Opinion : ますますほっとけないホワイトバンド (2005/9/5)
 

この件については以前にも取り上げていて、今でもそれなりのアクセスをいただいている。ただ、ますます疑問の念が強まり、さらにホワイトバンド自体が政治色を露骨にしてきたので、前回の記事に補足する意味で、もう一度書くことにした。多少、重複する内容もある点については御容赦を。

以下、「ホワイトバンド」と書いたときには、特記がなければ日本で行われている運動のことだと解釈していただきたい。


ホワイトバンドの言い分では問題解決にならないというのは、すでに 8/1 付の記事「ほっとけないホワイトバンド」で書いた。
個人的見解としては、まっとうな所得分配が機能するような民主的政権の樹立と、公正な商取引 (というか、継続的に現地にカネが落ちる体制を作ること) が車の両輪で、どちらか一方だけでも元の木阿弥になると考えている。そして、それを支える治安の確立も必須となる。ホワイトバンドは、この面に関する言及が抜けている。

そうした状況を実現して、いかれた独裁政権を排除するための圧力手段として、AU (African Union) の平和維持部隊に軍事面の支援をする必要がある。欧米諸国が直接介入しても、却って反発を買ってソマリアみたいなことになるので、「アフリカの問題はアフリカの力で解決する」という姿勢を打ち出し、自立への道筋をつける意識を持たせるには、AU を前面に出す方がいい。

もちろん、資金・訓練・輸送手段などの面で、日本や欧米諸国が背後から支援する必要はある。実際、AU はスーダンの Darfur に平和維持部隊を送り込んでみたものの、資金ショートを起こしていて、12 月以降の活動継続が危ぶまれている。急場しのぎとして兵士の日当を削ったら、兵士の士気が落ちて困っているそうだ。
ちなみに、当初に規定された日当の額は $5、減額後は $4。

そもそも、相手かまわず無条件の債務免除というのは、あまりにも問題がありすぎる。所得分配がメチャクチャで私腹を肥やしまくっていたり、内戦ということにして民族弾圧をやっていたりするようなイカレポンチ政権まで債務免除で負担を減らすなんて、まさに愚の骨頂。悪徳野郎を喜ばせるだけで、金輪際、問題解決にはならない。

おまけに、「貧困をなくそう」と立派なお題目を掲げている割には、例の「中国製」というところが矛盾しているし、ただのゴム製イカリングにしては、原価が高過ぎるのではないか。さらに、流通や広告宣伝の費用が大量に上乗せされているあたりにも、チャリティーとは異質のものを感じる。手弁当でやるならともかく。

しかもその一方で、いきなり御立派な Web サイトが立ち上がる、大々的に広告宣伝しまくる、各界の著名人がゾロゾロ出てくる。どう見ても、広告代理店か何かが裏で仕掛けているとしか思えない。TV の CM もその他の広告も、タダで流しているわけではないだろうし。
広告代理店による仕掛けがすべて悪いとはいわないが、「恵まれない人のための募金」という外面のイメージとはギャップが感じられる。(そもそも「募金」自体が勘違いな訳だが)


このプロジェクトに良い印象を持てないのは、一見したところでは「恵まれない人たちのための募金活動」に見えるのに、実際は違うところ。現実問題として、何かを売って、その売上を寄付するというやり方はいろいろと前例がある。だから、ホワイトバンドもそれと同じだと信じ込んでしまっている人が少なくないようだ。

だからこそ、ホワイトバンドを買ったということ自体に舞い上がっている人がゾロゾロいて、それを自身の blog で書き立てて、トラックバックの応酬になっていたりする。意思表示にしろその他の援助にしろ、そこから先、何か行動を起こしてこそ価値があるので、ホワイトバンドを買ったこと自体に「いいことをした」と満足してしまってどうするのかと。
また、そういう人が往々にして、ホワイトバンドに疑義を呈する人に「じゃあ、あなたはどんなことをやってるの」とか「これに賛同しないなんて、ひとでなし」みたいな罵詈雑言を浴びせたりする。なんだ、それは。ホワイトバンド以外の支援方法がないかのようにいわれるのは心外だ。

