Opinion : 間違いだらけの駐禁取り締まり反対論 (2006/6/5)
 

道交法改正で駐車違反の取り締まりが強化されて、さらに民間委託制度が導入された。この件について blog や mixi 日記なんかを見ると、ものすごい勢いで噛みついている人が多い。ところがよくよく見ると、どう見ても噛みつき方を間違えているとしか思えない人が目につく。

どういうことかというと、本来は別々に論じるべき話題をひとからげにして、「駐禁の取り締まり強化に反対」という結論に持っていく人が多すぎやしないか、ということ。
たとえば、「クルマで仕事している人はどうする」「警察の天下り先確保だろ」「警察の裏金作りだろ」「もっと先に取り締まるべきものがあるはず」etc, etc。それは論点がずれてるでしょ。


ドライバーの立場からすると、路上駐車というのは極めて迷惑度が高い。片側 2 車線の幹線道路でも、ところどころで左側の車線に路上駐車しているクルマがあると、そこで流れが阻害される。当然、左側車線を走っているクルマは路駐車がいると右側車線に移ろうとするから、そこで流れが滞る。タイミングが悪いと右側車線になかなか入り込めずに、滞留するクルマも出てくる。

そうなると、「どうせ左側を走っても路駐してるから」といって、右側の車線にトラフィックが集中する。結果として、片側 2 車線の道路が、実質的に片側 1 車線の道路としてしか機能しない。
実際、自分も路駐車にひっかかるのが嫌で右側車線を走ることが多い。左側が空いてるからといって入り込むと、往々にして路駐車にひっかかるという現実があるから。

根本的な原因はトラフィックの絶対量が多いせいであるとしても、都市部で発生する渋滞のうち、かなりの部分はこういう馬鹿げた原因に起因していると思われる。これでは、道路整備に投入されている特定財源の無駄遣いになってしまう。道路を造るための道路特定財源であって、駐車場を作るための道路特定財源じゃない。

それに、路駐しているクルマがいると、前方の見通しが悪くなる問題もある。その影から人がいきなり出てきたら危ない。もっとも、これはどちらかというと、副次的な問題に過ぎないけれども。

だから、路上駐車を厳しく取り締まるのは当然の話で、それに文句をつける方が間違っている。輪っかを付けられなかったのは運がいいからだと思うべきで、それが当然だというのは思い違いも甚だしい。それに、反対意見と称するものの内容も「なっていない」ものばかりだ。例を挙げよう。

駐車場がないからだ or 駐車場が高いからだ
→ だったら、求めるべきは「路駐の黙認」じゃなくて「リーズナブルな価格で利用できる駐車場の整備」。文句をいう相手が間違ってる。
駐車場がない店舗の営業妨害だ !
→ それをいうなら、路駐で道路交通を阻害するのは、クルマで仕事してる人の営業妨害。店舗の側で、路駐を前提にしたオペレーションを展開することにも問題がある、とは考えないのか。
身体障害者や物流関係みたいに、クルマがないと困る人はどうするんだ !
→ 車椅子マークと物流関係は例外とする、とすれば済む話。これらが路駐全体に占める比率はさほど高くないだろうから、支障は少ないはず (郵便局は OK だけど民間宅配業者はダメ、なんていう例外規定は問題があるが)。都心の一部でやっているような、物流関係者用の退避スペースを増やしていくのも一案。
警察官僚の天下り先を作り出すための民間委託だろ !
→ だったら、民間委託じゃなければ取り締まり強化に異論はないと ? それに、天下りの是非は駐禁取り締まりの強化とは別次元の問題。それはそれで別に規制すべきもので、取り締まりとリンクさせる時点で意味不明。そもそも、民間委託する警察署の数は 300 にも満たず、警察署全体からすれば微々たる数。
警察が裏金を作り出すために罰金を取り立てようとしているんだ !
→ これも同じ。天下りと同様、次元が違う問題を強引にくっつけているだけで、駐禁の件に関係なく、裏金がダメなのは同じこと。それに、「警察が裏金を作っているから路駐してもいい」なんて理屈は成立しない。
民間委託すると営利追求になって、強引に取り締まろうとして暴力沙汰になる !
→ それは傷害事件として取り締まるべき問題。暴力沙汰になるから取り締まるな、なんていうのは、勘違いも甚だしい。
他にもっと取り締まるべきことがあるはずだ !
→ 現実問題として、路駐が多大な迷惑を引き起こしているのは事実なのだから、交通関係の取り締まりの中では優先度が高い。たとえば、うちの近所でよくやっている「一時停止違反狙い」よりも、路駐を先にどうにかしてもらいたい。

とどのつまり、「反対のための反対」から脱していない意見が多すぎる、というのが個人的印象。路駐のことを、当然の権利であるかのように思い違いしてないか。「似たようなこと、誰でもしているのよ〜」と、中森明菜の「少女 A」みたいなことをいわれてもねぇ。


「言論の自由」というものがあるのだから、反対意見を開陳するのは自由。ただ、反対するならするで、もうちょっと筋の通った理論展開はできないのかと思った。「反対」という結論が先にあって、それに合う理屈を強引にひねり出すのでは、「パソコン兵器」の誰かさんや、そのお仲間のことを笑えない。(これ、駐禁取り締まりだけでなく、共謀罪に反対する人にもいえることだと思う)

しかも、ひねり出した内容がまた、煽りの要素が強すぎる。せめて「駐禁取り締まりを強化するなら、それと平行して、リーズナブルな価格で利用できる駐車場をどこにも一定数整備するよう義務付けるべきだ」と主張するぐらいでないと。

2 週間前に書いた話ともリンクするけれど、駐車違反の取り締まり強化がきっかけになって、クルマでなくても済むのにクルマで外出するのを抑止する効果になれば、それはそれでいいことかも知れない。単に路駐を減らすとか罰金収入を増やすとか、あるいは民間委託で浮いた人員を他の業務に回すとかいう効果だけでなく、人の流れを公共交通機関に誘導するためのきっかけになれば… と思うが、道交法改正のときに、そこまで考えたのかどうかは知らない。

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