あなたのメールが危ない 〜究極編〜 (ISBN4-87966-987-3)
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(株) 秀和システム 様
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\1,800- (税別)
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2000/2/23 発売
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前作でメール・セキュリティの基本を押さえた著者が繰り出す第 2 弾。ウィルス対策、メーラの安全対策、データ保全対策、個人情報保護対策のあの手この手。
しかし、なんといっても圧巻なのは、得意の毒舌を発揮してスパマーをメッタ斬りにし、全国のスパマーに喧嘩を売った SPAM メールの徹底研究レポートと、史上最強の無料メール サービス比較表。必見です。
単色刷、320 ページ。
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刊行後の追加情報
「ALL ADVANTAGE」その後 (2001/2/3 追加)
「ALL ADTANTAGE」は、ついに経営不振からサイト閉鎖に追い込まれたとのこと。結局、宣伝メールにあるような「第二のヤフー」にはなれなかったわけです。私の予測どおりでしたね。
goo フリーメールの URL 変更 (2000/4/5 追加)
goo フリーメールの URL が、http://mail.goo.ne.jp/ から http://community.goo.ne.jp/ に変更されました。また、メール利用時に SSL が導入されるようです。
「優香は好きですか?」のメールについて (2000/4/5 追加)
「悪徳商法マニアックス」によると、P128 で取り上げた「優香は好きですか?」のメールで紹介された URL に接続すると、国際電話接続プログラムがダウンロードされるとのこと。そいつを実行すると何が起こるかは、いうまでもないでしょう :-)
"ALL ADVANTAGE" に関する反論に対する筆者の見解 (2000/4/5 追加、同日に更新)
本文中で「SPAM の一例」として取り上げた "ALL ADVANTAGE" (広告を表示させるだけで収入になると称するシステム) について、「これはまともなシステムであり、批判するのは名誉毀損である。私もこのシステムに加入してダウンを増やしている最中なのに、水を差すようなことをしないでもらいたい」という反論が版元に寄せられたとのこと。
しかし、冷静に考えれば、このシステムが謳う「数十万円の収入」が滅多なことでは成り立たないのは、すぐに判明するはず。勧誘メールの一部を抜粋しましょう。
さらに、本当のすごさはこれからです。あなたが紹介して登録した人がこの Viewb
ar をセットすれば一時間あたり10セントの収入になり、さらにそれから先の4世
代まで一時間あたり5セントももらえます。あなたが10人の人に紹介し、それぞれ
が10人ずつ紹介していったとするととても大きなネットワークがすぐに出来上がり
ます。それぞれが1ヵ月に20時間のネットサーフィンをしたと仮定すると、
あなた (1人X20HX0.5=$10)
あなたの紹介(10人X20HX0.1=$20)
次の世代(100人X20HX0.05=$100)
その次に世代(1000人X20HX0.05=$1,000)
その次に世代(10000人X20HX0.05=$10,000)
その次に世代(100000人X20HX0.05=$100,000)
最後の世代が出来るには時間がかかるかもしれませんが、なにもしなくても月に数
万円から数十万円の収入を得ることは今これを読んでいるラッキーなあなたなら実現
可能です。
とのことですけど、ここに出てくる各世代の人数の合計は 11 万 1,110 人。日本のインターネット人口がだいたい 1,000 万人強として、その全員がこのシステムに加入し、重複のないツリーを構成したと想定すると、上の例にある満額の利益が得られる人は、たった 100 人にも満たないという計算。しかも、「日本でのレートはまだ決まっていない」ということなので、実際にどれだけの収入が出るかどうかについては、まだ何の根拠もないのが実情。
しかも、勧誘メールの反応率が 100% とは思えず、仮に反応率を通常のダイレクト メールよりも大幅にオーバーに見積もって 1% と仮定しても、11 万 1,110 人を勧誘するために必要なメールの総数は 1,111 万 1,000 通。満額の利益が得られる人数を 100 人とすると、その数を乗じて、トータルは 11 億 1,110 万通の勧誘メールが飛び交うわけです。実際の反応率がそんなに高いはずがなく、その結果は、期待値どおりの利益が得られないか、この数倍の SPAM が飛び交うかのどちらか、ということになるでしょう。
少なくとも、このシステムではおカネを徴収しないので、直接の経済的な被害は発生しないものの、以下の問題があるものと考えます。
広告の表示による広告料のペイバックというシステムは論理的に構築可能だし、無料プロバイダと比べても設備投資が少なくてすむのでリスクが少ない。しかし、"ALL ADVANTAGE" のシステムの死命は、価値ある広告媒体として認められるだけのユーザー数の確保と、コンスタントな広告出稿の維持という二点に依存している
"ALL ADVANTAGE" の問題点は、参加者がダウンを勧誘しなければ利益が出ないという点にある。自分ひとりで広告を見ることで得られる収入はタカが知れており (なにしろ、上限額が決まっているのだから)、得られると称する収入の大半は、ダウンを増やすことによって得られるコミッションに依存している。これはおそらく、広告媒体として認められるだけのユーザー数を、手間をかけずに確保するために案出されたのではないかと推定される
ということは、膨大な数のダウンを勧誘するために、結果として大量の SPAM メールが発生するし、現にそうなっている。そのために、インターネット上に無用なトラフィックが発生する
しかも、クレームの主が主張するような正々堂々たる商売の勧誘メールであるなら、どうして無料メール サービスのアドレスを名乗って、同時に不特定多数に対して大量のメールを送りつける必要があるのか。自分の友人知人に対して実名でメールを出すなら分かるし、本当に利益が出る有益なシステムなら、不特定多数を相手にするよりも、まず自分の周辺から手をつけるものでは?
