Opinion : 「どう使うか」が重要 (2022/5/16)
 

「少なくとも現在は」という但し書きがつくけれど。どこか海外で武力紛争が勃発して、そこで何か大活躍している装備「○○」があったときに「日本も○○を買うべきだ」みたいなことは書かないように注意しているつもり。

この手の論が出てきたとき、えてして「しかし○○は日本の国情に合わない」とか「○○は我が国に固有の要求には合わない」とかいう反論をする人が出るもの。でも、自分が「日本も買うべき」論に乗らないようにしようと思うようになったのは、そういう理由ではなくて。


なにかにつけて「日本の国情」や「我が国固有の事情」を振りかざすのも、それはそれで釈然としないモノを感じるのだけれど。実のところ、それよりも、もっと先に考えないといけない話があるのと違う ? というのが、「日本も買うべき」論に乗らないようにしようと思うようになった理由。

それは何かというと、「他国での成功事例や流行りだけ見て、拙速にモノだけ買っても問題が解決するとは限らないでしょ ?」という話。なにも防衛装備品に限った話じゃない。身近なお買い物でも、同じような話にはなる。流行っているから、トレンディだから、持っているとイケてそうだから… そういう理由で手を出したものが、その後に長く役に立ってますか ? とまあ、そういう話。

何を手に入れるかだけでなく、それをどう使うかという大問題があるのに、後者を蔑ろにしているとどうなるか。たぶん、無駄遣いに終わることが間々あるのではないかしらん。

もっとも、これはどこの国にも程度の差はあれ、存在する問題なのかも知れない。フォークランド紛争の後で、いきなり Exocet 対艦ミサイルの引き合いが増えたなんて話がなかったっけか ? (どれだけ御成約になったかどうかは別として)

これがお洋服だったら、「他の手持ちの服と、どうも合わない」なんてことになって死蔵する事態に直面しても、よほどなものでない限り、大損害にはならないと思われる。思われるけれども、女子の皆さんからは反論があるかも知れない。

でも、もっと値の張る品物だったらどうなるか。CONOPS (Concept of Operations) が不明確なまま、モノを手に入れることだけ先走った挙句、出番があまりめぐってこなかったり、当初に意図した通りに活躍してくれなかったりしたら。それでは、損失… というか、無駄遣いの規模も相応にデカくなってしまう。コーディネーションが問題になるのは、なにもお洋服に限った話ではない。

もっとも個人レベルであれば、そういう面倒な話は抜きにして「ネタで買う」という選択肢も、あるにはある。もしも大外れのスカに終わったところで、自分ひとりがションボリすれば済むわけだから。お買い物のしすぎが原因で、大借金を抱えて身を持ち崩すことにでもなれば、話は違ってくるにしても。


実のところ、トリガーは「他国での成功事例や流行り」だけではないのかも。いつもいったり書いたりしている「部分最適化の行き過ぎ」で、個別の課題に対処しようとして個別の課題に部分最適化していたら、全体としては調和がとれてなくて不協和音が響き渡る… そんな場面もありそう。

なんでそんなことになるかといえば。全体を見渡せる視座の高さとか、そこで判断を下す際のベースラインになる目標とかビジョンとか、そういった要素を欠いていると危ないのではないかしらと。

このあいだ、Z… じゃなくて財務省から出てきた怪文書について書いた話と被るかも知れないけれど。個別の課題ごとに「安上がりに済ませよう」とやっていたら、そりゃ全体最適が疎かになっても無理はない。

やはり、「目には目を、歯には歯を、怪文書には怪文書を」で、こちらもカウンターになるような怪文書を書いてぶちかますしかないのかなと。そんなことを思う場面もある今日この頃。

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