Opinion : 変革と抵抗 (2022/10/24)
 

まだ、具体的な内容は公にできないけれど、先週にあった取材の席、それとそろそろ送らないといけない原稿を書いていて感じた話から、適当に話を展開してみたい。

現時点で「解決すべき問題がある、課題がある」と認識して、何か対応策を考えたり、新しい仕掛けを考えたりする。そういう場面はよくある。ところがそうなると往々にして、「抵抗勢力」が出現する。それも、経験を積んだベテランや、決定権を持っている上層部が主体になる場面が多そう。

なんでそんなことになるかといえば、たぶん「自分が過去に経験してきた『成功のやり方』を否定されるのは、感情的に受け付けない」といったあたり。換言すれば、「過去にこういうやり方でうまくいってきたんだから、なんでそれを変えなければならないんだ」となる。

あと、我が国では何かにつけて「職人芸信仰」みたいなのがあるから、新システムで職人芸を発揮できなくなる、あるいは発揮する余地が少なくなると「どうやって自分の腕を発揮すればいいんだ」と文句をいう。あるあるである。

過去の「成功の公式」が通用している時代なら、それで問題にならなかったかも知れない。でも、何かにつけて変化が激しい当節、こちらが変化を拒んでいる間にライバルが変革を進めてしまい、出し抜かれて没落する事態はおおいにあり得る。だいたい、過去の成功体験への拘泥は「技術的奇襲」に弱い。

むしろ、こちらから先手をとって変革を仕掛けることで、相手に対応を強要したり、主導権を握ったりすべきであるのだけれど。


その「現状に対する危機感」はたいてい、現場の方が強く感じているもの。第一線なのだから、当然、そうなる。たとえば軍事組織だったら、中隊長とか艦長とか飛行隊長とか、そういうポジション。目の前に生身の部下がいて、その部下の生命を預かっているのだから、それだけ真剣に考えるドライブがかかる。

ところが、そこで変革を起こそうとしたときに、上でも書いたように組織の上層部がケチをつけ始めたのでは、変革の足が引っ張られる。ときには、あれこれと暗躍したり策略をめぐらしたりすることで変革につなげた事例もありそうだけれど、これは相当な高等技術。

米軍では往々にして、まずトップが「こういう風に変えるぞ」とビジョンを掲げて号令をかける。実はこれがけっこう大事で、トップが最初に「目指すべき姿」を明確に示さないと、整合性がとれなくなる。

ボトムアップ型で難しいのは、個々の現場に合わせた部分最適の集合体になってしまい、全体最適が疎かになりかねないこと。それを防ぐには、トップが先頭に立って方向性を示さないといけない。すると、それに沿う形で個々の分野における変革を進める道筋がつく (それだけで変革が実現するとはいっていない)。

ただ、現場のニーズや危機感に根ざした変革ならいいけれども、流行りに釣られて「バスに乗り遅れるな」と煽るだけの、いわば変革モドキもあるから難しい。そういう変革モドキを見抜いて排除するのも、また上層部の仕事なのと違う ?

つまりは、組織の上の方の人間 (特にトップ) が、自分の過去の成功体験に拘泥せずに、常に「いま求められている解や方向性は何だ」と問い続けられる人じゃないとダメ、という話になりそう。大きな組織でなくても、たとえば雑誌の編集長がそうやって新たな道筋を追求できる方だと、こちらも一緒に仕事をしていて楽しい。


そういう意味でダメだよなあと思うのが、自著でネタにしたことがある野党業界であるとか、あるいは活動家の業界。「とにかく手当たり次第に反対しないと存在感を示せないからと、結論先にありきで都合の良さそうな事象を拾ってこじつける」とか「一度、何かやってうまくいくと、そのやり方を延々と繰り返してばかり」とか。まあ実例はいろいろ。

手段が目的化して、ビジョンを欠いて、さらにとにかく柔軟性というものを欠いているから、過去に馴染んできた「公式」から外れた事態に直面するとバグる。いまの、ウクライナにおける戦争に対する反応ぶりなんか見ていると、ホントそんな感じがする。こちらの業界には「変革の必要性」に気付いている人、いないんだろうか。

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