Opinion : いつまでも、あると思うな、今の勢い (2022/6/13)
 

「いまあるものはずっとあるのかシリーズ・第三弾」。(ええかげんに引っ張るのやめたら ?)

ロシアがウクライナに戦争を仕掛けた後で、いろいろなやらかしが伝えられた。それは今も変わらないし、開戦前の「ロシア軍優勢」との観測から、今は「ロシア軍、ダメなんじゃないの ?」という観測が多数派を占める方向に変わってきている、ような気がしている。

でも、逆にそうなってくると「どこまで本気にしていいのかなあ ?」と思えてくる。昼間、mixi ニュースのヘッドラインに「ロシアで 3 ヶ月以内に政権交代か」なんて見出しの記事が載っていたけれど、こうなるとさすがに「マテマテマテ」とブレーキをかけながら見たくなる種類のもの。それは、この予測が正しいかという話もさることながら、それだけで問題が解決すると思っていやしませんか、という意味が大きくて。

政権交代しただけで問題が解決する、なんて保証はどこにもない。どこかの国がすでに、骨身にしみて感じたことではなかったっけか ? これが小説の終わらせ方なら、「悪いトップをぶっ飛ばしてハッピーエンド」というシナリオはちょいちょい見かけるにしても。


しつこく書いているように、何かに勢いがあるときには、その勢いがずっと続くように思えてしまう。逆に、何か物事が悪い方向に転がっているときには、その悪い方向がずっと続くように思ってしまう。しかし実際には、上り調子だったものが反転下降することもあれば、その逆もある。

じゃあ、ウクライナでロシアが何かの拍子に圧倒的な勢いを得られる日が来るのか。生憎と自分はそれを判断する材料を持ち合わせていないから、Yes とも No ともいわない。ただ、良くない流れがずっと続くんだと無邪気に信じ込むのは危険ではないか、といいたいだけ。

そもそも、この「今の勢いがずっと続く」という思い込みが、往々にして判断を誤らせる。ものすごい上り調子でチヤホヤされた会社の経営者が、その上り調子がずっと続くと信じて経営判断や投資判断を誤る、といった類の話で。

成功しているときほど、うまくいっているときほど危機感を持つ、成功体験をリセットする。って、口でいうのは簡単だけど、実行するのは全然簡単じゃない。でも、それができない経営者や司令官や国家首脳は、きっとどこかでボカ沈する。

「前回にこの作戦でうまく行ったから、次回もこれで」といっていたら、次回には手の内を読まれて負けるかも知れない。電力不足にしても、前回に「節電の呼びかけ」で乗り切れたから次回もそれでいいだろ、なんて思われたのではたまらない。それは弥縫策で、本質的解決じゃない。

なんてことを書いていると、冒頭の「ロシアで政権が交代しただけで解決になるんかいな ?」と疑問視する論も、「いまあるものはずっとある」の一例という話になってしまう。「悪いロシアは親玉が変わっても同じ」という意味だから。しかし実際には、ベースとなる政治情勢や世論の動向などといった要因に加えて、どんな後釜が出てくるかにも大きく依存するだろうし。

すると、「良い方と悪い方と、どちらのケースにも備えよ」という教科書的解答にならざるを得ないのだけど。そうすること自体が「いまあるものはずっとある」へのカウンター。


そういう意味では、たとえば「技術的優位」なんていうのも同じ。ある時点で優位にいたからといって、それがずっと続くなんて保証はない。過去の技術的優位にあぐらをかいていたら技術的奇襲を受けた、という類の話はわんさとある。

運用面も同様。「過去にこうやってうまくいったから」といって、その「型」を極めることに熱中していたら、いつの間にやら「勝てる型」が変わっていました。となったのではたまらない。トップシェアを誇っていた企業が後発のライバルに突き落とされて転落、なんていう話もしかり。

だから、当事者が真顔で、自分らのことを「最強」「無敵」「ナンバーワン」と信じ込んで、口にするようになったらヤバいって。もっとも、逆に「最低」「もうダメだ」しかいわなくなっても、それはそれでまたヤバいのだけど。

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