Opinion : 対露制裁がらみの記事を読んで、思ったことを適当に (2024/6/17)
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昨日から今日にかけて、CISTEC ジャーナルの積ん読を消化していた。特にロシア・中国関連の記事に重点を置いて。時節柄、対露制裁の効果がどうこうという話も出てくるのは当然の成り行き。
読んだ記事では石油・天然ガスのセクターに重点を置いて「効果は出てきている」という趣旨であったけれども、「制裁を発動しました」→「壊滅しました」なんてインスタントな話になるはずもなく。そりゃそうだろう。先方だっていろいろ抵抗するし、全世界が一枚岩で制裁に参加するわけでもないし。
そういえば、国際紛争が勃発して武力行使に踏み切るか否かという話になると、たいてい「戦争よりも経済制裁で」と主張する人が出てくる。経済制裁がまったく無意味だなんていうつもりはないけれども、効果が出てくるまでには時間がかかるもの。図らずも、その実例が目の前で進行中だった。
時間がかかることを承知の上で、様子を見るために待てる ? やってすぐに効果が出ないと「制裁なんて意味がないじゃないか」ってキレ散らかしたりしない ?
もっとも、「武力行使よりも経済制裁」論は、えてして武力行使に反対するための方便になりがちで、そうなるともう、効果がどうとかいう話ではなくなってしまう。
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それに加えて、制裁がどの程度の効果を発揮できるかは、実のところ読みにくい。相手がどの程度の resiliency を発揮するかは未知数のところがあるから。ロシアに限らず、北朝鮮でもイランでもそうだけど、制裁されても相当な resiliency を発揮しているのが現実。
ともあれ、この辺は先週に書いた話と同じで、「これ一発で大打撃」みたいな銀の弾丸を期待してはアカンだろう。というところに落ち着いてしまう。
さまざまな要因が複雑に絡み合っている現実の中で、そんな簡単に物事がひっくり返ると思う方がおめでたい。なのに、それが実現可能であるがごとくにいう奴がいたら、それは詐欺師じゃなかろうか。
なにも経済制裁に限った話ではなくて、たいていの「○○問題」ってそういうものでしょ。ことに人為的に引き起こされている問題であれば、問題を起こす側にも動機や利益という誘因があるのだから、簡単に諦めるはずがない。そうなれば話は長引く。
となってくると、それに対抗する側は、個別の「○○問題」という事象をモグラ叩きみたいにつぶすことにだけ気をとられないで、その「○○問題」を引き起こす側が何を目指しているのか、何を達成しようとしているのか。そっちについても考える必要があるんじゃないかと。
なぜかというと、個別の事象を個別に叩き潰すだけでは、それはただのモグラ叩きゲームであり、永遠のいたちごっこ。そして、そこでは往々にして、たまりかねて「モグラを一撃で壊滅させる銀の弾丸願望」が芽生えてしまう。
そこで視座を少し上げて、「相手が達成しようとしていることは何で、それを阻止するためにどういう対抗策をどうつなげて、こちらの目的達成に導くか。その課程で目論見が狂ったらどうするか。そもそも、相手の行動を支えている原動力や基盤は何なのか。と、そういうアプローチをしてみてもいいんじゃね ? と。
なんのこたぁない、どことなく「作戦術」の話に通じる話ではあるかも。
このあいだ、BattleOne の話で「そもそも領域横断とは」みたいに大上段に振りかぶった話を書いてしまったけれど。実はこの「領域横断」あるいは JADC2 (Joint All Domain Command and Control) みたいな考え方は、個別の事象に対して個別に、同じドメインの中で対処するという個別最適な発想とは、すんごく相性が悪い。
いや、相性が悪い、というと語弊があるか。相容れない。
ただ、人間、どうしても個別最適 & インスタントに答えを求める発想から話が始まってしまうのは無理からぬところ。そこでいかにして「視座を上げて領域横断的な解決に目を向けてもらうか」。これはなかなか頭痛が痛い話かも知れない。
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