Opinion : 現場のモチベーション (2024/4/8)
 

なんとなく成り行きで、先週の続きみたいな話を。

ロッキード マーティンのロゴは単独で存在するだけでなく、こんなフレーズを書き添えているのを見ることがある。

"We never forget who we're working for"

そういえば去年、レイセオンの工場を訪れたときには、「ウクライナから贈られた感謝状」が工場の一角に掲出してあった。作っているモノが剣呑なのは事実であるにしても、「自分たちが作った製品がウクライナの独立を護るために役に立っている」と実感させてくれる話ではある。

どんな仕事でも、「自分たちがやっていることが誰かの役に立っている」と実感できれば、それはモチベーションが上がろうというもの。しばらく前に、あるインタビュー取材の席で、そういう種類のお話を伺ったこともあった。(詳しくは今月発売予定の某誌で)


もちろん、誰もが「世間をあっと言わせる偉業」を達成できるかというと、そういうわけじゃない。自分も含めて、それには該当しない人の方が圧倒的に多い。でも、一人一人の小さな成果の積み重ねで世の中が回っているのも事実であるし、それを蔑ろにしたら、たぶん、ロクなことにはならない。

会社でもお役所でも各種団体でも何でも、マネージメント層は、程度の差はあれ「いかにして現場の士気を維持するか、高めるか」という課題を抱えてるんじゃないかと思う。士気が下がればアウトプットの質が下がるし、それは結果として組織の存立そのものを怪しくしかねない。

でも、前回に触れたように、「んなもん到底無理」と思わせるような現実離れしたビジョンやスローガンを掲げたところで、現場がついてこない。「V 字回復」とか「急回復」とかいう派手な動きの方が、マスコミ受けはするだろうけれど、それが持続できるかというと、それはまた別の問題。

一時的に打ち上げ花火が上がっても、また元の木阿弥になってしまっては。小さな成果の積み重ねで世の中が回るのであれば、その小さな成果でもちゃんと評価できる仕組みがないと。というところに話が行き着く。それに、小さな成果の積み上げが大きな成果につながることも、あるかも知れないし。

そして、「自分がやっていることが、誰かの役に立ってるんだ」と信じられれば、あるいは実感できれば、なおいい。そういう空気を醸成するのもまた、マネージメント層の仕事のひとつだろうと。

それができていない組織が、何か「やらかし」をして糾弾されることになってしまうのかも知れないなぁと。


たぶん、他の同業の方も同じだろうけれど。物書きをやっているからといっても、「自著が売れる現場」に遭遇することは滅多にないんじゃないかと。数字としては伝わってきても、生で見るとなると、なかなか。(新井素子サンの「わにわに物語」にも、そんなくだりがあった)

でも、ある護衛艦の CPO 室に自著が並んでいると聞いたときは嬉しかった。あと、表立って口にしていなかった自著の本当のコンセプトを、ある読者の方に、ものの見事に看破されたことがあって、「ああ、分かってくださってる」となった。

ささやかな話ではあるけれども、ときおり、そういう種類のお話があると、物書き冥利に尽きるなあと思う。自分語りはこれぐらいにしておくけれども、そういう「モチベーションを上げてくれる何か」があるって大事だよねと。

会社なんかにクレームをいう人はいるけれども、同じように、お褒めを送ったっていいわけでしょ。実際、それが送られてきたので社内に掲示して士気のアップにつなげた、なんて話もあるそうだし。

ホームランでなくても、ゴロでもポテンヒットでも振り逃げ何でもいいから、小さな成果、小さな成功でも大事にしようよ。自分が誰かの役に立ってるんだと実感できるような仕掛けをしようよと。株主がどうでもいいわけではないけれども、まずお客さんのことを考えて仕事をするムードを作ろうよと。

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