Opinion : 戦う場所とタイミングは選びましょう (2021/12/13)
 

またぞろ最近になって「F-35 欠陥機論」を言い立てる人が出てきたらしい。たぶん、空自の機体が函館空港に緊急着陸した件があったから、ダボハゼのように食らいついたのだろうと睨んでいる。もっとホットなネタが出てくれば、そっちに行ってしまうだろうけれど。

もっとも、「欠陥論」を言い立てる人が、個別の事故の経緯や原因についてちゃんと調べている様子もない。「966 件」を言い立てる人が、ソースとなっている GAO (Government Accountability Office) の報告書に目を通している様子もなさそう。よしんば目を通していたとしても、後から出てきた同じ GAO の報告書で、カテゴリーごとの不具合の内訳が激変している件については、ダンマリであろうし。

(この件で面白いのは、GAO の報告書で殴りかかると、GAO の報告書で殴り返されるところ)

だいたい、この手の人は公式報告書に都合のいいことが書いてあると「それ見たことか」と大ノリで吹聴するのに、都合が悪いことが書いてあるとダンマリを決め込んだり、「この報告書は間違いだ」「そんなはずはない」といいだしたりするもの。いい加減なものだと思う。


ネット上では毎日のように、この手の殴り合いが起きている。その切れっ端が自分の視界範囲内に流れ着いてくることもあるけれど、基本的には、いちいち個別に反応することはしないようにしている (たまに例外が発生して、おちょくりに行く場面もないわけではないけど)。

それはなぜかといえば。自分の本業は物書きなのだから、自分が仕事で書くものを通じて論じるのが筋。ネット上でやるのは場外乱闘だから。そっちにリソースを食われるのは賢明ではないし、そんな時間やリソースがあったら本業で使うべき。

ことに、アクシデントやインシデントで火が点いたバトルは、その場で即座に反応するもんじゃない。いつも書いているように、事故と戦争の第一報に反応するのは、往々にしてガセネタを掴まされる原因になる。「第一報では動かない」。これ基本。

前に「戦機が分かっていない人がいる」という話を書いたことがあったけれど、タイミングだけでなく場所についても、たぶん話は同じ。バトルを仕掛けるなら仕掛けるで、場所とタイミングを適切に選ばないと、勝てそうなものも勝てなくなってしまう。

航空機などの事故についていえば、いずれはオフィシャルな調査報告書がリリースされるのだから、それを待つのがいちばん賢明。そこで初めて「そうだったのか」となる場面も、ままある。もっとも、報告書を読むのに予備知識が求められることは少なくないけれど、それはまた別の話。

そして、オフィシャルな調査報告書がリリースされたら、それを受けて記事にまとめる。物書きがなすべき仕事はそっちであって、ネット上で場外乱闘を展開することではない。それこそ「戦機」の話であって、手元に勝てそうな材料が揃ってから仕掛ける方が、拙速に仕掛けるよりも勝算が大きい。それぐらいの判断はできないと。

せっかくいい材料を得ても、仕掛ける場所を間違えると、「西山事件」みたいなことが起きる。新聞記者なら紙面で勝負すべき、という杉山隆男氏の言い分はもっともだけど… しかし最近でも、紙面じゃなくて、ついったらんどで場外乱闘してる新聞記者、チョイチョイ見るね。


もっとも、ネット上で展開されているさまざまなバトルのうち、自分の仕事に関わりがありそうなやつについては、「ネタ拾い」の役に立つこともある。「あー、こんなスットコなこといってる人がいるのか」と分かれば、それは原稿のネタになり得るかも知れない。

もっとも、原稿のネタにするにも相応のクオリティ (?) は必要で、それすら満たせないものもままあるわけだけれど。

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