Opinion : 本当に大変なのは成功した後、という話 (2022/12/5)
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えーと。「来週はこれを書こう」というネタを思いついたのに、次の瞬間にド忘れしてしまった。トシだ。
某所で行われた有料撮影会が、後で苦情が出てきて荒れたらしい。「らしい」というのは、自分は現場に行っていない上に、Twitter の TL にも断片的な話しか流れてこないせいで、詳しい事情が分からなかったから。その断片的な情報によると、どうも撮影条件があまりよろしくなかったらしい。
実のところ、報道公開でもあまり条件が良くない場所で行われることはある。安全上の配慮や業務の都合からすれば、そういうことが起きるのは致し方ない部分もあるし、納得もしている。こちらは、置かれた状況の中で最善を尽くすのが筋。
それでも「晴天順光」にこだわる媒体がある一方では、自分みたいに反対側に回って「逆光側でも、目立つ障害物がなく、全体が一様に影になる方がマシ」と判断する人もいて、その違いは面白いところ。各々が何を優先的に考えるか、という思想の違い。
それはそれとして、有料撮影会の話。展示公開専用の施設ではなくて、稼働中の現業施設の一角で行うのであれば、いろいろ制約がついて回るのは当たり前の話。そこであくまで 100% の完璧を求めるのか、なにかしら妥協するのか。そこで難しいのは、これが「有料」イベントであるところじゃないかと。
無料イベントだったら「仕方ない」と納得してもらえても、お代をいただくとなれば、要求水準が上がるのは当然の話。しかも、最初に「有料撮影会」を企画する段階では、オーガナイズする側も試行錯誤。まだ手探りのところがあるから、なんとか満足度を高めようと思って、いろいろ工夫をする。本業だけでも忙しいのに、ありがたい話だと思う。
それがうまくいくと、「それならうちも」といって有料撮影会を開催する事例が増える。それはいいのだけど、先行した成功事例がどうしても「スタンダード」になってしまう。後から開催するイベントは、それを超えるか、せめて同レベルのものを出さないと納得してもらえなくなるんじゃないだろうか。
だから、ときに (天候や設備上の理由みたいな不可抗力要因であっても) なにかあると、それをきっかけに文句をいわれてしまう。影落ちが不満の原因だという話があったけれど、たぶん曇り空なら問題にならなかっただろうし。
ただ、もしかしてイベントを仕掛ける側に油断がなかったのかなあ、というところは気になっている。それは「こだわりが多いであろう顧客に対するリサーチ」という意味で。たとえそれが不可抗力であったとしても、何かあれば、お代をいただいている分だけ反発も強くなってしまう。
ここから先の 3 個の段落は、一般論としての話。
商売でも戦争でも間々あることだけれど、何かリスクのありそうな商品やサービスや作戦を企図したとする。最初は「これで大丈夫だろうか」と心配で、念には念を入れて準備をして。本番に臨む。それでうまくいけば万々歳。
ところが、うまくいくと今度は「なんだ大丈夫じゃないか」といって、同じ手を繰り返したり、繰り返しているうちに隙ができたり… もしもそうなれば、後になってどんでん返しを食らう原因を作る。そんな事例、いろいろな業界で心当たりがある。
「大成功は大失敗の元」となるのは、大成功に溺れたり慢心したり、あるいは成功からの現状維持でいいやと思ってしまったりするところに、主な原因があるのでは。だから、大成功したときこそ、その次はゼロ ベースで仕切り直さないといけないのではないかなぁと。これは以前に自著で書いた話でもあるのだけれど。
一般論としての話、ここまで。
もしも、今回みたいな話が繰り返されると、そのうち「かくかくしかじかで 100% 完璧な条件にはできない可能性もあります」と一筆入れる、ウェーバー文書みたいなのを用意する羽目になるかも知れない。
そうなると今度は「有料開催」そのものに矛先が向きそうで、それはそれで心配になるところ。お代をいただく代わりに相応の手間をかけて、質の高いコンテンツを提供できるのなら、それは良いことなのだから。
ただ、参加する側も「こっちはお客様だぞ」みたいな言い方はどうかと。努力や工夫でどうにかなる領域の話と、どうにかならない領域の話があるのだから、そこは理解しないと。互いに歩み寄って、なるべく高い妥協点に持って行けるような方向で考えて欲しい。
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