Opinion : 常にトラブルはあるものだと考える (2005/8/22)
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首都圏に限ったことではないけれども、最近、地震が多い。日本は地震列島だから仕方ないと思う部分もあるけれど、あまりいい気分はしない。だからといって、地震がない国に逃げ出すというのも不可能な相談だから、地震があるという情況を前提にして、それと上手に付き合うしかないのかなと思う。
以前、「『非常食』を考える」や「あなたの震災対策は大丈夫 ?」で、震災対策について取り上げた。どちらも家庭内における震災への備えが中心だったけれど、今回は少し違った視点から見てみたい。
先日、首都圏で大き目の地震があったときに、特に JR の運転再開が遅くて、マスコミに叩かれていた。別に悪気があって復旧を送らせた訳でもあるまいに、と呆れながら見ていたのだが、動かないものはどうにもならないので、個人的に自衛策を考える必要はあるな、とは思った。
それに、地震がなくても、やれ「車輌故障」だの「信号機故障」だの「人身事故」だので、電車はしばしば止まっている。急いで移動しなければならないのに電車が止まってしまったら、非常に困る。しかも、事故でも故障でも予告無しに発生するから (当たり前だ)、事前に回避することもできない。この辺が、台風による水害とは事情を異にしている。台風なら、接近しているのは事前に分かるから、まだ手の打ちようがある。
ではどうすればいいかといえば、常に「代替ルート」を意識しておく必要があるのではないか、ということになる。
たとえば、住む場所を選ぶときに JR と地下鉄 (あるいはその他の民鉄線) の両方を利用できる場所なら、代替ルートの確保がやりやすい。同じ JR 同士、あるいは同じ会社の地下鉄線・民鉄線同士だと、場合によっては共倒れで全滅してしまう可能性があるので、できれば、事業体は異なる方がいい。意外なところで線路がつながっているせいで、トラブルが予想外の範囲に波及することもあるから。
いつだったか、新宿から山手線外回りに乗ろうとしたら、人身事故か何かで止まってしまったことがある。そこで、代替ルートとして埼京線に乗ったら、「大塚駅 (だったと思う) で、線路に人が立ち入ったという情報があるので、安全を確認中」という放送。そして、埼京線まで道連れで止まってしまった。
おまけに、問題の山手線の方が先に復旧してしまい、自分が乗っている埼京線は満員の状態で止まったまま。埼京線は山手線と比べて駅が少ないから、駅間で止まってしまったら、山手線に戻ることもできない。そして、大久保だか高田馬場だかの辺りで、動き始めた山手線にブンブン追い抜かれる始末。これにはゲンナリした。
よくよく考えれば、埼京線の池袋以南は山手貨物線であり、その山手貨物線は大塚を通っていて、しかも同じ敷地の中で山手線と平行している。だから、山手線で線路に立ち入った人がいれば、それがめぐりめぐって埼京線に波及する可能性もあるわけだ。つまり、代替ルートの選択に関する見事な判断ミスで、地下鉄にするべきだった。
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こんな間抜けな失敗を仕出かすこともあるけれど、電車やバスを利用する際に、常に「A 案が駄目なら B 案、それも駄目なら C 案」というように代替ルートを検討しておく発想自体は、震災発生時でなくても何かと役に立つと思う。
もっとも、これは東京の中心部だからこそ成り立つ話で、多くの場所では代替ルートもヘッタクレもなかったりする。ただ、電車だけでなく、バスや道路でも代替ルートという発想そのものは使えるハズ。クルマを運転していて、渋滞に遭遇したときに別の回避道路に逃げ込むようなものだから。首都高速ぐらい路線網が稠密だと、首都高速の範囲内で回避ルートを利用できる (ことも、たまにはある)。
公共交通機関が駄目ならタクシー、というのもよくあるパターンだけれど、大きい駅ではタクシー乗り場にすぐ行列ができるので、ちょいと頭を使う必要がある。
いつだったか、新宿で飲んだ帰りに乗った山手線がやたらと混んでいたことがあって、連れが「タクシーにしようよ」といいだした。そこで「池袋だとタクシーをつかまえるのが大変だろうから」と説明してひとつ手前の目白で降りたら、あっという間に空車を確保できた。連れは、おそらく喜んでいただろうと思う。
よく考えたら、「代替手段」「バックアップ」「不測の事態への備え」ということなら、交通機関以外の分野でもいろいろとやっている。
こういう仕事をしていると、原稿を書く手段としての PC や、書きかけの原稿は生命線といってもよい存在だから、拙宅では偏執狂的なデータ保全体制を作ってある。なにしろ、同じソフトウェアをセットアップした「仕事用本務機」と「仕事用予備機」が並んでいて、データの更新があるその都度、データファイル同士のミラーリングをかけている。これなら、どちらか一方がダウンしても他方で仕事を継続できるし、ダウンタイムも、喪失するデータも最小で済む。
PC そのものを二重に用意するのはやりすぎだとしても、データの多重化を図るのは、比較的少ない投資で、しかも利益が大きい。たとえ個人のレベルであったとしても。
(もっとも、データ喪失対策を講じていたら、そのノート PC 自体を電車の中に置き忘れて蒼くなった、なんていう大ポカもやっているのだから笑えない)
こんなクレイジーなことをするようになったのは、5 年前の追突事故でノート PC を粉砕されたせいなのだが、この辺の「偏執狂的データ保全のノウハウ」については、おいおい、どこかで原稿のネタにしてみたいと考えている。
バックアップとは少し違うけれども、手持ちの現ナマは、意図的に複数の銀行に分散してある。これも一種のリスク分散かと。別に、税務署の連中に口座調べの手間を多くかけさせようと思ったわけではないのだけれど (微苦笑)。
高速道路に上がるときには、できるだけガソリンを満タンにしてから上がるようにしている。給油できる場所が限られるので、想定外の事態に見舞われて予想外にガソリンを消費してしまい、本線上でガス欠、なんていう事態にもなりかねないから。
物事が順調にいかないこともあるという前提で、可能な範囲でいろいろと対策を講じているわけだ。個人でやることだから、限界はあるにしても。
そんなわけで何をいいたいのかというと、「物事が、いつも正常に動くと思うな」ということ。物事がうまく行かないこともあるという前提で、「今、この時点で通常の方法が利用できなくなったら、どう対処する ?」ということを常に意識しておく。そうすれば、突発的に交通機関が止まったり、あるいは道路が通行止めになったり、といった事態への対処がやりやすくなるのではないだろうか。
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