Opinion : 3 文書改訂を受けて、ますますバグる人達 (2022/12/19)
 

ロシアがウクライナに侵攻したときに「それまで信奉していたロジックが破綻してバグった人達」について書いた気がするけれど、先日の防衛 3 文書改訂で、ますますバグに拍車がかかった感がある。

防衛力増強に賛成するのも反対するのも、個人の思想の自由。それはそう。ただ、反対するのにテンプレを使い回して、固有名詞だけ入れ替わる雑なロジックを延々と繰り返し、同じ事象でも相手の国が変わればいうことが変わる。そんな話ばかり延々と繰り返してきたツケが、ここに来て一気に噴出してるんじゃないかと。


たとえばトマホークの一件。個人的には、これを使ってどういう「効果」を期待しているのか、それによってどういう end state につなげようとしているのか、そこのところを明確に示してちょうだいよと思っている。目的あっての手段であって、手段だけあれば目的が降ってくるわけではないのだから。

ところが「トマホーク導入反対派」の中には、「移動式ミサイル発射機なんて捕捉できない」「仮想敵国の指揮所や国家首脳は、地下施設に潜ってしまうから破壊できない」と戦術レベルの話に終始した事例がある。甚だしきは「トマホークは時代遅れ」との投稿で、何がどう時代遅れなのかは説明できない。ただ単に「時代遅れ」というだけ。

身も蓋もないことをいってしまえば、「○○は時代遅れ」「○○はポンコツ」の連呼は、「何も分かっちゃいないけれど、とにかく反対」の換言に過ぎない。ついでに書けば、「ドローン」「AI」ばかり連呼するのも同様。もっとも、この辺の言い回しを連呼していたら相手にするだけ無駄、という識別手段でもある。

これがさらにバグると「中国は民主的な国になった」とかいいだす。そんな国が、自国に監視カメラを大量に設置して、顔認証との合わせ技で国民の動向を監視したり、自国民が海外の情報に接触するのを制限するためにネット規制をかけたりするものか。

あと、先日にある方と話をしていたら飛び出したのが「北京を占領することなんてできない」。確か、「国家としての end state を明確にするべき」云々の話からいきなり飛び出してきたような気がするけれど、この辺はうろ覚え。

なんにしても、地上軍を中国本土に上げて北京を占領しようなんて真剣に考えている基地外政策立案者は、東京にもワシントンにもいない。台湾だって、とうの昔に「大陸反攻」の旗は降ろしていたはず。もしかして、冷戦時代の残滓で、その話が念頭にあったんだろうか。

だいたい、北京の武力制圧だなんて、その気になったところで物理的にできないし、その必要もない。「力による現状変更」を阻止することが目的であって、誰も北京の占領が勝利条件だなんて思わない。そんな極論を通り越した極超極論に話がすっ飛ぶあたりも、なかなかバグっている。


世の中の動きが自分の思い通りにいかない、自分の信念に沿った方向にいかない。そういう場面でどういう反応をするかで、その人の「地金」が出る。それはそうなんだけれど、「あっち側」がバグって極端な方向にジャンピングしているかと思えば、「こっち側」でもバグって極端な方向にジャンピングしている。してみると、物事が思い通りの方向に向かっていても、バグる人はバグるらしい。それはそれでやはり「地金」が出るということか。

上下左右に関係なく、もうちょっと落ち着いて、中庸を得た物事の見方や論じ方ができないのか。使い古したテンプレの繰り返しではなくて、いま、目の前にある問題点が何なのかをちゃんと考えられないのか。頭痛が痛くなる昨今の展開ではある。


といったところで、最後にジョークをひとつ投下。ジョークであるから、くれぐれも真に受けないで欲しい

「トマホークが時代遅れだというならば。あれは人が乗っていなくて翼が生えているのだから、事実上の無人航空機すなわちドローンである。なんとトマホークは最先端のトレンディなアイテムだったのだ !」

しつこいけれども、ジョークですよジョーク。「ドローン」というトレンディな言葉に釣られやすい人達への嫌味として。

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