Opinion : charm offensive (2014/6/2)
 

しばらく前に某海外軍事系ニュースサイトで、「ガルパン」「艦これ」「海自・東京音楽隊の三宅三曹」といったあたりを引き合いに出して、「日本における軍事分野の "charm offensive"」について報じている記事があった。

惜しかったよなあと思ったのは、もうちょっと後に掲載していれば「横須賀のカレー食べ比べイベントが大人気」という話も使えただろうに、というところ。まあ、それはそれとして。

そういえば先の週末、国立競技場の上空でブルーインパルスの航過飛行が行われたときにも (「曲技飛行」はやっていないぞ > 某新聞)、結構な数の人が集まり、東京体育館の警備員が人払いに出たり (でも、途中から諦めたらしい)、千駄ヶ谷駅の近辺が見物帰りの人で大混雑になったりした。

その一方で「渋谷の上空で戦闘機が飛んでたが、戦争でも始まったのか」とかなんとか、ブルーの露出を快く思わない向きが、あれこれと吹かしていた様子。それはまあ「言論の自由」というやつで、好きにすればいいと思うけれども、広く受け入れられるとも思えない。

もっとも、その手のデムパ発言に対してマジレスするのも、時間と労力の無駄というもの。アレは一種の宗教なのだと考えれば、理詰めで説得して、それで納得するわけがないのだから。


念のために辞書を調べてみたら、"charm" には「魅力」とか「人を引きつける力」という意味があるとのこと。なるほど。

さて。"charm offensive" の話になると、「国民に対して当たりの良さを見せつけておいて、いざとなったら牙をむくに違いない」とかなんとか主張する人が出てくるのは、まあ、お約束ではないかと思う。

でも、先週に書いた ように、軍事組織が国民に対して牙をむくかどうかは、その国の体制や状況、国民と軍事組織の関係によるところが大。そのことを無視して「軍事組織は必ず国民に牙をむくものである」という前提で論を展開しても、果たして受け入れられるかどうか。

それよりなにより。一方が "charm offensive" で来ているのに、それに対抗しようとする側が「まなじりを決していきりたち」「恐怖感マーケティングで煽って」「シュプレヒコールを上げている」なんていう状況では、そもそも根本的に対抗不可能じゃないかと思う次第。

おまけに、"charm offensive" のつもりなのかなんなのか、「ジョーク」や「替え歌」に手を染めると、えてして「ジョークになっていないジョーク」や「センスが悪すぎて寒い替え歌」になるのだから手に負えない。本人は面白いと思っているのだろうけれど。

そんでもって、出で立ちが、さらなるマイナス効果を上積みしている事例も少なくなさそう。たとえばの話、ヘルメットにゲバ棒を持って、あまり清潔感のない出で立ちをしていれば、それだけで逃げられるのがオチ。

つまりは、接した側がどちらに魅力を感じるのか、という観点が根本的に抜けている。もっとも、実は「魅力的に映るように」とか「広く受け入れられるように」とかいうことはハナから考えていなくて、自分が正義の味方になって運動を展開すること事態が目的なのか ?

それならそれで「どうぞ御勝手に」といいたいところだけれど、実のところ、そういう調子では、健全なカウンターオピニオンが育たないんじゃなかろうか。


そういえば、「反対運動」の類に限らず国家のレベルでも、"charm offensive" がうまい国とヘタな国がある。ヘタな国というのは、要するに「プロパガンダ臭が見え見え」とか「記者会見する報道官が、無表情に自国の主張をオウム返しに繰り返すだけ」とかいう類の話。

もう、それだけで印象が悪くなってしまう。だって、相手が生身の人間に見えなくなってくるでしょ。

お約束 : 上の文面は特定の国家を念頭に置いたものではありま… す (ぇ

個人レベルの人付き合いでは、ときどき「隙」とか「ドジ」を見せることが人間関係の潤滑油になることがあるけれども、これ、どんな分野にもいえることなのかも知れない。

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