Opinion : 変化から逃げるな、変化を起こせ (2024/12/16)
 

以前に書いた 18 券の話などで、繰り返し「いま手にしているものが取り上げられようとすると、つい反発してしまう心理」について書いた。実はこれ、企業経営でもお役所でも政党でも何でも、似たような話はあるんじゃないの。という話を書いてみる。


企業経営の分野では、事業環境、周辺環境が変化して、これまで馴染んできた「成功の公式」「勝利の公式」が通用しなくなることがある。そこでなぜか、「周囲の変化を引き戻そうとする経営者」が出てくることがある。

最近、マスコミ業界でチョイチョイ見かける「SNS は信用がおけないキャンペーン」(?) も、そのひとつの現れではないかと。傍から見ていると、これまでのやり方が通用しなくなったと感じたときに、自分たちの得意なところ、強みがあるところを活かすよりも、相手の足を引っ張ることを優先したように見える。

国や自治体の事業で食っている業界が、「予算が減ると大変なことになるので予算を増やして、事業を増やして」とやるだけなのもまた、変化から逃げてるといわれても仕方ないのでは。

以前に取材で日立 OB の方にお話を伺ったときに、感銘を受けたのは「国鉄主導の護送船団方式ではもはや立ち行かない」と当時の経営陣が認識して、危機意識を持って、日立の鉄道車両事業を変える決断ができたこと。

そこで何をしたかは皆さん御存じの話だろうから、ここでは繰り返さない。ただ、もしかしたら需要をとり逃がす場面があり得たかも知れないのに、(本当の意味での) 選択と集中に踏み切って成功させたのだから、これは正当に評価されてしかるべき。

過去に馴染んできたやり方から、違うやり方に乗り出したり、海外に出て行ったり。もちろんそこにはリスクがついて回るにしても、リスクをとってチャレンジしたからこそ結果が出たのは確か。イギリスで「HITACHI」のロゴが付いた電車に乗って「よくここまで来たものだなあ」と思った。

口先で「選択と集中」といってみても、実際には総論賛成・各論反対で実行が伴わなかったり、理念とビジョンを欠いた選択や集中でグダグダにしたりする事例は、そこここにある。
さらに始末が悪いのは、そういう失敗があると、ますます「選択と集中」に対する抵抗が増加すること。えてして、なぜ失敗したかという本質よりも、「選択と集中」という看板が敵視される。

新聞・雑誌などの媒体にしても、ずっと同じようなやり方、同じような企画、同じような方針でやっていけるとは限らないし、むしろそうならないことの方が多いのでは。過去に看板になっていた企画や手法が、何らかの状況の変化によって実現できなくなったとき・通用しなくなったときにどうするか。

そこで既存の評価、既存の顧客、既存の支持者を手放さないことを優先して方向転換や変革が滞ると、総倒れになりかねない。その結果として「○○誌/紙はつまんなくなった」などといわれると、ますます読者が逃げ出す。

既存の顧客を守ること、既存の顧客からの支持を失わないこと、馴染んだ手法を守ることを優先した結果として二進も三進もいかなくなった事例というと、どこかの新聞社とか、どこかの政党の名前がすぐに思い出される。


いま、お仕事がらみで自分がせっせと旗を振っているネタがいくつかある。これらが成功している、あるいはこれから成功したとしても、その成功がずっと続く保証はどこにもない。成功しても、そこでいったんゼロ リセットして、また新たな成功を追求しないといけない。

武器の歴史を見てみれば一目瞭然。ある時点で成功して「無敵」に見えた武器が、その後、未来永劫に渡ってそうあり続けたためしは、まずない。対抗手段が出てきて無力化されたり、技術革新や状況の変化で役に立たなくなったりする。その繰り返し。

あちこちでしつこく書いているように、かつては成長と繁栄を謳歌していた企業が、後になって没落した事例の中には、過去の成功事例・成功体験・成功の公式に対する過度の拘泥が、没落の原因を作ったものもあるんじゃないか。と思っていて。

「このやり方で (上手くいってる | 上手くいってきた) のだから、この後も同じでいい。リスクをとって変えに行く必要はないだろ」は、ただの思考停止。変化を怖れて・変化を避けて座視しているだけなら、自死するようなもの。

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