Opinion : ミッション エンジニアリングにこだわる理由 (2024/8/5)
 

出張取材でへばってしまい、一日遅れの掲載に (すんません)。

先日、連載「軍事と IT」でミッション エンジニアリングの話を書いた。ここしばらく、御執心になっているテーマのひとつ。(自分のことなのに「御」をつけるな)

ここしばらく、あちこちで書いていることではあるけれども、「強力な拳骨を持つだけではダメで、その拳骨でどこを殴ってどんな効果につなげるかが重要」という話。単に「仮想敵国よりも高性能の装備があれば、国の護りは盤石」なんて話じゃあない。


現場の自衛隊員の方と話をしていると、真剣に自分のスキルを高めたいと努力している方に出会う。現場はそれで良いのだと思う。

ただ、その現場の努力を無駄にしないために、現場の隊員の生命を大切にするために、上の方がちゃんと考えないといけない。つまり、高めたスキル、使いこなそうと努力している装備を、「正しい対象に」「正しいタイミングで」「正しいやり方で」差し向けないといけない。

それを追求する手段が、ミッション エンジニアリングなんである。

逆にいえば、どんなに優秀な人や装備があっても、「間違った対象に」「間違ったタイミングで」「間違ったやり方で」差し向けたら、威力を発揮できなかったり、戦に勝つ役に立たなかったりする。

敵軍の任務を妨げて、自軍の任務を達成して、意図した通りのエンド ステートに持って行く必要がある。その際に、敵をやっつけるのは手段であって目的ではない。もちろん、やっつけられるのであれば、それに越したことはない。けれど、やっつけること「だけ」に気をとられるのは間違いの元。

現実問題として、ノモンハン事件をめぐる論みたいに「敵軍の方が損失が大きかったから、我が国の勝ちだ」みたいなことをいう人がいる。で、ノモンハン事件の後で、我が国が掲げていた目標 (おそらく、国境線を我が国の言い分通りに確定させる、あたりか) は達成できましたかね ?

珊瑚海海戦にしても、同じことがいえる。物理的な損失は米軍の方が多かったかも知れないけれど、「海からのポートモレスビー占領」という任務は達成できなかったのだから、そういう意味では作戦は失敗。任務は達成できなかった。

しかもその後、「海路がダメなら陸路で」といって無茶な侵攻を仕掛けることになった上に、その陸戦で多大な犠牲を出す羽目になったのだから、罪作りな話ではある。


「達成すべき任務」「最終的に目指すべきエンド ステート」を起点にして物事を考えることは、実は努力の方向性や、整備すべき装備・インフラなどを規定する際にも影響する話。「こういう (道具 | 技術) が手元にあるけれども、さてどう使おうか」では順序が逆。

趣味的見地からすれば、個人の技量の高さやハードウェアのあれこれといった話に目が向くのは仕方ないにしても、本当に「国の護り」の見地から考えれば、そういうところだけに気をとられるのはまずい。でも、何でも「一度、書いただけで済む」というものではないし、しつこく書き続けなければならないのだろうな。と思っている今日この頃。

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