Opinion : 「仲間が増える」と喜んでいるだけでいいのか (2024/8/26)
 

最近、欧州諸国の空軍やら海軍やらが、立て続けに日本を訪れる機会があって。おかげでウォッチャーは大盛り上がり、趣味誌も大盛り上がりという状況。これで、ちょっとでも売り上げにつながってくれるとありがたいのだけど (と、いきなり商売の話に入る)。

艦載装備のウォッチャーとしては「これは貴重な機会」ということで、いろいろ見に行ったし、それに見合ったアウトプット (と記事のネタ) は持ち帰れた。今後、ボチボチと機会や状況を見ながら蔵出ししていければと。

ただ、「珍しい○○が来た、わーい」で盛り上がっているだけでもまずいわけで。あちらだって、相応の考えがあってやっていることで、別に日本の趣味人を喜ばせるためにやっているわけではない。


以前から、我が国の朝野を見ていると、「仲間が増えた」といって、それだけで安心してしまう傾向があるような気がしている。あと、自分でできることは自分でなんとかしようというよりも、「助っ人が駆けつけてくれれば、もう安心」という意識がありはしないか、という懸念もある。

大事なことだから何度でもしつこく書くけれど、例の「尖閣諸島は日米安保の対象に入るか」といちいち気にする問題は、その分かりやすい現れ。自力だけでどうにかなるかは別として、自力でできることはする、という姿勢もないといかんだろうに。

それでもアメリカは平素から日本に拠点を置いているし、距離的な行き来のしやすさという点では優位性がある。それと比べると、欧州諸国はとにかく遠い。ことに南回りで来ようとすると、北京が「うちの表庭」だと思っているエリアを通ることになってしまう。

日独伊の三国同盟も、できたときには「これで仲間が増えて心強い」と思ったかも知れないけれど、地理的な制約はいかんともしがたく。実際に日本の戦争遂行努力に対してドイツがどんだけ貢献したかといわれれば、ゼロとはいわないにしても、極めて限定的だったといわざるを得ない。そして逆もまた真なり。

現実問題として。たとえば台湾有事が勃発したからといって、欧州諸国の艦隊や空軍が極東に馳せ参じてきて加勢する、なんて話がホイホイ実現できるんだろうか。たとえその気になったとしても、実現には相応の障壁や困難がありそうではある。

だから、今回の話から「欧州諸国の来援」にまで期待するのは、ちと話が飛びすぎではないかなあと。そう思わざるを得ない。それに、名指しはしないけれども、「北京に経済問題をダシにして脅しつけられたら、腰砕けになる」国が現れないとも限らない。


ただ、今回みたいな話がまったく意味がないのかといえば、そんなことは断じてなくて。少なくとも、「こっち側」にいるんだという政治的な意思表示としては、とても大切なもの。

経済的な話などで鼻薬を嗅がされて「あっち側」に回られるよりも、「こっち側」にいてくれる方が、256 倍はありがたい。

ただ、その「こっち側」の結束を固めようとすれば、今度は我が国の側から「どれだけ頼れるパートナーになり得るか」というところを、先方に対して見せていかなければならない。むしろ、それが大変なことなのでは。

多くの分野にいえそうなことではあるけれども、「最初に始めること」よりも「それを維持・発展・持続させること」の方が、ずっと大変であったりするから。

すると、政府関係者・政界・制服組だけの話にとどまるものではなかったりする。日本にやってきた外国軍関係者が、日本という国に対して良い印象を持ってくれることも重要。財布をすられた上に、その後のあれこれがあって日本嫌いになってしまった (らしい) 某提督みたいな事例もあるわけだから。

よって、お出かけした先で楽しく過ごしてもらうことはもちろん重要。それだけではなくて、たとえば艦艇の一般公開をやってくれるようなことがあったら、グラウンド ルールをちゃんと守ることなんかも大事になるわけですよ (机ドン !)

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