にもかかわらず、不特定多数にメールを出すのはなぜか。利益を一人でも多くの人と分かち合いたいから? 否! 不特定多数をターゲットに、一人でも多くのダウンを引き入れないと、利益が増えないからである
クレームの主は「スパミングするのはよくないが」と書いていたが、上記の理由から、結果として、SPAM を撒き散らさないと儲からないようなシステムになっている。にもかかわらず「スパミングするのはよくないが」もなにも、あったものではない。泥棒が「泥棒はいけません」といっているようなものである
結果として、広告を見ることによるペイバックは、いわゆる「ネットワークビジネス」の商材と化す。だが、ネットワークが無限に増殖するわけではないので、拡大プロセスはどこかで行き詰まる。すると、その時点で、ごく一部の「先駆者」を別として利益の拡大は見込めなくなり、拡大を前提とするシステムは破綻し、後期に参入した人がババを引く
このような構造的な問題に加え、以下のような点も懸念されます。
広告をダウンロードするために帯域を消費するため、ネットサーフィンの効率が阻害される可能性がある。最初に広告を 1 回ダウンロードするだけで、後はそのままというならそんなことはないが、そうなると、それはそれで広告効果として疑問がある (つまり、媒体としての価値が問われる。バナー広告だって、リロードするたびに内容を変えているではないか)
だいたい、ネットに接続している間、常駐して動いているプログラムがあるというのが問題。それを悪用して「トロイの木馬」が作る手合が出ないとも限らないし、そのプログラムが実際には何をしているのか、確認した人がいるのだろうか? 可能性の問題としていえば、インターネットに接続している間にどこのサイトにアクセスし、キーボードで何を入力し、ハードディスク上に何がダウンロードされたかを、稼動中のプログラムはすべて知り得る立場にある。この点に着目した論調は今のところ存在しないようだが、悪用しようと思えば可能であるという点を注意喚起しておきたい
しかも、登録時に入力した個人情報が、どこでどう利用されるか分からない
なお、「テレビ東京の番組で取り上げられたから、このシステムは正当だ」という主張がありましたが、番組中に登場した人物は「まだ報酬の支払いは受けていない」と発言していた点を、クレームの主は故意に見落としているといえます。少なくとも、"数十万円の収入" をコンスタントに獲得している人が TV に出演したのなら、まだしも説得力はありますが。
まとめると、私の見解としては
期待される収入の大半をメンバーの勧誘によるコミッションに依存し、(直接勧奨してはいないものの) 結果として大量の勧誘 SPAM メールを発生させるようなシステムを取っているような商売が、それほど長続きするはずがないし、ましてや投資家の信頼を集めるとは考えられない。
よしんば能書き通りに機能したとしても、宣伝しているような多額の利益が得られる人数はごく少数としか考えられず、結果的に、失望してシステムから抜けたり、システムの利用を行わなくなる人が生じることが予想され、メンバーが無限に増殖することを前提としている "高収入" のシステムは成り立たなくなる。
その結果として発生するのは、何とかして利益を得ようとしてあがいた結果の、膨大な量の勧誘 SPAM メールのみであろうと予想される。かようなシステムは、現行法制下では違法でないとしても、正々堂々たるまっとうな商売ともいえない。
よって、そうしたシステムを運営する会社が株式を公開して「第二のヤフー」となる可能性は、ほぼ皆無と考えてよい。ただでさえ、投資家による「ネット株」の厳しい選別と淘汰が始まっている御時世なのだ。
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ということです。
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