Opinion : 趣味は沼にはまってこそ楽しい (2021/5/3)
 

何を書こうかと思った結果、連休中でもあるし、今回はちょっと軽めのヒマネタで。

今、仕事の関係で、ある車両のことを調べている。ところが調べ始めてみたら、製造年次によって形態の違いがあると判明。そこで現車を追いかけて証拠写真を撮り、過去に撮っていたものと比較してみたら、新たな謎が発覚。と、そんな状態で、ちょっとした沼になっている。

でも、沼になるということは、それだけ原稿にする意味があるということだ、というのが個人的な信念。別件のお仕事でも、だいぶ昔にデータをまとめていた形態分類調査のデータを引っ張り出して、ちょいちょい活用している。


鉄道趣味を構成するジャンルのひとつに「現車の形態分類調査」がある。ただしこれ、正直いって、「地元の路線」でもないと、なかなか現車を追っての調査はできない。あれこれと資料をあたるなどすれば、多少のアシストはできるけれど、もちろん自分の Mk.I アイボールで確認するに越したことはない。

鉄道車両でも艦艇でも航空機でも、同じものを長く製造していると、いろいろと手を入れたいところ、手を入れざるを得なくなったところが出てくるので、結果的に形態の差異ができる。それに気付いたときの「みっけ !」というドキドキ感。それを味わうにはやはり、自分の Mk.I アイボールで確認するのがベスト。

たまたま自分の場合、鉄道車両の形態分類で多少は眼力を鍛えることができた、と思っている。それが他の分野で活きることもあり、たとえば米海軍のフォレスタル級空母で1 隻ごとにレーダーの搭載位置なんかが違うのに気付いたときは、まさに「みっけ !」というドキドキ感があった。

ことに艦艇の場合、ドック入りしたり、延命改修したり、能力向上改修したりすると形態が変わることがままあるので、同じフネでも継続的に追いたい。根性と時間と費用がかかる話ではあるけれど、やれたら面白いよね。たぶん。

形態分類沼というと、個人的に真っ先に思いつくのは JR 北海道のキハ 183 一族。これは沼も沼、泥沼級に複雑怪奇だけれど、それだけに面白い対象でもある。同じ JR 北海道の 721 系も、また相当な沼。ことに、この子は改造と組み替えが激しいから。

「みんな同じ」といわれがちな N700 一族にしても、子細に調べてみれば意外と形態の違いは多い。なにせ所帯が大きいから、金太郎飴のようでいて、そうではない。分かりやすいのはレイダースの有無だけど、床下を見れば CI が違ってたりする。あと、経緯が経緯だから仕方ないけれど、X59 の 1 号車みたいな変わり種もいる。

形態分類沼に落ちると何が楽しいかといえば、(しつこいけど) 各種の細々した差異を、自分の目で見て気付いたときなんである。


なんか、最近の若い子 (なんて書き方をするのは、それだけ自分が歳を食った証拠でもある) の中に「オタクになりたいけど、手間暇かけての回り道はしたくない」という風潮があるとかなんとかいう話を目にした。

そんな虫のいい話があるかいな。

先に書いた形態分類沼なんていったら、たぶん「オタク的趣味の極めつけ」扱いされそう。そしてこれは、手間暇かけて自分の目で追いかけて、発見するから楽しいのだ。他の誰かが書いたものは、ヒントや教材にはなっても、それだけでは「知る楽しみ」にならない。

というか、ことに何かを調べる趣味って、基本的に「手間暇かけたり回り道したりするから、結果的に得るものが大きいし、何かを達成したときの充実感につながる」のと違う ?

念のために書いておくけれど、手間暇や回り道は、単に苦しい思いをするだけの「艱難辛苦の押しつけ」とは違う。手間暇や回り道もまた楽し、という意味。

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