えられそう。
ところが、周囲の状況がそれを許さないことがある。つまり、「いきなり画期的な商品やサービスを送り出すという、いわばサプライズを求める圧力」。最初のデビューが鮮烈で、熱狂的なファンや信者がつくほどに、そういう圧力は強まりがち。
そこで、ノウハウや知見が足りないままに「こちらの分野でも画期的な商品やサービスを出してやろう」と勢い込んだ結果として、出来の悪いものを出してしまったり、品質に問題があるものを出してしまったり、ということが起きる (ことがある)。
ところが、そこで熱狂的な「信者」がついていると、どうなるか。たとえば品質不良が発生したときに、信者が「すぐに新品交換に応じてくれた、素晴らしい !」みたいなことをいって擁護し始める。
いやあの、品質向上を求めないと本質的な解決にならないんですが。
その結果として、「出来が悪い」「品質が悪い」といった問題が覆い隠されてしまう。一時的には問題が解決したように見えるかも知れないけれど、長期的には爆弾を抱えることになる。
こうやってみると、熱狂的なファンや信者の存在って、「支え」になっているようでいて、実は地雷にもなり得るんじゃないか。なんてことを、ここまで書いているうちに思った。買い支える一方で、ちゃんと苦言も呈してくれる存在ならいいのだけど。
経営的見地からすれば、ずっと同じ分野、同じ領域の仕事ばかり続けているのはリスク要因になり得る。その分野・領域がこけたら「もはやこれまで」だから。こけそうにない分や・領域において、ずば抜けた「ライバル不在のオンリーワン」になれば、また話は違うかもしれないけれど。
すると、商売を続ける過程で「新分野への進出」は不可避であるにしても、そこで自身が持つ能力やリソースを客観視できず、勢いで突っ走ったり周囲に煽られたりすると、大コケする原因になる、という話だろうか。
しかしこれ、いうは易く行うはなんとやらの典型例。「客観視する」といっても、どうすればそれを確実にやれるのかと問われれば、「うーん」となってしまう。うーん。
なお、バズワードに釣られて「バスに乗り遅れるな」となるパターン。これは十中八九、地雷を踏むんじゃないだろうか。バズワードというのは基本、乗っかる側よりも流布させた側が得をするものだと思う。
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