Opinion : 煽られて流行り物を追うだけではねぇ (2023/5/1)
 

先日、ChatGPT に「漁師力学について教えて」とネタ投稿を仕掛けたら、期待に違わぬネタ回答を吐き出してきて、その結果が一部でウケた。と、オモチャにして遊んでいる分には人畜無害… でもないか。ネタ投稿が原因で「おかしな学習」をするようになると、おいおい、何かしらの弊害が出てくるかも。

ちなみに ChatGPT、この私のことは何も知らないらしい。おかしな答えが出てくるよりも、何も出てこない方がいいけれど。


一方では、ChatGPT が話題になったのに触発されたのか、「うちも同じようなのを作る」とか「ChatGPT をどう活用するか」みたいな記事を見かける頻度が上がってきたんじゃないか、という印象がある。

そこでいきなり身も蓋もないことを書いてしまうと、「流行り物として広く人の口にのぼるようになってから動き出す時点でなあ…」

ChatGPT、あるいはいわゆる生成 AI に限らず、新聞が取り上げる頃になって存在を知って「バスに乗り遅れるな」となる時点で「それはどうなんだ」と。それ以前に、まず、流行り物がある度に「乗り遅れるな」となりがちな発想が褒められない。そうやっていろいろ追いかけ回しては、どれだけ使い捨てにしてきたんだろう。

そもそも新聞社や通信社の記者というのは (クソデカ主語)、海の物とも山の物ともつかない研究をしている段では「それはいったい何の役に立つんですか」なんてことを真顔で訊く上に、うまくいかないと「おカネの無駄」といいだす。それでいて、いざ成果物が出てくると「すごい ! 大変だ !」と煽る側に回るのが恒例行事みたいなもの。

つまり、嗅覚が鈍い一方で刹那的に反応する。

なお、煽るのに飽きた頃には、今度は落としにかかる。これもまた、お約束の展開。

UAV を初めとする各種無人モノに対する扱いなんかも、似たところがある。他所で地道に取り組んでいるときは知らん顔なのに、いったん活躍を始めると「うちも欲しい」「うちも買え」みたいな話になりがち。報道に限った話ではないけれど。

生成 AI に限らず何でも、それをどう活用するか、何を実現するかが大事なはず。なのに、煽られた側はえてして、使うこと自体を目的にしてしまう。そして、いつの間にか使わなくなる。

「よそに良さそうなものがあると知ると欲しくなる」では、お洋服の流行を気にするのと大差ない。その延長線上に、「ゲームチェンジャーという言葉の大安売り」があるのではないかとも思っている。


自分が商売にしている分野の話だと、たぶんそのうち JADC2 (Joint All Domain Command and Control) で同じことが起きそう。だから早手回しに (まて)、釘を刺すようなことを書きにかかっている今日この頃。

だいたい、形のある「モノ」だと、まだしも理解しやすいから飛びつく人が出てくるけれど、形のない「概念」の方が理解が難しかろうに。最低なのは、形がない「思想」や「概念」なのに「モノ」の話だと勘違いして、実現手段となる「モノ」を揃えて満足してしまう展開。

JADC2 が当初の思惑、当初の能書き通りに進むかどうかは分からない。ただ、それに対して、我が国で間違った解釈をして間違った取り組み方をすることにでもなれば、消化不良を起こしてお腹を壊す。そうなったら目も当てられない。

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