Opinion : 危険が危ない話など (2025/10/13)
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タイトルはおふざけで書いているわけではなくて、「危険に対する認識」が危機に瀕している実例が発生してしまった、という意味で書いた。何のことかといえば、例の「命知らずの音鉄」の話。
おそらく皆様、御存じのこととは思うけれども。東北新幹線で SixTONES タイアップの発車サイン音を期間限定で導入したら、それを録音しようとして、マイク付きのロッドを屋根のスピーカーのところまで延ばす人が出たのだと。
そ り ゃ 中 止 に な る で し ょ。
廣田尚敬氏の伝説の名著「鉄道写真撮影ガイド」では、いきなり「鉄道写真撮影は危険がいっぱいである」で始まる章がある。事実、その通りであるし、過去にはさまざまな理由で人死にが出ている。冬の狩勝峠における件は、被写体はともかく、死因は鉄道と直接関係ないけれども。
だいたい、なぜ新幹線のホームに「自撮り棒禁止」の掲示が出ているのかと。これは以前に自分も記事にしたことがあるけれども、交流 25,000V ぐらいになると、危険度が半端でなく高いのだ。
普通、電線に触らなければ感電しないと思われていそうだけれど、それは御家庭の交流 100V の話。20,000V とか 25,000V とかいうレベルになると、接近しただけで人死にが出る。なのに、ホーム屋根に近接するところまでロッドを延ばすような真似をして、よくもまあ、人死にが出なかったもんだと思う。
ついでに関係ないことを書くと、イギリスやシンガポールやオーストラリアでは、電源コンセントの電圧は 220-240V と日本に比べて高く、コンセントの「口」ごとに ON/OFF を切り替えるスイッチがついている。
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話を元に戻して。取材で車両基地に行ったときに、特高圧がらみの安全対策にすごく神経を使っている様子は目の当たりにしている。そしてもちろん、人の生死に関わる重要なことだから、機会を見つけては記事でも書いている。
「せっかくの期間限定の放送をクリアに録りたい」という欲求が生じるのはわからんでもないけれども、そのために生命を差し出すリスクを冒すようなことか ? とはいいたい。たぶん、欲求のことばかり考えて、付随する危険のことは知らないし、誰も教えてもくれなかったのだろうけれど。
この「危険のことを知らない」「誰も教えてくれない」「自分が考える危険のレベルと、本職が考える危険のレベルが乖離している」という問題。そのうちもっと致命的な事態を引き起こす結果になるんじゃないか、と危惧している。昨今、(自分が考える) 傑作のためなら見境がつかないという人が増えているのだし。
物書き業の端くれとしては、自分が書くものの中で危険性についても取り上げていく所存であるけれども。問題は、危ないことをしでかしそうな人ほど、そういう記事を読みそうにないこと。どないすんねん。
そういえば。ぜんぜん話は違うけれども、横田でフェンス沿いに脚立を並べるだけでなく、フェンスを損壊させる思案が発生したとの投稿を見かけた。これもまた、違う意味で危ない話。
そもそも、空自の基地と同じ調子で米軍基地の基地内にカメラを向けること自体、どうなんだというのはある。(本土の空軍基地の話だけれど、飛んでる機体を撮るのはいいけど基地内は駄目、という話を聞いたことがある)
交流 25,000V と違って、これが原因で直接的に人死にが出ることはないにしても。でもそのうち、エスカレートしてトラブルの原因を作りはしないか、という懸念はしている。昨今、安全保障情勢がピリピリしてきていることでもあるし、以前なら大目にみられていたことがそうでなくなる可能性、ないとはいいきれない。
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