Opinion : ふたつの事象を安直にリンクする事例と、定点観測の話 (2021/10/4)
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A という出来事に続いて B という出来事が発生したときに、この両者に関連性がありそうに見えると、反射的に (?) リンクしてしまう事例がままある。
たとえば、台湾がらみで何か、北京のお気に召さない出来事があって、それに続いて中国軍機が大挙して台湾の防空識別圏 (ADIZ : Air Defense Identification Zone) に闖入したとき。そんなニュースを見ると、「(○○な出来事) に対する反発」などと見出しをつけるのはお約束みたいなもの。
最近はよくある話だけれど、欧米からアジアに軍艦がやってくると、とりあえず (?)「対中牽制」と見出しをつける。
ことに、この「○○を牽制」は、毎度おなじみのチリ紙交換みたいな見出しの典型例で、"牽制の大安売り" じゃないかと思うこともしばしば。何でもとりあえず牽制っていっとけばもっともらしく見えるだろ、と思ってるんじゃないか ? と。
もちろん、本当に関連性がある動きであるのかも知れない。でも、常にそうだという保証もない。「A という出来事に続いて B という出来事が発生したから、この両者は関連性があるに違いない」という論法は、物事を単純化しすぎではないかと思える。
多少の悪知恵が働く人や組織や国であれば、この手の反応を逆手にとったディスインフォメーションを仕掛けてくることも、ひょっとするとあるかも知れない。何かの事象に対する反応が、いつもテンプレ化、パターン化していると、逆手にとるのはそれだけ容易になってしまう。
軍事作戦の分野だって、そうでしょ。「こういう風に仕掛ければ、きっとこういう風に反応するぞ」「一度やってうまくいったら、次もきっと同じ手で来るぞ」などとパターンを読まれていると、それを逆手にとって裏をかかれる。
テンプレ化といえば、「諸外国から注目されるためにミサイルをぶっ放す北朝鮮」という論法もそれか。その手の記事を書いている人は、いちいち「これは本当に注目を集めるためなのか ? と疑って検証しているんだろうか。だいたい、撃ったミサイルの種類からして、毎回同じというわけではないのに。
「C 国が D 国に対する武器輸出パッケージを承認した」も、往々にして、その直前に発生した出来事と安直にリンクされる。武器輸出の話をまとめて輸出承認を取り付けるに至るまでのプロセスが、そんな短時間で済むとは限らないのに。(FMS のプロセスなんか調べたことがあると、なおのこと、そう思うわけで)
どこかのメーカーが新製品を出したときに、すぐ「ライバルの○○に対抗」とやるのも、単純化したリンクの一例かも。ことにクルマの業界なんか、ニューモデルを開発して世に出すまでにはどえらい時間と手間がかかるわけで、何もないところからいきなり反応して対抗馬をパッとぶつけられるかというと、疑問。でも、ニューモデルが出たという話だけ見ていると、その前の時系列を忘れる。
最近、流行りのネタだと「COVID-19 ワクチンの接種後に調子が悪くなった」とか「ワクチンの接種後に死亡した」も同じ。連続する事象だから因果関係があるということにしてしまう。
「実際に起きている現象や行動から、その背景を読み取る」って、要するに情報分析の仕事であって、それは目の前にある事象をいくつか並べるだけで簡単にできるシロモノじゃない。何年も特定の分野についてデータを集めて、整理して、定点観測をやって、傾向やパターンを見つけ出そうと必死になって、それで初めて実現できる種類の話じゃないかと。
本当に関連があるかどうか分からないのに、二つの事象をリンクするような記事を出すぐらいなら、起きた出来事だけ淡々と並べてくれよ、と思うのだけれど。「背景事情の説明らしきものがないと、社内的に許してもらえない」んだろうか。どこまで正しいか分からない、しかもテンプレ化した「背景事情の解説」は、却って有害だと思う。
ニュースの話ではないけれど、何かの情報に接したときに、それが自分の願望に沿う内容だったのか、とんだ早とちりをしてしまった… そんな事例も見かけたことがある。定点観測していれば「はいはい毎度恒例」で済む話でも、ピンポイント的に見ると「!」と思ってしまう。そういう類の話。
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