Opinion : 立場ある者の説明責任 (2003/7/21)
 

例の「辻本逮捕」で、社民党の幹部が軒並み、雲隠れを決め込んでいるらしい (2003/7/19 の時点)。対応を協議しているのだという報道もあるが、どちらにしても、危機管理能力がお粗末といわれても仕方がない。

この件に限らず、この国では、特に立場がある者の「説明責任」が等閑にされているような気がする。一般市民レベルならいざ知らず、何某かの責任や権力が伴う立場にある者であれば、それ相応の説明責任が伴う。もしも自分に非がないと信じているのであれば、表に出てきて堂々とそれを主張する方が、まだしも信じてもらいやすいと思うのだが、どうして逃げるのか。

自分が係争中の stock option 課税の件も同様で、当局側がこっそり解釈を変えて闇討ちの (それも根拠薄弱な) 課税を強行したことが、結果として多くの納税者の怒りを買い、同一案件としては空前絶後の税務訴訟多発という事態を招いたのは確かだ。これも、当局側の説明責任放棄に、騒ぎを大きくした一因がある。
そんなに自分たちの主張が正しいと信じているのなら、国税庁長官や東京国税局長あたりが記者会見を開いて、自分たちの主張を堂々と開陳して見せればいいじゃないかと思うのだが、実際にやっていることは正反対。現場の人間に場当たり的な言い訳をさせて、結果的に、さらに燃料を投下する事態になっている。

「以心伝心」社会だからなのか何なのか、この国ではどうも、表に出てきて自分の信じるところを正々堂々と述べる、という事例が少ないように思える。まだしも、大量破壊兵器の証拠が出てこない言い訳に必死になっている米英首脳の方がマシに見えるのだから妙だ。(もっとも、あれも変な話で、イラクが過去にイラン、あるいは自国民に対して化学兵器を使った事実、あるいは核開発に血道を上げていた事実は存在するのだから、イラクが NBC 兵器に関して完全に "シロ" ということはあり得ない)


誰しも神様ではないのだから、個人でも企業でもその他の組織でも、なにがしかの失敗をしたり、出した製品に欠陥が発見されたりすることはある。問題は、その後の対処だと思う。

たとえば、MS 製品というと「セキュリティホールが多い」とか何とかいって叩かれているが、セキュリティホールの情報が誰でもアクセスできる形で出てくるだけマシというもの。情報が出てこない方がもっと怖い。
何も情報が出てこなかった場合に「セキュリティホールはあるが情報が出てこない」のと「セキュリティホールがない」のとでは雲泥の差がある。モノによっては熱心な "信者" がいて、後者のケースだと信じ込んでいるケースもあるが、そういうケースほど、本当にセキュリティホールが見つかったときに "信者" がダンマリを決め込んでしまうのがおかしい。

数日前に「IT Pro」で書かれていたのと同じことだが、結局、問題が発見されたときに、それを公表する方が、むしろ信頼されるのが現状だと思う。だからこそ、三菱自動車の「リコール隠し」も叩かれたし、「IT Pro」ではセキュリティホールに関する情報を目に付きにくいカタチで掲載していたソフトウェア・メーカー (ちなみに MS ではない) が非難されていた。

社民党の件にしても、「拉致」に続いて「辻本」と御難続きな訳だが、これらは元はといえば身から出た錆。自業自得といえなくもないにしても、党の幹部が軒並み雲隠れしてしまったのでは、さらに顰蹙を買い、結果として党のイメージダウンに手を貸す結果になるのが分からないのだろうか ?
平素の言動が "御立派" であるだけに、こういうときの対応の落差が目立つ。このまま沈黙が続けば、社民党は次の選挙で、大半の議席を失うのではなかろうか。

もっとも、社民党や共産党は "不祥事慣れ" していなくて、こういう事態にどう対処するかという危機管理のノウハウが欠けている可能性もある。原 "ざまーみろっ" 陽子代議士の、例の「911」のときの発言騒動でも感じたことだが…

正直な話、主張している内容の正当性は別にして、幹部が表に出てきて説明するのとしないのとでは、こちらが受ける印象が違ってくる。社民党もそうだし、アルカイダもタリバンもサダム・フセインも、トップは安全なところ (?) に隠れていて、下っ端の人間を矢面に立たせている。これではイメージが良くなるはずがない。
むしろ、正面から堂々と勝負する方が、(結果的に負けるとしても) 潔さを感じさせるのではないかと思う。"サハフ人気" の一因は、そんなところにあったのではないか。


そういう意味では、「雲隠れ」もよくないが、以前に「話をそらすな」で書いた「争点逸らし」もよくない。ちょっと本題から逸れるが、ついでだから書いておこう。

先日、小田急の効果線増工事に関して「夜間工事差し止め」の和解が成立した。夜間工事が騒音の原因になるので安眠を妨げる、という点だけ考えれば、これは妥当な措置だと思う。ただ、元はといえばこの一件、線増工事そのものというよりも「高架」という形ですでに進行中の工事を阻止しようとして考え出された手段なのではないかと疑ってしまうわけだ。

そもそも、最終的に単一の事業に収斂するとはいえ、「線増の必要性」「高架、あるいは地下にすることの是非」「立体化事業の進め方に関する法的不備の有無」というのはみんな別々の問題である。だから、たとえば「立体化事業の進め方に法的不備があるから高架にするのは違法だ」なんていう主張は成立し得ない。そんなことをいえば、パレスチナ問題を持ち出してクウェート侵攻を正当化しようとしたサダム・フセインと同じ穴の狢になってしまう。

「線増」や「立体化」は、それだけでは公共性の観点からいって工事差し止めの根拠になりにくいだろうから、側面攻撃として事業認可過程の法的不備を突いたり、工事で発生する騒音の件を突いたりすることで、結果として高架工事を阻害しようとする。これも一種の「争点逸らし」ではなかろうか。
ぶっちゃけた話、本来の狙いは「高架反対、地下化推進」にあるわけだから、それなら正面から堂々と「高架にすると、こんなに環境が破壊される」と具体的な論拠やデータを示して勝負するのが筋だろう。それをしないのでは、正面からの勝負を避けて雲隠れした社民党幹部のことを笑えない。

争点逸らしといえば、少年犯罪が話題になる度にコンピュータ・ゲームの悪口をいう人がいて「仮想現実と現実の区別がつかなくなる」などと陳腐なコメントをいうのはどうにかならないものだろうか。そもそも、そんな単純な話じゃないと思うが、本当にそう信じているのなら、任天堂やセガ、SCE、MSKK あたりを製造物責任で訴えてみたらどうだろう ?

Contents
HOME
Works
Diary
PC Diary
Defence News
Opinion
Ski
About


| 記事一覧に戻る |