Opinion : ホワイトバンドに見る失敗の連鎖 (2007/9/10)
 

先週の「ぐんくつの響き」も相当なものだと思ったけれど、またぞろ、「それは違うだろう」と突っ込みたくなるような話が出てきた。

ホワイトバンド批判から考えるNGOのコミュニケーションギャップ」(念のために ウェブ魚拓)

例のホワイトバンドの関係者が、「批判にさらされた原因」について語っているのだけれど、一言でいうと「分かってない」。それだけでなく、「ホワイトバンド・バッシング」とか「私たちは国内マスコミと海外の仲間たちの双方から責められ、とてもつらい思いをしました」とか、もう被害者意識丸出し。そうじゃないでしょ。


件の記事によると、「ロビー活動に対する正しい理解がされていなかった」とか「アドボカシーという概念が知られていなかった」とかいう理由で、ホワイトバンドに対する批判が発生したのだということらしい。でも、もっとも盛り上がっている時期からずっと、ホワイトバンドに対して批判的な言説を展開してきた私にいわせれば、分かってない。全然分かってない。

過去に書いたことの繰り返しになってしまうけれども。
そもそも、これは「何でもいいから、意思表示のために白いモノを巻いてください」という運動だったはず。ところが、これが日本に入ってきたら、何を間違えたのか「中国製イカリングを \300- で買ってください」という話に変質してしまった。

しかも、紛らわしい広告を展開して「今までの募金活動とはちょっと違います」とやったことで、多くの人に「形は違っても募金活動の一種か ?」と思わせたのは、明らかにキャンペーン側の責任であり、アドボカシーに対する理解がどうとかいう以前の問題なのは明らか。紛らわしいことをやっておいて「誤読した方が悪い」といえば、責任転嫁以外の何者でもない。

さらに「実は募金じゃないのかよ !」という批判が高まった途端にコロリと方針転換。途中から泥縄式に資金提供に乗り出したり、「白いモノ」の話についても Web サイトの内容がコロコロと変わっていったりした経緯については、当サイトでも以前に書いた。(→参考)

ホワイトバンド擁護派の人がしばしば、批判に対して「これがきっかけになればいいのだ」と主張して「きっかけ教」なんて揶揄されていたけれども、その「きっかけ」がどれだけ長続きしただろう ?
確かに 2005 年の 7-9 月ぐらいにかけてはワーッと話題になったけれども、半年どころか、その年の末までも勢いが続かなかった。mixi でハンドル名に「***」をつけるのが流行ったけれど、現時点でそれを何人が続けてるだろう ? 林立しまくった mixi の関連コミュニティを検索してみたら、参加人数も大して多くないところばかり。いやそもそも、現時点でホワイトバンドをつけて歩いてる人が何人いるだろう。

だいたい、例の公式 blog が (去年の 10 月にも書いたけれど) 今もまだ相変わらず放置状態で、ペンペン草が生えてて更新も保守もしていないのだから、なにをかいわんや。

そもそも、冒頭で挙げた記事では「政策提言」について言及しているけれど、ホワイトバンド関連で何か、具体的な「政策提言」ってやったっけ ? いくらなんでも、「東京タワーのライトアップイベント」「さいたまスーパーアリーナでコンサートをやった」「ギネスに載せるために、日比谷シティで "STAND UP" イベントをやったらガラガラだった」とかいうのは、どう見ても政策提言とはいえない。ホワイトバンド以前から決まっていた話を、さもホワイトバンドの成果であるかのように主張していた件はあったけれども。

ひょっとすると。「ホワイトバンド」とは、漏れなく疑問の念がワンセットで付いてくる「Why ? とバンド」という意味だったのだろうか。


つまり、そもそもキャンペーンが当初からボタンの掛け違いを起こしていたこと、一貫性がなくて場当たり的な対応に終始したこと、アドボカシーとか政策提言とかいっていても、実際には貧困問題をファッションアイテムにしてイカリングを売る活動でしかなかったこと。これらが、批判にさらされた挙げ句、ムーブメントとやらが半年も続かずに竜頭蛇尾に終わってしまった根本原因 (という話は何度も書いたなあ)。

それを、「アドボカシーが理解されていなくて云々」とか「コミュニケーションギャップ」とかいって、受け手に責任転嫁するとは何事か、ということ。敗因を正しく理解していないところは、まるで「ソ聯軍が、こんなにたくさんの戦車を繰り出してくるとは予想していなかった」と敗戦の弁を述べたノモンハン事件と似たり寄ったり。

状況が正しく見えていないのに、本来の意味でのアドボカシーなんて実現できっこないし、世間に対して継続的にアピールしていくこともできそうにない。世間を動かす活動をしているはずなのに「受け容れられないのは世間が悪い」といわんばかりなのだから、世話はない。

「成功しか知らない人よりも、失敗したことがある人の方が強い」というのは基本的に間違っていないけれども、それは、失敗の理由を正しく理解できてこその話。失敗したときに、その理由が分かっていれば、同じ失敗を繰り返さずに済む (例 : F-111B → F-14、タイフォン → イージス)。でも、失敗したときに責任転嫁して逃げ出せば、また同じ失敗を繰り返してしまう。

それは、ノモンハン事件と、その後の帝国陸軍の経緯を見ればよく分かる話。ノモンハン事件の 6 年後・1945 年 8 月に、関東軍はソ聯軍相手にずっと大きなスケールで惨事を繰り返して、軍人のみならず民間人にも多数の犠牲を強いてしまった。太平洋方面でも、機械力と火力で押してくる米軍に対して、根性と肉弾で立ち向かわざるを得なかった。(もっとも、米軍やソ聯軍に対抗できる戦力を作ろうとしても、費用や国力を考慮すると実現できなかったであろう、貧乏国家の悲劇という一面もあるわけだけれど)

きっと、ホワイトバンドに関わった諸氏はまたそのうち、何か「貧困ビジネス」あるいは「善意のビジネス」に手を染めて、同じ失敗を繰り返すんじゃなかろうか。ホワイトバンドが厳しい批判にさらされた原因を、まるで分かっていないんだもの。だいたい、この期に及んで「未知の有力な発言者」ですって ? たかだか半年も「ムーブメント」を持続できなかったのに、それを有力っていいますか ?

あーそれから。本題からは外れるけれども、「クリッキングフィルム」だの「アドボカシー」だのといったカタカナじゃなくて、たまには漢字で書いてみたら、とイカリング関係者に申し上げたい。中文版 (Traditional Chinese) の Windows なんか、いい参考になると思う。

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