Opinion : 分かっていること・推測できること・分からんこと (2025/3/24)
 

先日、米空軍の NGAD (Next Generation Air Dominance) について、担当メーカーはボーイング、機体の名称は F-47、という発表があった。

これを受けて飛行機好きは大賑わい、となるのは当然の展開であるけれども、現時点で分かっていることといえば、メーカーと名称、それとエンジンについて GE と P&W がそれぞれ開発を進めている、という話まで。

当初に出てくるポンチ絵が、どこまで正しいかどうか、だって分かったものではないし、第 6 世代がどうとかいわれても、そもそも第 6 世代機に関する定義すら不明確 (これは B-21 のときにもいわれていたこと)。

そんな情報不足のところで口角泡を飛ばしてみても実のある話にならないし、さしあたり、大喜利でもやりながら眺めているのが無難じゃないかと思っている。「明確に分かっていること」「たぶんこうだろうなと推測できること」「なんもわからんこと」をちゃんと区別することが重要。

逆にいえば、推測や妄想をごっちゃにして盛り上がったり煽ったりしている人はスルーした方がいいんじゃないかなあ、という話にもなる。そんな動画が Youtube に溢れかえりそうな気がするのだけれどね。

この「明確に分かっていること」「推測できること」「わからんこと」の区別、仕事の上でもちゃんとやらないとヤバいやつなので、気をつけないと…


ヒコーキ趣味的観点からすれば、F-47 がどんな仕様でどんな装備を積むのか、といったあたりの話が耳目を引きつけるのは分かるけれども。

ただ、本当に重要なのはそこではなくて、「米空軍が 2030〜2040 年代の航空戦について、どんな様態を想定して、そこでどうやって勝者になろうとしているか」ではないのかと。

そういう情報はあまり表に出てこないにしても、「技術はあくまで道具」であるわけだから、その技術を通じて何を実現したいのか、こそが本筋。新技術や新装備をモノにするだけでゲームチェンジャーになるわけではなくて、それをどう使って目的を達成するかも考えないと役に立たない。

すると、まず「何を達成する必要があるのか」を起点として「そのためには何が必要なのか」を明確にする必要がある。個々の要素技術の話はその後の話。「こんな技術ができたから何に使おうか」ではあべこべもいいところ。

あと、軍用機というやつは高度化・複雑化する一方だから、どうやって迅速に、確実に、リスクを抑えながら RDT&E を進めるか。それが大きな課題になるはずで、そちらに注目する必要もあるんじゃないかと。

そういえば、デジタル エンジニアリングを活用して開発したブツの制式名称に "e" をくっつける話が出たことがあったけれど、いつの間にやら立ち消えに。だから T-7A は T-7A だし、誰も B-21 のことを eB-21 なんていわない。特別視する必要がないぐらい、日常的なことになったという話かも知れないけれど。


じゃあ、その「2030〜2040 年代の航空戦とやらの姿はどうなるの」という話も出てくるだろうけれど、それを見極めていく過程では、さまざまな実験や演習が行われるはず。多くはコンピュータ シミュレーションに依るとしても、現物を動かしてみないと分からないこともあるはず。

だから、実験イベントや演習などに関する情報を丹念にウォッチして、拾っていくのが、遠回りなようでいて早道かも知れない。そこで「タイパが悪い」なんていってはいけない。急がば回れ。本職の情報機関だって似たようなことをやっているだろうし。

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