しつこいけれども、これは募金じゃないのだ。もしも「活動資金を提供したのだ」という自覚があるなら、その活動内容を検証してこそ本物ではないか。買った時点で満足してしまったのでは中途半端。

ついでに。公式 Web サイトに書いてあるように、これを書いている 2004 年 9 月初頭の時点で「活動資金」分の使途は未定 (参照)。すでに 140 万個だか売れたという話だけれども、300×1,400,000 = 4 億 2,000 万円 のうち、政策を変えさせるための活動経費とされる 10%、約 4,200 万円の使途が未定なのだ。まだ使い道が確定しておらず、効果のほどもはっきりしないものに参加しないからといって、悪し様にいわれたのではかなわない。

追記 (2005/9/6)
この記事をライブした後で、リンク先の Web サイトに掲載されている当該 PDF が修正されて、「啓発行動活動費 : 20%」と「政策変更のための活動費 : 10%」が「活動費 : 30%」と一本化された。一見、全体の比率に違いはないので問題ないように見えるが、分類を大雑把にしたことで、比率配分の不明瞭さが増したというのが実情だろう (キャプチャ画面 : 変更前 / 変更後)。また、末尾では「2006 年になってから〜」の記述が消えて、具体的な時期を明示しなくなった点にも着目して欲しい。
そもそも、突っ込みを喰らった記事の内容をコッソリ差し替えるなんて、サッカー・アジア杯の記事をコッソリ差し替えた「しんぶん赤旗」みたいじゃないか。


なんにしろ、ホワイトバンドの公式 Web サイトでも認めているように、これは恵まれない人を直接的に助けるための募金活動ではない。当事者が認めているのだからそう書いてしまうが、これは NGO の活動資金集めキャンペーンだ。だったら、堂々と「活動資金集めです」といっても良さそうなものだが、そういう訳でもない。FAQ をじっくりと読んでいくと、そのことが初めて分かるようになっている。
しかも、その一方では、妙にカネがかかったキャンペーンを展開している。そして、"純正品" ホワイトバンドを買うように仕向けている。そこが、実に嫌な感じがする。

まっとうな活動をしているけれど、資金不足で困ってます… ということなら、「私達はこういう活動をして、こういう実績を挙げてきましたが、資金不足に見舞われています。ぜひともカンパしてください」あるいは「私達はこういう活動をして、こういう実績を挙げてきましたが、この方法では駄目だと分かりました。政治を変えるための活動を進めたいのでカンパしてください」でもいいハズだ。そこに、モノを介在させる必然性はないのでは。

それに、Web サイトに書かれている、突っ込みどころ満載の文面の数々。

お金ではなく、あなたの声が必要です。貧困をなくそう、という声を表すホワイトバンドを身につけてください。
つまり、ありていにいえば「自分たちの主張に合わせて動くように政府に圧力をかける運動」ということになる。よしんば政府が政策を転換して、それが失敗に終わったとしても「それは政府のやり方が間違ってたんです」ということになってしまうのではないか。圧力をかけさせた側の責任はどうなるのか。
しかも、総選挙前日の 9/10 にイベントを設定するあたりに、政治的な臭いを感じる。この日程設定を見る限り、政府・与党がホワイトバンドの言い分通りに動かないということは織り込み済みで、悪者に仕立て上げようとしているのではないか。なにしろ、北朝鮮とお友達の政党の看板候補者が「総理は (ホワイトバンドの) イベントに来るべきだ !」と力説しているぐらいなのだから。しかも、この候補者が仕切っている NGO も、ちゃんとホワイトバンドの参加団体に名を連ねている。偶然にしては出来過ぎだ。

