Opinion : みどりの窓口のこと (2023/7/17)
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3 連休。初日は取材、2 日目は家で仕事、3 日目だけお出かけしたので「どこの国の話 ?」という状態ではあった。もっとも、その 3 連休の 3 日目に続けて平日もお出かけできるのは、フリーランスの利点ではあるのだけれど。(そのせいで、この記事の掲載が 1 日遅れたわけである。すんません)
連休あるいは盆暮れ正月みたいな繁忙期になる度に、Twitter などで永久機関のごとくに盛り上がる「なんで窓口で行列を作るんだ」問題。
自分みたいに、幼少の頃から時刻表に親しんでいて、行くか行かないかに関係なく旅程作りそのものを楽しんでしまうような「生まれながらのお出かけヤクザ」はともかく、世間一般の立場からすれば、「旅程作りは特殊技能」というほうが実態に近そう。
旅程作りだけでもそれだから、ややこしい運賃・料金制度をうまく活用するとなると、さらにステージが上がってしまう (さりげなくマウントをとっていくスタイル)。
この「窓口行列問題」、なんとかしないといけないのではないかなあ、との意識はある。ただ、事業者サイドにすべての責任を押しつけるのも、利用者サイドにすべての責任を押しつけるのも違うんじゃないか、とも思っている。
いきなり結論めいたことを書いてしまうと。まず、「運賃・料金・営業制度の問題」「インフラの問題」「旅客の側の意識の問題」に切り分けないと駄目でしょ。
「運賃・料金・営業制度の問題」とは、長い歴史の中で積み上げられてきた現行制度が、どうもネット予約や Web 発券とは相性が悪いんじゃないか、という話。それは、飛行機や高速バスを見ていればなんとなく分かる。個人的に経験したところでは、4 年前にスウェーデンに行って、あっちの鉄道を利用してみたら、そういう仕組みになっていた。
ただしこのとき、オープン アクセスに起因して「これ、どうすればいいの」と悩む場面に遭遇したのだけど、それはまた別の話。
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実のところ、シンプルに「A 駅→B 駅」だったら、指定席券売機でも何も問題はない。指定席券売機でできることなら、たぶんネット予約でもできる。
でも、周回だの連続だのという話になると、(コンピュータってやつは融通が効かないから) 普通に発地と着地を指定しても無慈悲にエラーが出る。よって、窓口の手を煩わせないといけないことが大半。あと、レール & レンタカーみたいに、窓口に行かないと発券できない種類のものもある。
では、インフラの問題とは何か。現時点でネット予約やチケットレスが広く受け入れられているのは新幹線、とりわけ東海道・山陽新幹線だと思っている。その新幹線にフォーカスしているから、EX サービスは比較的、シンプルで使いやすいものに仕上がっている。
スウェーデンで列車に乗ったら、駅に改札なんてものはなくて出入り自由。だから事前にネット予約して PDF を印刷したり、スマホで二次元バーコードを出せるようにしたりしてから乗る。すると必ず乗務員がチェックに来るので、不正はできない。
でも、日本の在来線で同じようなことをやろうとすると、まず「乗務員が必ずチェックする」を成立させられるかどうか… 新幹線なら独立・完結した路線で、しかも自動改札機が完備。入口と出口できっちりチェックできるから、チケットレス化も比較的やりやすい。でも、在来線で同じことができるかといわれると。
最後に、利用する側の意識の問題。これについては以前にも少し書いた。「旅程を組むのは特殊技能」の話だけでなく、過去に「窓口であれこれ相談しながら買うのが当たり前」と思っていた人が、それを取り上げられつつあることに起因する摩擦、という一面もあるのではないかと。
どんな分野でもそうだけど、「それまで当たり前にあると思っていたものが取り上げられる」となれば、感情的な反発は出る。でも、窓口であれこれ考え込みつつ、なかなか決断ができず、手間暇かけて発券させていたら、後ろで並んでる人がイラつくのは無理からぬ話。
そこで問題を切り分けると、「いちいち相談しないと結論が出ない、決断ができない」は利用者側の問題。でも、いちいち訊かないと分からないような、複雑な仕組みになっているのは事業者側の問題。前者は事業者サイドにはどうにもできないけれど、後者はどうにかできる余地がある。
たぶん、これらの問題を個別にきっちり考察して、何らかの結論を導き出そうとすれば、本が一冊書けるレベルになる。今回、そこまでやる余裕はなかったから、「まず原因を切り分けなければ」と起点を提起するに留めたけれども。
一方で、従来のように窓口に人を置いて、時間がかかるお客にまで丁寧に応対させる余裕はなくなってきているんだろうな、と思える。すると、たぶんどこかで、制度のガラガラポンは不可避。それも含めて「利用のしやすさ」を追求していかないと。
ただし、激変緩和措置は欲しいなと思う一方で、そんなもん加えたら、ますます複雑怪奇なことになるんじゃないかという懸念もあるわけで。うーん…
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