Opinion : 年初からのあれこれについてあれこれと書いてみる (2024/1/15)
 

「事故と戦争の第一報にはむやみに反応しない」というモットーがあるので、元日に能登半島付近で発生した地震の件も、その翌日に羽田空港で発生した衝突事故の件も、そしてオレゴンで発生した 737MAX のドア吹き飛びの件も、基本的には静観を決め込んでいる。

たぶん、そういう姿勢を歯がゆく感じる方もいらっしゃるのだろうけれど、状況をきちんと把握していない状態で「いっちょかみ」しても、何もいいことはない。


ことに航空事故は、詳しく調査を進めていく過程で「初めて分かる話」が出てくることが、まれによくある。最初に出てきた「第一報」が実はガセでした、ということすらある。ところが、ネタに飢えた人たちが断片的な話に飛びつき、それが報道に載るなどして拡散していくと、どうなるか。

そうした断片の集積が、(意図的かどうかは別として) ひとつの「ストーリー」を作り出してしまい、なんとなく「原因はこういうことなんじゃねーの」みたいな空気ができてしまう。

そうなると、後から「実際にはこうでした」という話が出てきても、かき消されてしまいがち。そういう事態になるのが怖いから、あやふやな「第一報」の時点で「いっちょかみ」すべきではないし、憶測をあれこれ垂れ流すのはよくない。

災害にしても、後になって「実はこんな被害が出てました」みたいな話が出てくることがある。ことにテレビ屋さんは「画」がないとどうにもならないので、「画」があるところに引きつけられてしまいがち。でも、そういう場所ばかりが問題とは限らないのでは。

そういう事情もあるから、現地に関する土地勘がなく、現地で何が起きているかを細かく把握していない状態で「いっちょかみ」はしたくない。断片的な情報にだけ釣られて、自分の中で勝手に「ストーリー」を作って熱くなって、それで何かいいことある ?


その「熱くなる」といえば、大規模災害が起きる度に湧いて出るのが「病院船信者」と「レッドサラマンダー信者」。もはやこれらは、一種の御神体と化している感がある。名前を唱えることに価値がある、みたいなやつ。

病院船については、東北地方太平洋沖地震の後で書いたことがあったし、後でマイナビニュースでも記事にした。いかにも役立ちそうに見えるけれども、平素の維持管理をどうするかという課題は大きいし、そもそも整備された港湾がなければ仕事にならない。そのことを「病院船信者」は忘れている (または意図的に無視している)。

だいたい、引き合いに出されるのは米海軍の病院船 Mercy 級だけれど、なんで米海軍があんなデカブツを用意したのか。その背景までちゃんと承知してるんだろうか。多数の死傷者が出る事態になりやすい、両用戦のことを念頭に置いているのでもなければ、あんな巨大病院船を作ろうなんて思わない。そういう背景は無視される。

ついでに嫌味を書けば、平素、何も起こらないで病院船が昼寝をしていたら、災害時に担ぎたがるような属性の人ほど「無駄なハコモノ」とかなんとか言い出しそうではある。

結局のところ、世間の耳目を引きつけるような事故や災害が起きる度にネット上で「いっちょかみ」して吠えてる人達って、事故や災害をダシにして自己実現したいだけなんじゃないのかなあ。そんな気がする。

いや、ネット上に限らない。「来るな」といわれているのに被災地に突撃する人、なんでわざわざ自撮りしてインスタなどに上げるの。黙って行って、黙って何かして、黙って帰って来たってバチは当たりませんですことよ ?


何か世間を騒然とさせる事件が起きる度に、「自分も何か関わらなければ、何か意見表明しなければ」などと思ってしまうのは、ネット時代ならではなんだろうなと。でも、むしろ「今の自分にできることを粛々とやる」ことの方が大事なんだと思ってる。

自分の足下をちゃんと固めないで遠くのことばかり見ていたら、自分の足に蹴躓いて転ぶことになりゃあせんか。そう思うから。

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