Opinion : 広報というお仕事について考えてみた (2025/8/25)
 

物書き業というか、世間一般の視点からすれば「報道」の一角ということになるのだろうけれど。こういう仕事をしていると、さまざまな組織の広報担当者と接点を持つことになる。

そこでひとつ面白いと思うのは、海外の防衛関連大手はおしなべて「広報代理店」を立てていること。日本の出先の人的リソースが限られているから… という理由もあるかも知れないけれど、「餅は餅屋に」という考えもあるのだろうと睨んでいる。

そして広報代理店の立場からすれば、クライアントからは「自社を売り込む」というミッションを課せられているわけだから、そりゃもう熱心にアピールしてくださる。取材する側からするとありがたいこと。


対して我が国はというと、企業でもお役所 () でも、ジョブ ローテーションの一環として広報に補職される場面が多い様子。さまざまなポジションを経験させるという観点からすれば、そういうやり方もある。

ただ、どういう考えの下でそういう人事をやるにせよ、数年ごとに入れ替わる広報担当者次第で、その組織と外部との接点がガラッと変わってしまう傾向があるのは否めない。ありていにいうと、担当者次第で対応が大違いということになる。

もちろん、人が代われば考え方の違いが出てくるのは当然であるけれども、組織としての一貫性というか、「人が代わっても変わらない理念」みたいなものは必要ではないかと思っていて。ジョブ ローテーションの一環として広報担当が数年ごとに交代する形で、それを実現する仕組みを作るのは簡単じゃないかもなぁと。

営業担当は、自社の製品や商品やサービスをお客様に売り込むのがお仕事。では広報担当の仕事は何か。それは、自分の組織を (多くの場合には報道という仲介者を通じて) 社会に売り込むこと。これは簡単そうに見えて簡単なことではない。

「組織を売り込む」といっても、できることとできないことがある。それは、うちら取材者も承知しているから、「それはちょっと無理です」といわれれば引っ込める。手っ取り早く、かつ極端な例を出すと、F-35 に関連するあれこれなんて、もう「できないこと」だらけ。

まぁそれは極端な例に過ぎるけれども、どんな組織でも部外者に対して「できること」と「できないこと」があるのは当たり前。それは、うちら取材者だって承知してる。

その「できないこと」があるという前提を踏まえた上で、「できること」の枠内でいかにして組織を売り込み、結果を出すかを考えないといけない。それをやれる「プロ」が、優秀な広報担当者だと評価されるんだと思う。

若い女の子で、アパレルメーカーのプレス担当というポジションに憧れるケースがあるらしいけれど、報道対応って大変な仕事よ ?

だいたい、報道関係者とひとくくりにされていても、その陣容は千差万別。取材対象のことにめっちゃ詳しい人もいれば、それとは真逆の人もいる。お行儀のいい人もいれば、真逆の人もいる。公正な人もいれば、公正とはいえない人もいる。

いつぞやの観艦式で。自分が乗っていたフネに「赤旗」と「チャンネル桜」の人も乗っていたことがあったと記憶しているけれど、何ですかこの呉越同舟 (物理) は。

もちろん、おめでたい場面・華やかな場面がある一方で、ときには事故や不祥事などで矢面に立たされることもある。日本のマスコミのおかしな風習で、何か不祥事などあると、必ず「えらい人が並んで頭を下げる画」を欲しがるというのがあるけれど、そういう現場に立たされることもあるのが広報担当者。

プラスの話もマイナスの話もひっくるめた上で、「自分の組織を (報道という仲介者を通じて) 社会に売り込む」というミッションをいかにして実現するか。そのための理念と、実現する手段を持たないといけない。うーん、ミッション エンジニアリング。


もっとも、それなりに形が定まった「プロトコル」がある報道対応はまだマシで、不特定多数のいろいろな人を相手にすることになる SNS 担当の方が、もっと2 大変だと思う。

それこそもう、CONOPS を、やっていいこととやってはいけないことを、みんなしっかり固めて。そして、めんどくさい話に巻き込まれたときでも、うまく切り抜けないといけない。見た目の華々しさに釣られて、安直に引き受けると、きっと大変なことになるポジションである。

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