Opinion : こだわるべきは、何を実現したかではないのかと (2023/7/24)
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数日前に、「日本で独自に開発した技術を用いた新幹線が云々」という発言と、それに対する反論みたいな発言が流れてきた。最初は「またやってるのか」程度にしか思わなかったけれど、よくよく考えてみると、これって「技術」に対する向き合い方がちょっと、いかがなものかと (個人の感想です)。
いつも言ったり書いたりしていることではあるけれど、技術は何かを実現するための手段であって、それ自体は目的じゃない。それに、他人が研究開発した成果でもって「日本 age」をやる、あるいはそれに対する反論で「日本 sage」をやる、という話になると、なんだかなぁという感じになる。
それに、鉄道分野に限った話ではないけれども、技術というのはいろいろな国の間で行ったり来たりしながら発展してきたことが多いのと違いますか、と。
たまたま、お題が新幹線だったから反応してしまった、というところはある。
よく知られている通り、そもそも最初に東海道新幹線を作ったときには、ベースとなる技術は、すでに在来線で実績があるものを多く使った。未曾有の高速運転を行うというだけでもチャレンジなのに、そこで新規開発要素をてんこ盛りにしたら、ますますチャレンジングになってしまう。
実際のところ、雪や耳ツンやトイレの件みたいに、実際にやってみて初めて露見した課題はいろいろあったけれども、それはまた別の話。
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東海道新幹線で誇るべきは、既存の技術、新規開発技術、そして各種のノウハウを組み合わせて、「安全・安定・高速輸送」が可能な鉄道システムを作り上げたこと。それと、鉄道が十分に通用する交通機関になる、と世界に対して示して見せたことではなかったのかと。
もっとも後者は、人口分布などの条件次第のところがある。ヨーロッパでは上手くはまったけれども、アメリカだと、うーん。
ともあれ。「どんな技術を使ったか」「それが自国産かどうか」にばかりこだわるよりも「何を実現・達成したのか」こそが本質的に大事なんじゃないのか、という話。それに、「安全・安定・高速輸送」が可能な輸送インフラが出現したことは、その後の日本の経済や社会に対して、大きく影響したであろうし。
よく、冗談半分・本気半分で「東海道新幹線は超速い山手線である」といっているけれども、それを実現できる仕組みを作り上げたのはすごいことよ ? 今ではとうとう、最高速度 285km/h の電車が 3-4 分間隔で走るようになっている。
これは車両の性能だけの話ではなくて、デジタル ATC みたいな仕掛けも含めた、システム全体としての成果。個別の要素技術だけの話じゃない。
もうちょっと手近なところで。
家電製品でもクルマでもパソコンでもスマホでも何でもいいけれど、たいていは「それを使うことで得られる問題解決」が欲しくて買うことが多いわけでしょ。使っている技術を買うわけではなくて。
自分の場合、カメラは不可欠な商売道具だけれども、そこで大事なのは「取材現場という鉄火場で、確実に、使える写真を持ち帰らせてくれること」。それをもたらしてくれて、かつ、自分の手に馴染んだやり方で迷わずに使えるからという理由で EOS DIGITAL を使っている。これもまた「問題解決を買う」一例。
その「結果」を持ち帰らせてくれるのであれば、どんな技術を使って実現していようが、興味は強くないというのが正直なところ。こんな言い方をすると、メーカーの方は気を悪くするかも知れないけれど。
防衛装備品についていえば「最新技術を活用した、世界のトレンドに置いていかれないものが手元にあるから OK」じゃあない。「それをどう使うか、使って何をするか、どんな効果につなげるか」こそが本質的な問題。
最近、そちらの話に力を入れてきているのは、おそらく皆様、御存じの通り。ミッション エンジニアリングみたいな話をわぁわぁいうようになったのは、そういう理由がある。
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