取材メモ 7 : 呉市海自歴史科学館 (大和ミュージアム)
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所在地 : 広島県呉市
訪問日 : 2005/5/25
純粋に「戦闘艦としての良し悪し」という観点で見ると、大和というフネ、いろいろ問題を抱えていたと思っている。もっとも、そうなった原因の多くは、「個艦優越主義」に凝り固まって 46cm 砲の搭載に固執した艦政本部と軍令部にあるのも、また事実。技術者としては、「こういうフネを造れ」といわれたら、それがよほどトンでもない要求でない限り、いわれたとおりのフネを実現するために努力するしかない。
その大和を産んだのは、いうまでもなく呉海軍工廠。そして、主砲については同級すべてを呉工廠の砲熕部で、装甲板などの特殊な鋼材も呉工廠の製鋼部で、それぞれ製造を担当した。いわば、呉という街は "Home of Yamato" といえる。
その呉市に、2005 年 4 月に「大和ミュージアム」(通称。正式名称は呉市海自歴史科学館) がオープンした。ちょうど GW を挟んだこともあり、オープンから 1 ヶ月で 20 万人もの入場者を集めたそうだ。単に大和、あるいは日本海軍だけの展示にとどまらず、船舶工学の基本など、「海事」にまつわるさまざまな展示を集めている点に好感が持てる。が、入場者の平均年齢は非常に高そうだ (笑)
もともと、呉線の呉駅自体、海に近いところにある。そのため、海辺に開設された博物館までは、徒歩で 5 分程度しかかからない。しかも、駅の改札口を出て右に曲がり、案内にしたがってペデストリアンデッキを歩いていけばよいので、博物館の前までアップダウンがまったくないのは特筆に価する。
ペデストリアンデッキが、途中でゆめタウンに突き当たるが、その中を通り抜けると目の前に博物館が出現するという構造だ。
もっとも、東京からだと、呉まで行くのが大騒動だろう。私は <サンライズ瀬戸> で岡山まで行き、新幹線と呉線を乗り継いで東側からアプローチしたが、この方法だと 11 時間以上かかる。特に、岡山から先で 3 時間近くかかるのは痛い。素直に広島から入る方が正解だろう。広島から呉までの所要時間は、各停で 40 分、快速で 30 分というところ。
博物館の正面全景。手前にネプチューンの像が建っているのだが、「ギリシア神話の海神」と説明しているのはいただけない。ギリシア神話ならポセイドン、ローマ神話ならネプチューンと書かねば。
博物館に入ると、真っ先に目につくのが、すっかり有名になった 1/10 スケールの戦艦大和。単にみてくれだけ復元したのではなく、艦内には艦載艇を収容するスペースを作りこんであったりするそうだ。もっとも、大和の艦内を撮影した写真はほとんどなく、やっと 1 枚だけ出てきたのは烹炊所の写真だったそうなので、完全な復元は無理だったらしい。
ちなみにこの模型、ちゃんと復元性を考慮してあるので、水に浮くそうだ。
これが話題沸騰の、大和の 1/10 模型。外見だけでなく、中身にも気を使い、ちゃんと水に浮くように作ってあるらしい。
大和は短い生涯の間に何回か改装を受けているが、模型になったのは、対空機銃を大幅に増設した末期の状態のようだ。
これ以外の貴重品としては、零戦 62 型、栄 31 型甲エンジン、93 式酸素魚雷 (の一部)、回天、海龍、といったところか。いったいどこから見つけてきたのか、魚雷のジャイロや深度調定装置、零戦の射撃照準器なんてものまで展示してある。回天で使用していた潜望鏡 (正式には特眼鏡) については、覗いて見ることができる。
栄 31 型甲エンジン。水メタ噴射までやったのに、約束しただけの馬力が出ないで海軍を怒らせたのって、このエンジンだったような…
また、モノが大きすぎて目立たないため、うっかり素通りしてしまいそうになるが、戦艦金剛からおろしたヤーロー式ボイラーは超貴重品。近代化改修で重油専燃に改装された際にお役御免になった、石炭焚きボイラーだ。ちゃんと、石炭をくべる火夫の人形まであしらってあるのは念が入っている。(どうして「火夫」が変換できないんだよっ > MS-IME2002)
いったいどこから入手したのか、M69 焼夷弾。現物を見ると、意外と大きい。
あと、好き者ならぜひとも立ち寄っていただきたいのが、4 階にあるライブラリー。まだ蔵書の数は少ないが、これからおいおい充実させていく予定との由。また、PC の画面で図面などの所蔵資料を検索・閲覧できるシステムも用意されている。こちらについても、今後の充実を期待したいところ。
いったん表に出て、建物をぐるっと回って海側に行くと、「大和波止場」なるものがある。TSL のデモンストレーターとか深海潜水艇とか、いろいろと面白い展示品があるのだが、注目したいのは足元。大和の前甲板を実物大で再現している。砲搭がないから妙に広々しているけれど、大きさの感じを掴む役には立ちそう。
笑えるのは、その大和波止場を見下ろす場所に設置された休憩所 (?) の屋根が、主砲射撃指揮所の外形を模していること。
大和波止場。上の方から見下ろすと、艦長になった気分 ?
問題の屋根。完全再現とはいかないけれど、わざわざこのデザインにした心意気は買いたい。
大和ミュージアムでは、職員の方だけでなくボランティアの方が何人も配されていて、解説や案内などを担当している。ボランティアといえば、ライブラリーの解説資料では WikiPedia の帝国海軍関連コンテンツが活用されているので、これを加筆・修正して強化すれば、大和ミュージアムの役に立てるかも。
URL :
http://yamato.kure-city.jp/
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