Opinion : "おすすめ" に感じる、ロジックと感覚の不整合 (2023/1/30)
 

通販や SNS など、さまざまなネットサービスを利用しているけれども、そこでしばしば遭遇するのが「おすすめ」機能。最近だと、Twitter の「ホーム」画面で初期表示が「おすすめ」タブになって不評を買い、たちまち撤回されたなんて話があった。

ところが、あくまで個人的経験の範囲内ではあるけれど、この手の「おすすめ」が本当に「自分が必要としているもの」であったためしがない。


たとえば通販サイトであれば、いろいろな商品に関する情報を見た上で「そんならこれにしようか」となるのは普通の流れ。すると、どんな商品に関する情報を見ているかを追跡することで、「この利用者はどんな商品に関心があるらしい」といった情報を得る参考になる可能性が考えられる。

それなら、そのアクセス履歴情報に基づいて、関連がありそうな商品を「おすすめ」として提示すれば役に立つに違いない。と、理屈の上ではそうなりそうなものだが、実際のところはどうだろう。

同じカテゴリーに属する商品ばかり連続して見ている場合はまだしも、さまざまなカテゴリーの商品をザッピングみたいにして見ていると、まずカテゴリーがばらついてしまう。お洋服とお菓子とカメラとぬいぐるみの情報を連続して見ていたら、何を根拠にして「この利用者は○○に関心があるに違いない」というのか。

なんて話を始めると、単なる嫌がらせになってしまうけれど。
コンピュータはロジックで動くものだから、「おすすめ」を拾い出す過程でも何らかのロジックが働いているはず。そのロジックが、利用者が考えている・感じているものと一致すれば当たりが出そうなものだけれども、果たして実際のところはどうか。

「そんなアホな」といわれるかも知れないけれど、自分の場合、案外とこんな感じでカテゴリーが飛ぶことがあるもので。

たぶん、Twitter の「おすすめ」も、事前に設定した情報あるいは過去の投稿内容など、さまざまなデータに立脚して対象を抽出していたのだろうと想像する。でも、それが利用者の感覚と合致するかどうかについては、神のみぞ知る。これは「おすすめ」に限らず「関連商品」の類も同じようなものだと思われる。

個人差はあるだろうけれど、「とにかくシンプルに時系列順に投稿を表示して、どこまで読んだか分かるように未読管理ができればよい」という利用者は、それなりに存在するんじゃないだろうか。少なくとも、パソ通時代を経験している自分の感覚はそう。

なんだけれども、ネットサービス事業者側には違う思惑があるように感じられる。お店の「おすすめ」商品が、往々にして「顧客に向いた商品 < お店が売りたい商品」であるように、Twitter の「おすすめ」にも同じような思惑が含まれていたんじゃないのか、と。そんな疑いの眼で見ている。

もちろん、先方だってビジネスとしてやっているわけだから、ビジネスを成り立たせるにはどうすれば良いか、と考えるのは当然のこと。ただ、それが顧客にソッポを向かれるような形になってしまったのでは、却ってビジネスの邪魔になるのではないかなあと。そんなお節介なことを考えてしまう。


今回はたまたま「おすすめ」の話をネタに使ったけれども。コンピュータを使って、何らかのデータを集めて、それに基づきロジックに基づいて判断させた結果を、何らかの用途に使おうとする。そうなったときには、どこでも同じような落とし穴が発生する可能性があり得るんじゃないか。と気になっている。

フォート ミードで、かき集めた大量の音声あるいは電子メールの中から有意な情報を拾い出そうとして、あれこれ工夫をしているとの話がある。人力でやってたら収拾がつかないスケールだから、必然的にそうなる。でも、そこでもやはり「何らかのロジック」はついて回るわけで、その動き次第ではゴミばかり拾ってくることにもなる。

それをなんとか改善しようとミードで苦労しているであろうことは、容易に想像できる。さて、実際のところ、どの程度の成果が上がっているんだろうか。

なんていう話になると、状況判断や意思決定の優越、迅速化を実現するためにコンピュータを活用する話はおしなべて、実用的なモノにしようとすれば、けっこうな苦労があるんだろうなあと思ってしまった。JADC2 (Joint All Domain Command and Control) では、そこんところをどう解決するつもりなんだろうか。

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