Opinion : 専門家は上手に使って欲しい (2022/8/22)
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讀賣新聞で、AGM-88 HARM (High-speed Anti Radiation Missile) のことを「対放射線ミサイル」と書くやらかしがあった。知らないのは仕方ないにしても、「対放射線」だけで「変だ」と思う脳味噌はなかったのか。とは思わざるを得ない。
ゴジラに向かって撃つミサイルなら「対放射線」でいいのかも知れないけれど、そうではないのだから。これこそまさに「ググれカス」案件で、ちょいと調べればすぐに分かるはずの話である。
もっとも、世間一般には「SEAD (Suppression Enemy Air Defense) や DEAD (Destruction of Enemy Air Defenses) のためにレーダーをつぶすミサイルがある」なんて話は、想像の外であるかも知れないけれど。
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「知らないのは仕方ないけれど、なんだかなぁ」な話は、なにも対レーダー ミサイルに限らない。ウクライナがらみでいきなり知名度を上げた FGM-148 Javelin にしても M142 HIMARS (High Mobility Artillery Rocket System) にしても、新兵器でもなんでもない。ウクライナ向けの FGM-148 の輸出なんて話は、けっこう前からあった。話題にならなかっただけで。
なんだけれども、「自分らが知らなかった画期的な新兵器」という文脈でニュースなんかのシナリオを組み立ててくれると、その文脈に沿ったコメントを求められるようなことも起こり得る。もしもそうなれば、これまた「なんだかなぁ」案件となる。
知らなきゃ専門家に聞けばいい、は正論ではある。
ところが、なにせ新聞業界ときたら「専門家はタダで話を聞かせてくれる」と思っている。ときには、(テレビもそうだが) 先に自分らが書いたシナリオに合わせて喋るよう求めたり、シナリオに合わせてつぎはぎしたりする場面がままある。
そういう経験をした結果として嫌気がさして、新聞 (のみならずテレビも) の相手をしなくなる専門家が出てきても不思議はなさそう。そんなこんなの結果として、珍訳がそのまま世に出てしまったり、テキトーなことを喋る人が跋扈する可能性が高くなってしまったり、という話になる。
幸いにも、ウクライナの戦争に関してはまっとうな専門家が表に出てくれているけれど、一方で、妙なことをいう人もいるようだし、安心しきれない。そして、COVID-19 がらみのあれこれについては言わずもがな。
もしも、まっとうな専門家が表に出るのを嫌がるようになると、結果として、情報の受け手にまで累が及ぶ。それでは誰も幸せにならない。新聞社やテレビ局の中の人が、そこまで考えているかどうかは知らないけれど。
新聞だったら記者やデスク、テレビ局だったらディレクターになるのか ? そういうポジションの人が、ちゃんとした予備知識とバランス感覚を身につけてくれていれば、少なくとも HARM の件みたいな話は起きないと思う。
「そんなこといったって、軍事問題だけ専門でやっているわけではないのだから」と反論されそうだけれど、それならそれで、外部の専門家を上手に使う術を身につけて欲しい、とはいいたい。
といっても難しい話ではなくて、まず「シナリオにコメントを合わせない」「先入観抜きで話を聞く」「余計な切り貼りはしない or 要約したものを確認してもらう」。これだけでも、だいぶ違うんじゃなかろうか。
何か事故があると、すぐ性急に原因を語らせたがるのも、専門性あるいは専門家を軽んじているマインドの現れ、といえるかも知れない。そんな、錯綜するあやふやな情報だけで原因がサッと分かるのなら世話はないのだ。
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