Opinion : モノを知らなければ能力を引き出せない (2021/2/1)
 

またも EOS R5 のネタで (苦笑)。新しいカメラが手元に来て、こんなに熱くなったのって久方ぶりかも知れない。

相変わらず、IOT&E (Initial Operational Test and Evaluation) という名目でいろいろな状況、いろいろな被写体を相手に試してみている。基本的には「EOS R5 の AF はスゲー」と思っているけれど、たまに外したり、微妙に合わなかったりということもある。

たとえば、被写体の形状やパターン (要するにカタチとして表れる線である) の内容次第で、捕捉できなくなることがまれにある。あと、動体予測と追尾の合わせ技では、被写体がまっすぐ動いていれば打率は高いけれど、左右方向の動きがブレンドされると、ときに甘くなることがある。

ただしこれは、AI サーボ AF の設定選択次第で改善される可能性があるので、おいおい試してみるつもり。


それで何をいいたいのかといえば、「いくら賢いカメラでも、箱から出したままの状態で、いきなり打率 100% で完璧に撮れる」とは行かないということ。機材の性質や特徴や癖を把握した上で、長所を活かし、短所をフォローする使い方を考えないといけなくて、それは撮り手の責任。

メカニカル制御でもコンピュータ制御でも、なにがしかのロジックに基づいて作られているわけだから、そのロジックについて知らないと能力は引き出せないし、ロジックの癖・傾向を知らないと馬脚を現すこともある。

うちのクルマに付いている EyeSight もそんなところがあって、最初のうちは傾向をつかむためにいろいろ試した。なにも考えないで機械任せの前車追従クルーズ コントロールなんかやってると、ノコギリ運転になるのはよくある話。

これもまた、いろいろ試してみて癖や傾向をつかまないといけなかった例のひとつ。それが分かれば、運転する側がちょいと頭を使ってフォローすることで、よりスムーズな運転ができる。

これ、自分が使ったことのない他の分野でも、一般的にいえることなんじゃないだろうか。たとえばウェポンの世界も同じじゃなかろうかと。

もちろん、コンピュータ制御によって自動化が進み、賢くもなったはず。でも、使い手がブツのことをちゃんと理解していないと、能力をフルに引き出せないだろうし、何かの拍子に「ちょっと待ってなんでこうなるの (汗)」みたいなことになられても困る。

ことに「自動化機能」っていうのは、どういう意図の下でどういうロジックを用いて自動化したのかが分からないと、「なんでこうなるの」が起こりがち。

自動化のお節介がユーザーに受け入れられなかった一例というと、ミノルタの α○xi シリーズなんか典型だと思うのだ。


別に自動化そのものを否定するつもりはないけれど、どういう意図の下でどういうロジックに基づく自動化をしているのかが分からないと、ユーザーと自動化機能が喧嘩をすることになる。FBW (Fly-by-Wire) がらみの事故で、そんな指摘があったような。

だから、製品やシステムの能力を確実に引き出し、短所をカバーして、意図せざるトラブルを避けるためには、どうするか。それには、しっかり運用評価試験をやって、長所も短所も癖も能力限界も把握しておかないとダメよね、というのが今回の話の本題。

メーカーの公式サイトに行けば済むはずのカタログ スペックをわざわざ転記してきて、ばかでかい表を作っては「こっちのカメラがお勧め」みたいなことを書いている blog があるけれど、数字のスペックだけで用が済めば世話はない。

実際に使ってみないと分からないことはいろいろあるし、作り手の意図 (それが制御ロジックなんかに反映される) や技術的限界も承知していないと。それをしないで夢ばかり見て、実際に使ってみて「裏切られた」となるのでは、青い鳥を追い求め続けるのと同じではないかなぁ。

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