Opinion : 社長さん、あなたどれぐらいクルマが好きですか (2025/2/10)
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先日、GP インプレッサの車検を実施した。つまり、少なくともあと 2 年は乗り続けるという意思を明確にした形。すでに 9 年が経過しているから、これの前に乗っていた BP レガシィを超える、最長運用になることが確定。
乗り換えるおカネがないわけではないけれど、おカネをかけるなら「納得のいくクルマが欲しい」というのが正直なところ。そしてその「納得のいくクルマ」に巡り合えていない。どれもこう、「帯に短し襷に長し」というか、なんというか。
というかそもそも、最近の自動車業界の流れと自分の好みがマッチしていない、という理由が大きい。
まず、世の中は SUV が大流行りであるけれども、日本で乗るならあまり欲しいと思わない。第一、背の高い SUV は立体駐車場に入らない。
次に、コネクテッド化の関係もあって、オーディオもナビもみんな当初から作り付けてしまうクルマが増えている。その手のクルマをレンタカーで借りて、乗ったことが何度かあるけれども、その度に「楽ナビしか勝たん」との思いを新たにする。
そういう「こだわり」を全部捨てて、「道具」に徹する割り切りができれば、また事情は違ってくるだろうけれど。それならアクアあたり買えば解決する。レンタカーで借りて乗ったことが二度ばかりあり、普通に問題なく使えるクルマなのは分かってる。
ただ、まだ「こだわり」を捨てるところまで悟りを開けていない。人によってそれぞれ、好みの内容をこだわるポイントは違うにしても、何かしらの「こだわり」「好み」をクルマに対して抱く人は、少なくないと思う。それだからこそ「愛車」という言葉もあるわけで。
そういう立場からすると、作り手の思いがこもったクルマに出会い、その作り手の思いに共感して、おカネを投じて買って乗る。これは楽しい。その時、クルマはただの道具じゃなくて「相棒」になる。
自分で乗るのではなくても、作り手の思いがほとばしる開発ストーリーを読むのは楽しいし、取材していても楽しい。なにもクルマに限ったことではなくて、鉄道車両でもなんでも同じ。さまざまな制約がある中で、「この製品を通じて、これを実現したい、こういう価値をお客様に提供したい」という目標に向けて頑張る姿は応援したくなる。
たぶんそこでは、対象に対する「思い」の強さが効いてくる。「思い」があるからこそ「理想」も生まれる。トヨタ 86 の開発では "Built by passion, not by committee" というスローガンが掲げられたそうだけど、まさにそういう話。
では、みんながみんな、そうやって製品やサービスを生み出しているのか。「自分たちはこういう価値を提供するんだ」という明快な理念を持って仕事をできているのか。最初はそこからスタートしても、それを引き継げているのか。いつの間にか惰性になっていないか。
中には、(この言葉を使うことは不適切であるかもしれないけれども) サラリーマン化というか、「給料をもらうために作ってる」になっちゃってる場面、製品やサービス、あるいは会社はないか。モノづくりの会社なのに、モノよりおカネを作る会社になってしまっていないか。
なんで自分のクルマの話を引き合いに出したかというと、クルマは時として、買い手にとって単なる道具以上のものになるから。カメラ製品も似たところがある。感性商品というか、カタログ スペックに現れる機能・性能「以外の」ところが、案外と重要な位置を占めることがある。
それを左右するのは、作り手の「思い」じゃないか。こういう理念が、こういう思いがあるからこそ、こういう形、こういう機能、こういう能力を持たせたんだと。そういうストーリーが大事。そこで「こんな技術を使っているからすごい」とか「こんな仕掛けがあるからえらい」みたいな話ばかりでいいのかしらと。技術は手段であって目的じゃない。
これは、だいぶ前にも書いた話であるけれど。クルマ屋の社長がクルマに対する興味関心が薄かったとしたら、それでお客様の気持ちが分かる ? お客様がワクワクするクルマを送り出せる ?
以前に書いた「自分たちが誰のために仕事をしているかを、常に意識する / 意識させる」話にも通じるところがありそう。ロッキード マーティンの工場で掲げていた "We never forget who we're working for" みたいなやつ。
もちろん、現場の人がそういう心意気を持つことは重要だけど、組織の上層部がそれを尊重して、支えて、伸ばしていかないと、現場の心意気は損なわれてしまう。
なんてことをグダグダと書き並べてしまったのは、ホンダと組む話が破談になったときの、日産の経営陣のあれこれに関する話を見てしまったから。この経営陣の下で「いいクルマを生み出す仕事」ができるのかなあ、と疑問に思えてしまって。
他にも「この会社、復活して欲しいけど今の状態で大丈夫かいな」と思ってしまう事例はある。名指ししなくても、どこの話か分かっていただけそうであるけれども。
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