Opinion : 危険なトリックスターを避けるということ (2022/7/11)
 

閉塞感や前途不透明感に苛まれた時、ついつい、「既存の枠をぶち壊す」「既成概念から外れた」系のトリックスターが出てきたり、それが人気を集めたりするのは、間々ある話。もしかすると、以前に書いたことがあったかもしれないけれど、昨日の参院選の速報を見ていて、改めて「これは書いておきたい」と思った。

しかもその手のトリックスターは往々にして、既存の枠、既成の概念から外れた形で宣伝を展開して、社会に入り込んでくる。いってみれば、正面攻撃ではなくて、見過ごされていた隙間から浸透攻撃を仕掛けてくる、というかなんというか。

政治の世界で泡沫新党が浸透攻撃を仕掛けてくる… なんて駄洒落をいっている場合ではない。


これが芸能界だったら、なにか "違った" 人が出てきたところで、それほどの害はないかも知れない。しかし、ビジネスや政治の世界になってくると話は別。たとえば議会で、いかれた主張をするトリックスターが現れて、それが人気を博して多数の議席を確保するようになればどうなるか。ちょいと過去の歴史を振り返ってみて欲しい。

さらに始末が悪い事態は、「支持者」が「信者」になってしまうこと。「支持者」なら、まだしも冷静さや客観性が残るけれど、「信者」になるともはや盲目。崇める対象がすることは何でも正しい、崇める対象に逆らうやつは大悪魔、となってしまう。

いや、具体的に誰のこととはいいませんけどね。でも現実問題として、「当事者もそれはそれでヤバいけれど、それ以上に信者がヤバい」。そんな事例をいくつも目にしているだけに、笑って済ませるわけにもいかないと思っている。

ことに、COVID-19 がらみで宗教じみて「教祖」みたいになる人がいたり、その人がいうことを妄信する上に、周囲にまで触れて回る「信者」がいたりすると、これはもう人命に関わる大問題になる。

現にいるでしょ。「○○が効く」という話が湧いて出たり、それを大声で触れて回ったりする人。もう、アビガン信者のことなんかみんな忘れたかもしれないけれど (まあ、その後にいろいろ新手が出てきたからね…)。そういえば、テスラ缶ってあれからどうなったんだ ?

もっとも、裏を返せば「声だけはやたらとでかくて、仲間が集まってエコー チェンバー化していて、しかも教祖様の正しさと勝利を盲目的・無条件に信じ込んでいる」などなど、「宗教化したトリックスターの信者」にありがちなパターンはある。それを見つけたら、「こいつはヤバいやつだ」といって近寄らないようにすることは可能かなと。いや、具体的に誰のことだとかいいませんけどね。

この辺、前に書いた「声のデカい奴ほど危ない」に通じるところがある話。当事者だけでなく、その周囲の挙措にも目を向けてみないと。もっとも、周囲が「信者化」するのは、周囲が勝手にやっていることとは限らず、当事者がそれを公然あるいは非公然に煽っている可能性もあるわけだけれど。


ただ、こちらから近寄らなくても、あっちからオルグしに来る可能性はある。ネット上で、見ず知らずの他人をオルグする事例がどれだけあるか分からないけれど、むしろリアルの (ミート スペースの) お付き合いの方が怖い。たとえば近所のママ友みたいなやつ。

そこで釣られてしまうのって、自分がどんな状態に置かれているときなんだろう… なんてことを考えていた。常識的に考えると、やはり不安や不満をなんとなく内包しているときが、いちばん危険。前に、「病気で入院しているようなときは、何にでも縋りたくなる」という趣旨のことを書いた気がするけれど、それと同じデンで。

あと、「一発で問題が雲散霧消する銀の弾丸が欲しい」とか「とにかくムシャクシャして、いまあるあれこれをぶち壊したい」とかいう心境になっているときも、すごく危険だと思う。どうやったら、そういう危険、かつ、つけ込まれやすい心理状況から脱することができるか… しかしそれもまた、銀の弾丸はないのだろうなぁ。

実のところこの辺は、カルトやトンデモ政党に限らず、巷に流れる数多のニュースだって同じかも知れない。

世の中の嫌なニュースから意図的に距離を置くとか、小さな幸せをコツコツ見つけたり用意したりして、内心の憤懣が「臨界」に達しないようにするのは、ちょっと有用な手なんじゃないかと思っている。

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