Opinion : 「察してください」の限界 (2021/4/26)
 

「女性はストレートにいう代わりに、相手に察してもらおうとする」なんて話がいわれることがある。実際、「なんでこれぐらい察してくれないのよ !」といって喧嘩になるとか、ならぬとか。

なんて話を突き詰め始めると、いろいろボロが出かねないので措いておくとして。もともと日本の社会全般に、「直截的な表現よりも、間接的な、察してもらおうとする場面」が目立つ。ような気はする。

もちろん、これには地域差もあるわけで、たとえば似たような商品・サービスの広告でも、地域によってアピールの仕方は違っている。間接的なアピールだったり、直截的なアピールだったり。そんな違いを観察するのも楽しい。


といったところで、目下大安売り中 (?) の「緊急事態宣言」。

感染拡大が収まる兆候が見えない、変異株は来襲する、医療関連のリソースは余裕がない。となれば、何か手を打たないといけない。それは分かる。ただ、そこで「察してください」あるいは「明言はしないが誘導する」作戦に走るのも、限界があるんじゃないの。というのが昨日・今日の感想。

なんか、昨日は「休業する前に」といってデパートに駆け込み買物に出る人が大勢いた、なんてニュースが流れていた。もっともこれは、ニュース屋さんがそういう画を求めて出向いていった一面もあるだろうけれど、望遠レンズでナニするだけでは限界があるわけで、多くの人がいたのは確かなんだろうなと。

しかしそうなると、感染拡大防止の前に感染拡大の原因を作っちゃってるようにも思える。かといって、鉄道車両の引退ではないのだから、突然休業というわけにもいくまい。隠密裏に事を運ぼうとしても限界がある。

例の「灯火管制」にしても、「明かりが付いていると、吸い寄せられるように呑みに行こうとする呑み助がいる」との意見があって、それはまぁ、分からなくもない。でも、お店で呑むのを阻止しても、それが街頭呑みや宅呑みに場を移して、呑んで騒ぐ状況が同じ。となったのでは、効果が上がらない。

昔からいろいろな場面で見られる現象ではあるけれど、規制しようとしてもそれをかいくぐり、理由や名目をでっち上げては呑もうとするのが呑み助みたいで、まったく、自制心のない呑み助は始末が悪い。

そして、そこに「察してください」とか「暗に誘導」とかいっても、効果が上がるような気はしない。効果が上がらないと、結局のところは真面目にやっている人が馬鹿を見るし、飲食業界のみならず、運輸業界まで流れ弾が飛んで来て大迷惑している。

「電車の本数を減らせば、出歩いてはいけないのだと察してくれる」という論法では、なんぼなんでも無理があると思う。

「自分だけは大丈夫♪」と無邪気かつ無根拠に思い込んでいる人に対して、「察してください」作戦がダメなら、直截的に「こんなに大変なことになってるんです」とやる方が、まだしもマシじゃないかと思っている。

もちろん、それをやればパニックを誘発するリスクはあるのだけれど。でも、その手の話があまり表に出てこないと、「自分だけは大丈夫♪」派は「問題ないんでしょ ?」と思ってしまうのでは。そして、もしも二進も三進もいかない事態に至り、それがいきなり露見したら… そっちのパニックの方がよほど、酷いことになるのと違う ?

戦争やってる国でも、あるでしょ。「我が軍は無敵、絶好調 !」と宣伝していたら、実は負け戦だった、というやつ。先週に書いた話にも通じるところがあるけれど。


と、ここまで書いたところで「緊急事態宣言が出ちゃったので」といって隣県に繰り出す人がゾロゾロ現れた、なんてニュースが出てきた。あのね、せめてお出かけするなら「人のいないところに」ぐらいのことを考えるおつむは持ち合わせていないのかと。

やっぱり「空気を作る作戦」とか「察してください作戦」では限界があるんじゃないの…

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