Opinion : インスタントな解決ばかり求めてもダメ (2024/10/21)
 

先週の後半は JA2024 (Japan Aerospace 2024 / 2024 国際航空宇宙展) の取材でほとんどつぶれた。一見したところでは地味な印象もあるものの、細かく見ていけばいろいろと「鉱脈」は埋もれているもの。そういうのを地道に見つけて掘り出して、記事にしていくのが楽しい。

ぶっちゃけ、国内大手とか GCAP とかいったあたりは取材に行く人が多いし、記事にもなりやすい。それなら、一人ぐらいはヘソを曲げて、違う方向に目を向ける人がいたっていい。ウクライナ情勢に対するときと同じ。左警戒、右見張り。

実際、デジタル エンジニアリングとかロジスティクスとかいう話にホイホイ飛びつく人は、そういないのが現実でもあるし。


幸いにも自分は遭遇せず、邪魔されることもなかったのだけど、その JA2024 に活動家が押しかけてきて騒ぐ一幕があったらしい。これが DSEI だったら、最初から「業界関係者以外はお断わり」だからいいけれど、JA2024 は誰でも出入りできるパブリック デーがあるから、物理的に、完全阻止は難しい。

それはともかく。会場に押しかけてきて騒いだ結果として、どれだけの効果が上がったのか。常識的に考えれば、何らかの効果 (たとえば世論を動かすとかなんとか) を狙って何らかの活動をするものであろう。

それが見込んだ通りの結果を出しているのか、それとも何も結果につながっていないのか。結果につながっていないのなら、それはやり方が間違っていたということだから、別のやり方を考えないといけない。そして聞いた話では、昨年の DSEI と似たり寄ったりで、掲げているお題が違っていただけみたいである。

念のために書くと、昨年春の時点では、ガザをめぐる情勢は現在と違っていた。

この手の話を見る度に感じることではあるけれど。「現状」と「理想」の間にギャップがあるのはよくあることで、それはどうしようもない。ただ、そこでいちぜろ思考に陥って「現実が理想通りではない」といってヒステリーを起こしても、まぁ周囲はついてきてくれない。

そうではなくて、「現時点ではここまで可能 or 実現できている」「この先、自分達が掲げる理想に向けて進むに際して欠けているものはコレで、それを補う施策はコレだ」という視点が必要なんだけど、えてして活動家連中にはそれが欠けているのではないか。要するにミッション エンジニアリング的な思考がない。

もしかして、十年一日、毎度恒例の抗議活動という魔法の杖を振り回していれば、いつかきっと問題は解決して理想の方向に動くはず、とでも信じ込んでいるんだろうか。それはもはや宗教である。


しかしよくよく考えると、この「魔法の杖を一振りすれば問題が雲散霧消」みたいな話に釣られやすい人は少なくない。まず基本的に「問題」と「解決策」をド単純に一対一対応させてしまう。困ったことに、政治家や新聞記者やお役人がしばしば、この手の話に釣られる。

地道に、状況を見て、必要に応じて軌道修正しながら理想に向けて匍匐前進… は確かに、辛気くさい話ではある。水戸黄門の印籠みたいなのがパッと出てきて、それで「悪役」がへへーっとひれ伏して問題が消し飛んでくれれば、そりゃ気持ちはいい。

でも、複雑系の世の中がそんな簡単に、単純に動くかっての。思い通りに動かないからって、すぐにキレ散らかしているような有様で、世直しなんぞできるはずがない。

昨今しばしば見られる「ゲームチェンジャーの大安売り」現象も、根っこのメンタリティは似ているのではないかと思われる。ゲームチェンジャーという魔法の杖を振り回せば問題は消し飛ぶはず、みたいなやつ。

地道な取り組みや解決策よりも、目立つこと、劇的なことに惹かれてしまう傾向は、どんな分野であれ危険度が高いと思うのだけれど。そういう人のところに、悪知恵が働く人が寄ってきて食い物にするのは、よくある話なのだ。

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