それに、このプロジェクトが呼びかけているように、首相や議員に "働きかける" のに、わざわざイカリングを用意する必要もない (参考 : 日本じゃなくて、本家・ホワイトバンドの FAQ)。
ホワイトバンドを身につけて首相にメール攻撃をかけたところで、相手にはそれは見えないのだ。なんかチグハグ。それとも、日本で売っているホワイトバンドは、政治家の心に働きかけるスカラー波でも出すように作られているのか ? そんな訳はないだろう。

どうせ圧力をかけるなら、いかれた独裁者の口座を凍結するように、スイスかどこかの銀行に圧力をかけてみるというのはどうだ。なんだったら、"活動資金" で現地に行って、"人間の鎖" で独裁者の口座がある銀行を包囲したっていいだろう。それとも、日本の政府・与党がターゲットでないと、何か不都合なことがあるのか。

もはや募金だけではもうどうにもならないところまできています。根本的なことを解決しない限り、地球上の貧困は決してなくなりません。根本的なこと、それが、政策の転換です。
その「政策の転換」が実効性を伴うかどうかについては、以前から疑義を呈している。第一、このプロジェクトが掲げる政策のひとつ「債務免除」こそ、場当たり式な対策であって、根本的な原因を取り除くことにはならない。
根本的な原因とは、政治の貧困が生み出す人権蹂躙と所得分配の不公平。それを解決するには、ときには外部からの力を使わざるを得ない場合もあるだろう。それを実現せずに、公正な貿易を心がけても債務を免除しても、アホな独裁者がのさばっている限り、そして、その独裁者に味方する外部の国が存在する限り、何の解決にもなりはしない。
しかし、こういう運動をする人はおそらく、(たとえそれが AU によるものであっても) 武力介入には断固反対で、話し合いによる解決を… と主張するのではないか。それとも、米軍や NATO 軍の介入は駄目で、人民解放軍の介入なら賛成するのか。

ちゃんと貧しい国の貧しい人達が、自分達の力で食べていけるような長い目で見た支援の方法に変えていきたいのです。
といっている割には、それが具体的にどのような方策なのかを書いていない。せめて、私が以前の記事で主張したぐらいのことを書けてもいいはずなのだが。特に難しいことを書いたわけではない。私が思いつくぐらいだから、誰だって思いつくような常識的レベルの話だ。
フェアトレード ? 先に書いたように、問題はその先、つまり所得分配と政治の貧困にある。それなのに、

実際には政治を良くするためにこそ、支援が必要なのです。
という一方では、悪徳政権を助けてしまう「債務免除」を主張していたりして、なんとも支離滅裂だ。
実のところ、「債務免除」「フェアトレード」をやれば、それで自動的に政治が良くなって問題が解決するかのように思わせているところが、最大の問題かもしれない。例の「○○するだけで問題解決」で釣る法則が発動されている。


「貧困の解決」にしろ「世界平和」にしろ、こういうお題目を持ち出されると、普遍性がある内容だけにパッと反論するのは難しい。なんというかこれ、そういう心理を上手に利用されているような気がしてならなかったのだが、最近になって、ますますそういう印象が強まっている。

しつこいけれども、アフリカの貧困、いわゆる南北格差の問題に関心を持つのは、ホワイトバンドを買わなくてもできること。というか、そういう問題があることをまったく知りませんでした、という人の方が少数派では ? だから、「貧困の問題に関心を持ってもらうきっかけ云々」というところからして、すでに論理破綻している。

悪いけど、少なくとも日本のホワイトバンドでは貧困は救えない。なにしろ、ホワイトバンドというアイテムと著名人を使った宣伝の組み合わせ、紛らわしいキャンペーン内容のせいで、貧困の問題をファッションにしてしまったのだから。(だからこそ、あのイカリングをヤフオクで取引する輩が後を絶たない)

多分、キャンペーンが終わって 2006 年に入り、売上の使途が決まって実行、その後に会計報告が出てくる (はずの) 頃には、こんなキャンペーンがあったことは大半の人が忘れているのではないか。そして、家の片隅から白いイカリングが出てきて「はて、これって何だっけ ?」なんてことになりはしないか。

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