Opinion : しつこいけれど、第一報との付き合い方 (2015/4/20)
 

アシアナ航空機が広島空港で事故った。といったところで過去に書いたものを検索してみたら、以前に、こんなことを書いていた。

第一報が入ってきた時点で即座に反応してワーワーやるよりも、まずは深呼吸して落ち着いて続報を待つ、というぐらいでちょうど良いのではないか。と思うことがままある。

これに限らず、自著でも「事故や戦争の第一報は錯綜するもの」だと書いている。とにかく何か報じなければ、といって真偽の定かでない情報に飛びついてしまうのは毎度のことで、それが結果として錯綜を生んだり誤報を生んだりする。

世間の耳目を引きそうな事故や戦争が起きる度に繰り返される光景だというのに、誰も反省して改善しようとする様子が見られない… というか、そういう改善につながっている様子がないのはこまりもの。


いわんや、事故が起きた途端に事故原因がパッと分かるはずがない。今回も、ほんの数日の間に「パイロットのミス」説や「ダウンバースト」説や「霧による視界不良」説などが入り乱れている様子。

だいたい、断片的な状況報告や証言や不鮮明なビデオ映像だけで原因が分かるようなら、事故調査委員会は要らんだろうに。とはいつもいっている通り。

アメリカで列車脱線事故が発生して、某テレビ局の関係者から電話がかかってきたときにも、そう話した。それで「現時点で原因について喋ることなんてできない」といって、テレビに出る機会を自分でつぶした。でも、それで良かったと思っている。って、この話は以前にもどこかで書いたような…

テレビだけでなく、たぶん新聞や週刊誌の類でも似たようなものだろうけれど、専門家を引っ張り出して事故原因について喋らせようとする、少なくとも推定事故原因だけでも喋らせようとする。あれはもう、この業界に刷り込まれた DNA みたいなものじゃないかと思う。

だから、事故が起きた途端に原因について喋らせようとするのは仕方ない。で、そこに引っ張り出された「専門家」が原因について言及していたら、それは強引に「言わされた」ものだとして話半分どころか話八分の一ぐらいに聞いておく程度で、ちょうどいいと思う。

本当に「分かっている人」なら、そのタイミングで明言も断言もしないし、仮定の話や留保条件がいろいろついてくる (でも、それってたいていは「尺やページ数の問題」で削られてしまうんだけど)。

仮定の話も留保条件もなしで、自信満々に事故原因について明言や断言をしている人がいたら、それは仮定の話や留保条件が編集段階でカットされているか、それとも御本人がお調子者なのか、そのいずれかということが多いのではなかろうか。

もちろん例外もある。分からないことは分からないと自覚して、ちゃんと勉強しようとする、専門家の話を聞こうとする。そういうスタッフに恵まれた番組もあった (残念ながら過去形) ことも付言しておかないと、それこそ不公平というもの。

まして今回の広島空港の事故は、やったのが韓国のエアラインである。そんなことになれば、「毎日、朝から晩まで韓国の悪口をいっていないと死んじゃう」病にかかっている人が、断片的な「使えそうな情報」に食いついて、あることないこと書き立てるのは自明の理。それに釣られたら自分も同類にされてしまう。


そんなわけで、しつこく繰り返し書くけれども、事故や戦争が起きて第一報を聞いたときには、そこで即座にあれこれと反応するのは避ける方がお薦め。せめて三日か一週間ぐらいは様子を見ないと。

その上で、「誰が見たり聞いたりしても余計な先入観や憶測・推測が入り込む余地がなさそうな話」と「憶測・推測が入り込む余地がありそうな話」の区別をつけたり、複数ソースをあたって裏取りしたりすれば (その際にググるのはお薦めしない。ノイズがいっぱいひっかかってくる)、だいぶマシなことになるのではないかと。

どうしても何か話したり書いたりするのであれば、明言・断言を注意深く避けたり、仮定の要素が入っていることを明記したり、前提条件をきちんとつけたりする。これでかなり安全になりそう。

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